肥満の子どもは寄生虫に感染しやすい

寄生虫感染症は、現在の日本でもしばしば発生します。今までの研究から、細胞や動物では、寄生虫による感染症と肥満との関連が確認されていました。今回ヒトでの感染症と肥満との関連について、寄生虫に着目した研究が行われました。
◆子ども296人の便から寄生虫を検査
研究チームは、メキシコの296人の児童(8.0 ± 1.5 歳)を対象としました。その中で、寄生虫に感染している子どもと感染していない子どもでは、肥満に関してどのような差があるのかを調査しました。
対象者の肥満については、体重、身長、ウエストの周囲、体脂肪を測定することで判断しました。寄生虫の有無は、便を採取して検査しました。
◆大腸アメーバに感染した子どもには肥満が多かった
調査の結果、大腸アメーバの感染と肥満について以下の結果が見られました。
中等度から重度の大腸アメーバに感染した子どもでは、感染していない子どもや軽度の感染をした子どもよりも、ウエストの周囲、ウエストとヒップ比、体と腹部の脂肪が有意 に高かった(p<0.05)。
大腸アメーバに感染した子どもは、肥満傾向にあることが示されました。
大腸アメーバ自体は病気を起こしませんが、もし肥満の原因になったり、逆に肥満によって寄生虫に感染しやすくなるのだとすれば、注意が必要かもしれません。ただし、この研究では、大腸アメーバへの感染と肥満についての因果関係は明らかになっていません。たとえば大腸アメーバに感染するような不衛生な環境で生活している子どもが肥満になりやすい食生活をしている可能性もあります。
研究チームも「大腸アメーバが直接脂肪の蓄積に関与しているのかどうか、またどんなメカニズムが考えられるのかを理解するためにさらに研究の必要がある」とも述べているように、今後の研究が気になるところです。
執筆者
Children with moderate-high infection with Entamoeba coli have higher percentage of body and abdominal fat than non-infected children.
Pediatr Obes. 2015 Dec 11. [Epub ahead of print]
[PMID: 26663860]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。