処方薬
モルヒネ塩酸塩注100mgシリンジ「テルモ」

モルヒネ塩酸塩注100mgシリンジ「テルモ」の添付文書

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効果・効能

中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛。

用法・用量

通常、成人には、モルヒネ塩酸塩水和物として、1回50~200mgを持続点滴静注又は持続皮下注により投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

(用法及び用量に関連する注意)

本剤は、皮下又は静脈内注射にのみ使用すること(硬膜外及びくも膜下投与には使用しないこと)。

副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

    1. 重大な副作用
  1. 1.1. 依存性(頻度不明):連用により生じることがある。また、連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、あくび、くしゃみ、流涙、発汗、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、散瞳、頭痛、不眠、不安、せん妄、振戦、全身筋肉痛・全身関節痛、呼吸促迫等の退薬症候があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、1日用量を徐々に減量するなど、患者の状態を観察しながら行うこと〔8.1参照〕。

  2. 1.2. 呼吸抑制(頻度不明):息切れ、呼吸緩慢、不規則呼吸、呼吸異常等があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと(なお、本剤による呼吸抑制には、麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)が拮抗する)。

  3. 1.3. 錯乱(頻度不明)、せん妄(頻度不明)。

  4. 1.4. 無気肺(頻度不明)、気管支痙攣(頻度不明)、喉頭浮腫(頻度不明)。

  5. 1.5. 麻痺性イレウス(頻度不明)、中毒性巨大結腸(頻度不明):炎症性腸疾患の患者に投与した場合、中毒性巨大結腸があらわれるとの報告がある。

    1. その他の副作用
    1. 循環器:(頻度不明)不整脈、血圧変動、顔面潮紅。
    2. 精神神経系:(頻度不明)眠気、めまい、不安、不穏、興奮、視調節障害、発汗、*痛覚過敏[*:増量により痛みが増悪する]、アロディニア。
    3. 消化器:(頻度不明)悪心、嘔吐、便秘、口渇。
    4. 過敏症:(頻度不明)発疹、そう痒感。
    5. 投与部位:(頻度不明)発赤、腫脹、硬結、疼痛。
    6. その他:(頻度不明)排尿障害、尿閉、頭蓋内圧亢進、脱力。

使用上の注意

(禁忌)

    1. 重篤な呼吸抑制のある患者[呼吸抑制を増強する]。
    1. 気管支喘息発作中の患者[気道分泌を妨げる]。
    1. 重篤な肝機能障害のある患者〔9.3.1参照〕。
    1. 慢性肺疾患に続発する心不全の患者[呼吸抑制や循環不全を増強する]。
    1. 痙攣状態(てんかん重積症、破傷風、ストリキニーネ中毒)にある患者[脊髄刺激効果があらわれる]。
    1. 急性アルコール中毒の患者[呼吸抑制を増強する]。
    1. 本剤の成分及びアヘンアルカロイドに対し過敏症の患者。
    1. 出血性大腸炎の患者[腸管出血性大腸菌(O157等)や赤痢菌等の重篤な細菌性下痢のある患者では、症状の悪化、治療期間の延長をきたすおそれがある]〔9.1.1参照〕。
    1. ナルメフェン塩酸塩水和物投与中又はナルメフェン塩酸塩水和物投与中止後1週間以内の患者〔10.1参照〕。

(重要な基本的注意)

    1. 連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、慎重に投与すること〔11.1.1参照〕。
    1. 眠気、めまいが起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

(特定の背景を有する患者に関する注意)

(合併症・既往歴等のある患者)

  1. 1.1. 細菌性下痢のある患者:治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと(治療期間の延長をきたすおそれがある)〔2.8参照〕。

  2. 1.2. 心機能障害のある患者:循環不全を増強するおそれがある。

  3. 1.3. 呼吸機能障害のある患者:呼吸抑制を増強するおそれがある。

  4. 1.4. 脳器質的障害のある患者:呼吸抑制や頭蓋内圧上昇を起こすおそれがある。

  5. 1.5. ショック状態にある患者:循環不全や呼吸抑制を増強するおそれがある。

  6. 1.6. 代謝性アシドーシスのある患者:呼吸抑制を起こすおそれがある。

  7. 1.7. 甲状腺機能低下症(粘液水腫等)の患者:呼吸抑制や昏睡を起こすおそれがある。

  8. 1.8. 副腎皮質機能低下症(アジソン病等)の患者:呼吸抑制作用に対し、感受性が高くなっている。

  9. 1.9. 薬物依存の既往歴のある患者:依存性を生じやすい。

  10. 1.10. 衰弱者:呼吸抑制作用に対し、感受性が高くなっている。

  11. 1.11. 前立腺肥大による排尿障害、尿道狭窄、尿路手術術後の患者:排尿障害を増悪することがある。

  12. 1.12. 器質的幽門狭窄、麻痺性イレウス又は最近消化管手術を行った患者:消化管運動を抑制する。

  13. 1.13. 痙攣の既往歴のある患者:痙攣を誘発するおそれがある。

  14. 1.14. 胆嚢障害及び胆石のある患者:胆道痙攣を起こすことがある。

  15. 1.15. 重篤な炎症性腸疾患のある患者:連用した場合、巨大結腸症を起こすおそれがある。

(腎機能障害患者)

腎機能障害患者:排泄が遅延し、副作用があらわれるおそれがある。

(肝機能障害患者)

  1. 3.1. 重篤な肝機能障害のある患者:投与しないこと(昏睡に陥ることがある)〔2.3参照〕。

  2. 3.2. 肝機能障害(重篤な肝機能障害を除く)患者:代謝が遅延し、副作用があらわれるおそれがある。

(妊婦)

  1. 5.1. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(動物試験(マウス、ラット)で催奇形作用(マウスでは脳脱、軸骨格癒合)が報告されている)。

  2. 5.2. 分娩前に投与した場合、出産後新生児に退薬症候(多動、神経過敏、不眠、振戦等)があらわれることがある。

  3. 5.3. 分娩時の投与により、新生児に呼吸抑制があらわれることがある。

(授乳婦)

本剤投与中は授乳を避けさせること(ヒト母乳中へ移行することがある)。

(小児等)

新生児、乳児では低用量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること(新生児、乳児では呼吸抑制の感受性が高い)。

(高齢者)

低用量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること(一般に生理機能が低下しており、特に呼吸抑制の感受性が高い)。

(相互作用)

    1. 併用禁忌

    ナルメフェン塩酸塩水和物(セリンクロ)〔2.9参照〕[本剤の離脱症状があらわれるおそれがあり、また、本剤の効果が減弱するおそれがある(緊急の手術等によりやむを得ず本剤を投与する場合、患者毎に用量を漸増し、呼吸抑制等の中枢神経抑制症状を注意深く観察し、また、手術等において本剤を投与することが事前にわかる場合には、少なくとも1週間前にナルメフェン塩酸塩水和物の投与を中断すること)(μオピオイド受容体拮抗作用により、本剤の作用が競合的に阻害される)]。

    1. 併用注意
    1. 中枢神経抑制剤(フェノチアジン系薬剤、バルビツール酸系薬剤等)、吸入麻酔剤、モノアミン酸化酵素阻害剤、三環系抗うつ剤、β-遮断剤、アルコール[呼吸抑制、低血圧及び顕著な鎮静又は昏睡が起こることがある(相加的に中枢神経抑制作用が増強される)]。
    2. クマリン系抗凝血剤(ワルファリン)[クマリン系抗凝血剤の作用が増強されることがある(機序は不明である)]。
    3. 抗コリン作動性薬剤[麻痺性イレウスに至る重篤な便秘又は尿貯留が起こるおそれがある(相加的に抗コリン作用が増強される)]。
    4. ジドブジン(アジドチミジン)[ジドブジンの副作用(骨髄抑制等)を増強させるおそれがある(ジドブジンのグルクロン酸抱合が競合的に阻害され、ジドブジンの代謝が阻害される)]。
    5. ブプレノルフィン[ブプレノルフィンの高用量(8mg連続皮下投与)において、本剤の作用に拮抗するとの報告がある(μオピオイド受容体拮抗作用により、本剤の作用が競合的に阻害される)]。

(過量投与)

    1. 症状

    過量投与時、呼吸抑制、意識不明、痙攣、錯乱、血圧低下、重篤な脱力感、重篤なめまい、嗜眠、心拍数減少、神経過敏、不安、縮瞳、皮膚冷感等を起こすことがある。

    1. 処置

    過量投与時、麻薬拮抗剤投与を行い、患者に退薬症候又は麻薬拮抗剤の副作用が発現しないよう慎重に投与する(なお、麻薬拮抗剤の作用持続時間はモルヒネのそれより短いので、患者のモニタリングを行うか又は患者の反応に応じて初回投与後は注入速度を調節しながら持続静注する)。

(適用上の注意)

    1. 全般的な注意

    使用時には、次の点に注意すること。

    ・ 感染に対する配慮をすること。

    ・ シリンジが破損するおそれがあるので、シリンジを鉗子等で叩くなど、強い衝撃を与えないこと。

    ・ 押子(プランジャー)が外れたり、ガスケットが変形し薬液が漏出したりするおそれがあるので押子のみを持たないこと。

    1. 薬剤投与時の注意
  1. 2.1. モルヒネ製剤のがん疼痛における臨床使用方法としては経口投与又は直腸内投与が不可能なとき、初めて注射を用いる。

  2. 2.2. 急速静注により、アナフィラキシー、重篤な呼吸抑制、低血圧、末梢循環虚脱、心停止が起こるおそれがあるので、静注する場合には緩徐に行うことが望ましい。

  3. 2.3. 使用に際しては、ブリスター包装を開封口からゆっくり開け、外筒(バレル)を持って取り出すこと。

  4. 2.4. 押子の緩みがないか確認すること(緩みが認められた場合は、押子を時計回りに回転させ締め直すこと)、シリンジポンプ使用中に押子が外れた場合、サイフォニング(自然落下による急速注入)や逆流が起こるおそれがある。

  5. 2.5. 筒先のキャップをゆっくり回転させながら外して、注入ライン等に確実に接続すること(キャップを外した後は、筒先に触れないこと)。

  6. 2.6. 輸液剤に配合して投与するか、シリンジポンプ又は携帯型ディスポーザブル注入ポンプを用いて投与すること(針をつけて直接投与しないこと)。

  7. 2.7. シリンジポンプ又は携帯型ディスポーザブル注入ポンプを使用の際は、手でエアー抜きをして使用すること。

  8. 2.8. シリンジポンプを用いて投与する場合は、次の点に注意すること。

    ・ シリンジポンプを用いて投与する場合は、本シリンジが使用可能な設定であることを必ず確認するとともに、シリンジポンプの取扱説明書に従って投与すること。

    ・ シリンジポンプの送り機構(スライダー)のフックに確実にセットすること(正しくセットされていない場合、サイフォニングや逆流が起こるおそれがある)。

    ・ シリンジポンプと患者との落差をできるだけ小さくすること。

  9. 2.9. 携帯型ディスポーザブル注入ポンプを用いて投与する場合は、必ず注入口が適合することを確認して使用すること。

    1. 薬剤投与後の注意

    開封後の使用は1回限りとし、使用後の残液及びシリンジは適切に廃棄すること。

    1. 薬剤交付時の注意

    本剤が不要となった場合には、病院又は薬局へ返却するなどの処置について適切に指導すること。

(取扱い上の注意)

    1. 外箱開封後は遮光して保存すること。
    1. 脱酸素剤を入れて安定性を保持しているので、ブリスター包装は使用時まで開封しないこと。
    1. 次の場合には使用しないこと。

    ・ 包装フィルム表面に減圧によるへこみがない場合には使用しないこと。

    ・ シリンジから薬液が漏れている場合には使用しないこと。

    ・ 性状その他薬液に異状が認められる場合には使用しないこと。

    ・ シリンジに破損等の異状が認められる場合には使用しないこと。

    ・ キャップが外れている場合には使用しないこと。

(保険給付上の注意)

本剤は厚生労働省告示第75号(平成24年3月5日付)に基づき、投薬は1回30日分を限度とされている。

(保管上の注意)

遮光・室温保存。