ししついじょうしょう(こうしけっしょう)
脂質異常症(高脂血症)
悪玉コレステロールが多い、または善玉コレステロールが少ない状態。動脈硬化を速め、脳卒中や心筋梗塞を起こしやすくする
16人の医師がチェック 139回の改訂 最終更新: 2023.07.16

脂質異常症とは?症状、原因、検査、治療など

脂質異常症は血液にLDLコレステロール中性脂肪が多いか、HDLコレステロールが少ない状態です。狭心症心筋梗塞脳梗塞など命に関わる病気の原因にもなるため、しっかりと治療することが重要です。

1. 脂質異常症とはどんな病気か?

脂質異常症とは、血液中の悪玉の脂質であるLDLコレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)が多いか、善玉の脂質であるHDLコレステロールが少ない状態をいいます。脂質異常症は血管の壁に脂質がくっついて血管を狭くし、血管の弾力を失わせる原因となります。血管が狭くなった状態や、血管の弾力が失われた状態を動脈硬化と言います。脂質異常症による動脈硬化は全身の血管で起こり、心臓や脳の血管が狭くなると狭心症心筋梗塞脳梗塞の原因になります。

脂質とは?

脂質は生きる上で必要な栄養素の一つです。体内の脂質にはコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸などがあります。この中で脂質異常症と関係するのはコレステロール、中性脂肪です。コレステロールは細胞の膜やホルモンの材料となる脂質で、中性脂肪は身体を動かす上でのエネルギー源となる脂質です。脂質は食べ物に含まれており食事から摂取され、ホルモンの材料やエネルギー源として消費されます。しかし、食事から摂取する脂質が多すぎたり、運動不足により消費する脂質の量が少なくなると、過剰になった脂質が身体の中に蓄積します。身体の中に蓄積した脂質は血管の壁にくっつくことで動脈硬化の原因になります。

コレステロールの量は血液検査で測定できます。検査値にはいくつか種類がありますが、動脈硬化を悪化させる悪玉コレステロールと、動脈硬化を抑える善玉コレステロールに分けられます。悪玉コレステロールの代表にはLDLコレステロール、善玉コレステロールの代表にはHDLコレステロールがあります。中性脂肪も動脈硬化を悪化させる脂質です。まとめると以下のようになります。

脂質の種類 役割 動脈硬化への影響
コレステロール 細胞膜やホルモンの材料 LDLコレステロール値が高いと動脈硬化を悪化させる

HDLコレステロール値が高いと動脈硬化を抑える
中性脂肪 身体を動かすためのエネルギー源 悪化させる

LDLコレステロール、HDLコレステロール、総コレステロール、中性脂肪は血液検査で調べることができます。これらの値は脂質異常症の診断や治療効果の判定に使われます。

高脂血症、高コレステロール血症とは違うもの?

血液中の脂質が高い状態を高脂血症、コレステロールが高い状態を高コレステロール血症と呼びます。しかし、コレステロールの中には善玉のものが存在し、善玉のコレステロールは少ないことが動脈硬化に悪影響を与えることから、善玉コレステロールが少ない状態も含めて、脂質異常症と呼ばれるようになっています。

脂質異常症の診断基準

以下のいずれかを満たす時、脂質異常症と診断されます。

LDLコレステロール 140mg/dL以上の時(高LDLコレステロール血症)
HDLコレステロール 40mg/dL未満の時(低HDLコレステロール血症)
中性脂肪 150mg/dL以上の時(高トリグリセリド血症
Non-HDL コレステロール 170mg/dL以上の時(高Non-HDLコレステロール血症)

脂質異常症は高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症、高Non-HDLコレステロール血症のいずれかを満たした状態と言えます。

Non-HDLコレステロールの値は総コレステロールの値からHDLコレステロールの値を引いたものです。悪玉コレステロールはLDLコレステロール以外にもあることがわかってきており、LDLコレステロール以外の悪玉コレステロールも含んだ値を把握するためにNon-HDLコレステロールの値を計算します。

メタボリックシンドロームとは?

脂質異常症は動脈硬化の原因となり、狭心症心筋梗塞脳梗塞を起こすことが問題になります。しかし、動脈硬化を引き起こす原因は脂質異常症だけでなく、他にも肥満、高血圧、高血糖などがあります。そのため、動脈硬化を起こす原因をひっくるめ、動脈硬化を早期から予防するために作られた考え方がメタボリックシンドロームです。メタボリックシンドロームは以下の基準を用いて診断されます。

  • 必須項目
    • 腹囲 男性85cm以上 女性90cm以上
  • 選択項目
    • 中性脂肪≧150mg/dLかつ/またはHDL<40mg/dL
    • 収縮期(最大)血圧≧130mmHgかつ/または拡張期(最小)血圧≧85mmHg
    • 空腹時血糖≧110mg/dL

必須項目に当てはまり、かつ選択項目のうち2つ以上に当てはまる人がメタボリックシンドロームと診断されます。

腹囲は内臓についた脂肪(内臓脂肪)の量を反映すると言われており、男性85cm、女性90cmの時に内臓脂肪の面積が身体の水平断面で100cm2に相当することから、この腹囲の基準が使われています。

メタボリックシンドロームの人は、脂質異常症と同様、動脈硬化が進行しないように食事内容や運動不足に気をつける必要があります。食事や運動の注意点は「治療の章」で説明しています。

2. 脂質異常症の症状

脂質異常症は、血液中の悪玉の脂質であるLDLコレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)が多いか、善玉の脂質であるHDLコレステロールが少ない状態をいいます。脂質異常症はそれ自体では症状がほとんどない病気なので、診断が遅れやすく、また見つかっても治療の必要性を感じにくくさせています。

しかし、脂質異常症は血管の壁に脂質がくっついて血管を狭くしたり、血管の弾力を失わせること(動脈硬化)によって以下の病気の原因になります。したがって脂質異常症を放置すると、ここで挙げる病気の症状が現れることがあり、注意が必要です。

ここではこれらの病気の症状について簡単に説明します。詳しくは「症状の章」で説明しています。

狭心症

狭心症は心臓に酸素や栄養を送る血管(冠動脈)が狭くなることで、胸の痛みや胸が締め付けられる感じといった症状が現れる病気です。狭心症の症状は以下のようなものがあります。

  • 胸の痛みや胸が締め付けられる感じが現れ、通常は10分程度でおさまる
  • 息切れがする
  • 冷や汗が出る
  • 肩に違和感を覚えたり肩が痛んだりする
  • 吐き気がする

これらの症状は心臓に血液が行き渡らなくなることで起こるものです。最悪の場合、命に関わることもあります。該当する症状を感じる場合には、医療機関で調べてもらうことをお勧めします。

心筋梗塞

図:冠動脈は枝分かれしながら心臓を取り巻いている。

心筋梗塞は心臓に栄養や酸素を送る血管(冠動脈)の一部で血流が完全に途絶えることで心臓の動きが悪くなり、最悪の場合、命に関わることがある病気です。心筋梗塞の症状は以下のようなものがあります。

  • 胸の痛みや胸が締め付けられる感じが30分以上続く
  • 息切れがする
  • 冷や汗が出る
  • 肩に違和感を覚えたり肩が痛んだりする
  • 吐き気がする

狭心症と症状は似ていますが、違いとして胸の痛みやしめつけの持続時間があります。狭心症の胸の痛みやしめつけの症状は30分以内(通常10分程度)でおさまるのに対し、心筋梗塞は30分たってもおさまらないことが多いです。

心筋梗塞は冠動脈の一部で血流が完全に途絶えることで心臓の細胞(心筋)の壊死が起こります。一度、壊死した心筋はもとに戻らず、また発症後、時間経過と共に壊死の範囲が広がっていくため、心筋梗塞は見つかり次第早急に治療を行う必要があります。胸の痛みやしめつけの症状が30分経ってもおさまらない場合には、すぐに医療機関で調べてもらうことをお勧めします。

脳梗塞

脳梗塞は脳の血管の一部が詰まり、必要な栄養や酸素が行き届かなくなることで脳細胞が壊死する病気です。以下のような症状があらわれた場合には脳梗塞の可能性があります。

  • 突然片方の手や腕、足に力が入りにくくなった
  • まっすぐ歩いているつもりなのに、片側へ寄ってしまう
  • 文字がうまく書けなくなった
  • 突然、手でものを落とすようになった
  • よだれがこぼれるようになった
  • 顔の半分が歪んで、左右差が出てきた

脳細胞は一度壊死するともとには戻らないため、脳梗塞を起こすと運動や感覚の麻痺などが残ります。最悪の場合、寝たきりになることや、命に関わることもあります。脳細胞の壊死の範囲は発症後、時間経過と共に広がっていくため、脳梗塞は見つかり次第早急に治療を行い、壊死の範囲が最小限になるようにします。上記の症状が現れた場合には、すぐに医療機関を受診するようにしてください。

閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)

閉塞性動脈硬化症は手足につながる血管が動脈硬化により狭くなることで、以下のような症状が現れる病気です。

  • 手足の冷えがひどい
  • 手足がしびれ、痛む
  • 手足の指の色が青色に変化し、進行すると壊死して黒くなる
  • 手足の傷の治りが悪い
  • 歩くと足がしびれたり痛くなったりするが、少し休むとまた歩けるようになる

閉塞性動脈硬化症は命に直接関わる病気ではないですが、手足の痛みやしびれの原因になり、最悪の場合、指が壊死することもあり、生活の質を大きく下げます。そのため、脂質異常症、糖尿病、高血圧などの治療をしっかり行い、閉塞性動脈硬化症の予防をすることは非常に重要です。

3. 脂質異常症の原因

脂質は食べ物から体内に吸収されたのち、皮下脂肪・内臓脂肪として貯蓄され、身体を動かすエネルギー源やホルモンの材料として消費されます。脂質の吸収や貯蓄と消費のバランスが崩れることで、脂質異常症は起こると考えられています。具体的な脂質異常症の原因には主に以下のようなものがあります。

  • 肥満
  • 更年期
  • アルコール過剰摂取
  • 糖尿病
  • ホルモンの病気
  • 遺伝

脂質異常症の原因の一部は生活習慣と密接に関わるものがあります。原因に応じて治療法が変わることもあります。脂質異常症の原因について詳しくは「原因の章」で説明しています。

4. 脂質異常症の検査

脂質異常症の検査は脂質異常症や動脈硬化の状態を調べることができ、診断や治療効果判定に用いられます。脂質異常症では以下のような検査が行われます。

  • 身長・体重・腹囲測定
  • 血圧測定
  • 血液検査
  • 心電図検査
  • 脈波検査

詳しくは「検査の章」で説明しています。ここではそれぞれについて簡単に説明します。

身長・体重・腹囲測定

脂質異常症は肥満と密接に関わる病気です。肥満が原因の脂質異常症では、肥満自体を改善しないと脂質異常症が良くならないことも珍しくありません。肥満であるかを判定するためには、身長と体重からBMI(ビーエムアイ)を計算します。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

例えば、体重60kgで身長170cmの人のBMIは60÷1.7÷1.7=20.8になります。正常のBMIは18.5-25であり、BMIが25以上の時に肥満に該当します。

またBMIと合わせて、腹囲の測定も重要です。腹囲は内臓についた脂肪(内臓脂肪)の量を反映すると言われているためです。腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上あることはメタボリックシンドロームの診断の基準の一つにされています。

血圧測定

脂質異常症の人では血圧管理も重要になります。高血圧があると動脈硬化をさらに悪化させるためです。

高血圧とは、病院や健診などで測定した血圧(診察室血圧)が、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上(140/90mmHg以上)の状態をいいます。自宅で測定した血圧(家庭血圧)では収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上(135/85mmHg以上)を高血圧とします。病院や健診では緊張から血圧が高めに出てしまうため、家庭血圧の基準値は診察室血圧のものから5を引いた値に設定されています。動脈硬化の予防のためには、脂質異常症と並行して血圧も適切に保つことが重要です。

血液検査

血液検査では血液中の脂質の値を調べることができます。脂質異常症の診断は血液中の脂質の値によってなされるため、診断のためには血液検査が必要です。

健診や診療で測定される血液中の脂質の検査値にはLDLコレステロール(LDL-C)、HDLコレステロール(HDL-C)、中性脂肪(TG)、総コレステロール(TC)があります。血液中の脂質には病状に応じて管理目標値も設定されています。治療で脂質の値を下げる時には管理目標値を下回ることを目指します(HDL-Cは管理目標値を上回るようにします)。そのため、血液検査は治療がちゃんと行えているかを判断する上でも必要な検査と言えます。LDLコレステロール(LDL-C)、HDLコレステロール(HDL-C)、中性脂肪(TG)、総コレステロール(TC)の意味とそれぞれの管理目標値については「検査の章」で詳しく説明しています。

心電図検査

脂質異常症は動脈硬化によるさまざまな病気の原因になりますが、中でも怖いのは狭心症心筋梗塞などの冠動脈疾患です。脂質異常症では狭心症心筋梗塞などを早期に見つけるため、定期的に心電図検査を行います。

心電図検査は心臓が動くために発する電気信号を調べる検査です。電気信号は機械の画面上や紙の上に折れ線の心電図として表されます。心電図検査にはいくつか種類がありますが、よく使われるのは12誘導心電図検査というタイプです。狭心症心筋梗塞により心臓の動きが悪くなると、心電図にも変化が現れます。12誘導心電図検査では狭心症心筋梗塞の種類や起こった時期、心臓の動きが悪い場所などを推定することができます。

頸動脈エコー検査

エコー検査は超音波を出す小さな装置を使って身体の中を画像に映し出す検査です。頸動脈エコー検査では頸動脈と呼ばれる首の血管を調べます。頸動脈の動脈硬化の程度は全身の血管の状態を反映すると言われていることから、頸動脈エコー検査は全身の動脈硬化の程度を調べる検査として広く用いられています。検査は15-30分程度で終了します。

脈波検査

脈波検査は血圧計を用いて動脈硬化や血管の詰まりの程度を把握する検査です。血圧脈波検査と呼ばれることもあります。動脈は太くなったり細くなったりして、脈をうつことで血液を送り出す役割があります。しかし、動脈硬化が進み、血管の壁が硬くなる(弾力がなくなる)と、動脈の太くなったり細くなったりがうまくできなくなります。脈波検査ではこの変化を捉えることで、動脈硬化の程度を推定することができます。検査は10-15分程度で終了します。

5. 脂質異常症の治療

脂質異常症の治療は食事療法、運動療法、薬物療法を主軸に行います。

コレステロールなどの脂質成分は食事に含まれており、脂質成分の過剰摂取は血液中の脂質の上昇の原因になることが分かっています。また、食事は身体活動のエネルギーの源になりますが、過剰な食事摂取により消費できなかったエネルギーは脂質(脂肪分)として身体に蓄積します。

食事療法はコレステロールの摂り過ぎやカロリーの過剰摂取に注意するなど、適切な食事を行うことで脂質異常症の改善を目指す治療法です。

運動療法は消費するエネルギーを増やすことで、身体に蓄積した脂肪を減らし、血液中の脂質を改善します。ジョギングなどの有酸素運動が脂肪の燃焼に優れており、脂質異常症の運動療法として推奨されています。

薬物療法は薬により、コレステロールの合成を抑えるか排泄を亢進させることで、血液中の脂質を改善します。

食事療法、運動療法、薬物療法の内容について詳しくは「治療の章」で説明しています。以下で簡単に説明をしていきます。

食事療法

コレステロールなどの脂質成分は食事に含まれており、脂質成分やカロリーの過剰摂取は血液中の脂質の上昇の原因になることが分かっています。食事と脂質は密接に関わっており、脂質異常症の改善には適切な食事が欠かせません。脂質異常症の食事療法では以下のポイントが重要です。

  • 適切な量のカロリー(エネルギー)を摂取する
  • 主食・主菜・副菜をバランスよくとる
  • 脂質を多く含む食べ物を摂取しすぎない
  • 塩分を摂取しすぎない
  • アルコールを摂取しすぎない

治療の章」でこれらについて詳しく説明しています。

運動療法

脂質は身体のエネルギー源の一つなので、運動によりエネルギー消費量を増やすことで、血液中の脂質の改善効果を期待できます。

脂質異常症の改善に特に有効とされる運動は有酸素運動です。有酸素運動とは十分な呼吸で酸素を取り込みながら行う運動のことです。有酸素運動の一例を以下に挙げます。

  • ジョギング
  • 速歩
  • 水泳
  • エアロビクス
  • サイクリング

有酸素運動は1日合計30分以上の運動を週3回以上行うことが勧められています。通勤に徒歩や自転車を利用するなどの工夫もできます。

薬物療法

脂質異常症の薬物療法は食事療法、運動療法のみで十分な改善が期待できない場合や、心筋梗塞脳梗塞閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患を発症した場合に検討されます。具体的に脂質異常症の薬物療法で用いられる薬剤は以下の通りです。

  • スタチン系薬
  • 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ)
  • フィブラート系薬
  • 陰イオン交換樹脂(コレスチミド、コレスチラミン)
  • EPA・DHA製剤
  • プロブコール
  • ニコチン酸誘導体
  • PCSK9阻害薬
  • 漢方薬

これらの薬剤は脂質異常症の程度により複数種類を使用することもあります。それぞれの薬剤の特徴や副作用については「治療の章」で詳しく説明していきます。

6. 脂質異常症の注意点

脂質異常症はそれ自体にあまり目に見える症状がなく、また付き合いも長くなる病気であり、治療意欲を維持するのが難しい病気かもしれません。しかし、脂質異常症は治療されていない状態が続くと、動脈硬化を悪化させ、狭心症心筋梗塞脳梗塞閉塞性動脈硬化症を起こします。狭心症心筋梗塞脳梗塞閉塞性動脈硬化症は生活の質を大きく低下させ、最悪の場合、命に関わる病気です。脂質異常症は症状が出にくい病気ですが、これらの病気を予防する意味でしっかり治療することが大切です。

ここでは脂質異常症の治療の大事なポイントである「生活習慣の改善」、「薬をしっかり飲む・通院を継続する」という点について説明していきます。「注意点の章」では他にも「脂質異常症と言われたが喫煙はして良いか?」、「脂質異常症は遺伝するか?」、「脂質異常症にサプリメントは効くか?」といったことについて説明しています。

生活習慣の改善

脂質異常症は暴飲暴食、運動不足、不規則な生活などがあると悪化することがわかっており、生活習慣と密接に関わっている病気と言えます。実際、これらの生活習慣を改善できると薬を使用しなくても脂質異常症が良くなることも珍しくありません。日常の一工夫で脂質異常症が良くなることもあります。例えば、

  • 外食、飲み会の回数を減らす
  • ご飯を満腹まで食べず、腹8分目程度にとどめる
  • 夕飯は寝る2時間前までに済ますようにする
  • 野菜を多めにとるようにする
  • 肉を食べる時は脂身を残す
  • 通勤に徒歩や自転車を取り入れる
  • エレベーターやエスカレーターを使わず階段を使うようにする

といったことが挙げられます。より細かい食事や運動のポイントについては「治療の章」でも説明しています。

生活習慣を変えるだけで脂質異常症が良くなってしまえば、薬を飲む必要がなくなり、薬の費用もかからなくなります。脂質異常症で生活習慣の乱れに心当たりのある方は、できるところからで構いませんので、改善していくことをお勧めします。

薬をしっかり飲む・通院を継続する

脂質異常症の治療中には、食事療法や運動療法のみでは十分改善せず、薬物療法が必要になることがあります。スタチン系薬など脂質異常症に高い効果のある薬もあり、食事療法や運動療法だけで良くならなかった脂質異常症が薬物療法で劇的に良くなるということも珍しくありません。

一方で、一度開始した薬による治療や通院を自己中断されてしまう方もいます。具体的には以下のような理由が考えられます。

  • 症状があまりないので薬を飲む必要性を感じない
  • 薬代が高い、定期的な通院が大変だ
  • 薬物療法で脂質異常症が改善したことに安心した

脂質異常症は目に見える症状が現れにくい病気であり、治療の必要性を感じにくい病気ですが、狭心症心筋梗塞脳梗塞、閉塞動脈硬化症などの原因になることがわかっています。これらの病気は生活の質を大きく下げ、最悪の場合、命に関わるので脂質異常症のしっかりした治療は重要です。

費用が気になる時は、脂質異常症の治療薬を後発品(ジェネリック医薬品)に替えると費用を減らせることがあります。通院については、薬物療法を開始して脂質の値が安定している場合には、間隔を伸ばせる場合があります。また、脂質の値が改善した人の中にも薬物療法の継続が必要な方がいらっしゃいます。

通院の間隔や治療内容につき、疑問点があれば担当のお医者さんに遠慮なく聞いてみてください。