バンコマイシン塩酸塩点滴静注用0.5g「MEEK」の添付文書
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効果・効能
バンコマイシンに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA):敗血症、感染性心内膜炎、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、骨髄炎、関節炎、肺炎、肺膿瘍、膿胸、腹膜炎、化膿性髄膜炎。
バンコマイシンに感性のメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS):敗血症、感染性心内膜炎、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、骨髄炎、関節炎、腹膜炎、化膿性髄膜炎。
バンコマイシンに感性のペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP):敗血症、肺炎、化膿性髄膜炎。
MRSA又はMRCNS感染が疑われる発熱性好中球減少症。
(効能・効果に関連する使用上の注意)
本剤の副作用として聴力低下、難聴等の第8脳神経障害がみられることがあり、また化膿性髄膜炎においては、後遺症として聴覚障害が発現する恐れがあるので、特に小児等、適応患者の選択に十分注意し、慎重に投与する。
PRSP肺炎の場合には、アレルギー、薬剤感受性など他剤による効果が期待できない場合にのみ使用する。
MRSA又はMRCNS感染が疑われる発熱性好中球減少症に用いる場合には、次記の点に注意する。
- 本剤は、次の条件を満たし、かつMRSA又はMRCNSが原因菌であると疑われる症例に投与する:発熱性好中球減少症に用いる場合、1回の検温で38℃以上の発熱、又は1時間以上持続する37.5℃以上の発熱で、好中球数が500/mm3未満の場合、又は1000/mm3未満で500/mm3未満に減少することが予測される場合、かつMRSA又はMRCNSが原因菌であると疑われる症例に投与する。
- 発熱性好中球減少症に用いる場合、国内外のガイドラインを参照し、本疾患の治療に十分な経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ実施する。
- 発熱性好中球減少症に用いる場合、本剤投与前に血液培養を実施する。発熱性好中球減少症でMRSA又はMRCNS感染の可能性が否定された場合には本剤の投与中止や他剤への変更を考慮する。
- 発熱性好中球減少症に用いる場合、本剤投与の開始時期の指標である好中球数が緊急時等で確認できない場合には、白血球数の半数を好中球数として推定する。
用法・用量
バンコマイシン塩酸塩として1日2g(力価)を1回0.5g(力価)6時間ごと又は1回1g(力価)12時間ごとに分割して、それぞれ60分以上かけて点滴静注する。
なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
高齢者には、1回0.5g(力価)12時間ごと又は1回1g(力価)24時間ごとに、それぞれ60分以上かけて点滴静注する。
なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
小児、乳児には、1日40mg(力価)/kgを2~4回に分割して、それぞれ60分以上かけて点滴静注する。
新生児には、1回投与量を10~15mg(力価)/kgとし、生後1週までの新生児に対しては12時間ごと、生後1カ月までの新生児に対しては8時間ごとに、それぞれ60分以上かけて点滴静注する。
(用法・用量に関連する使用上の注意)
急速なワンショット静注又は短時間での点滴静注を行うとヒスタミンが遊離されてred neck症候群(red man症候群)(顔紅斑性充血、頚紅斑性充血、躯幹紅斑性充血、顔そう痒、頚そう痒、躯幹そう痒等)、血圧低下等の副作用が発現することがあるので、60分以上かけて点滴静注する。
腎障害のある患者、高齢者には、投与量・投与間隔の調節を行い、血中濃度をモニタリングするなど慎重に投与する。
本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現を防ぐため、次のことに注意する。
- 感染症の治療に十分な知識と経験を持つ医師又はその指導の下で行う。
- 原則として他の抗菌薬及び本剤に対する感受性を確認する。
- 投与期間は、感染部位、重症度、患者の症状等を考慮し、適切な時期に、本剤の継続投与が必要か否か判定し、疾病の治療上必要な最低限の期間の投与にとどめる。
副作用
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
重大な副作用(頻度不明)
- ショック、アナフィラキシー:ショック、アナフィラキシー(呼吸困難、全身潮紅、浮腫等)を起こすことがあるので、観察を十分に行い、症状が現れた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
- 急性腎障害、間質性腎炎:急性腎障害、間質性腎炎等の重篤な腎障害が現れることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止することが望ましいが、やむを得ず投与を続ける場合には減量するなど慎重に投与する。
- 汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少:汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少が現れることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
- 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、剥脱性皮膚炎:中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、剥脱性皮膚炎が現れることがあるので、観察を十分に行い、このような症状が現れた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。
- 薬剤性過敏症症候群:初期症状として発疹、発熱がみられ、更に肝機能障害、リンパ節腫脹、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現等を伴う遅発性の重篤な過敏症状が現れることがあるので、観察を十分に行い、このような症状が現れた場合には投与を中止し、適切な処置を行う(なお、ヒトヘルペスウイルス6再活性化(HHV-6再活性化)等のウイルス再活性化を伴うことが多く、投与中止後も発疹、発熱、肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意する)。
- 第8脳神経障害:眩暈、耳鳴、聴力低下等の第8脳神経障害が現れることがあるので、聴力検査等観察を十分に行う(また、このような症状が現れた場合には投与を中止することが望ましいが、やむを得ず投与を続ける場合には慎重に投与する)。
- 偽膜性大腸炎:偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎が現れることがあるので、腹痛、頻回の下痢が現れた場合には、直ちに投与を中止するなど適切な処置を行う。
- 肝機能障害、黄疸:AST上昇(GOT上昇)、ALT上昇(GPT上昇)、Al-P上昇等、黄疸が現れることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行う。
その他の副作用(頻度不明)
- 過敏症:発疹、そう痒、発赤、蕁麻疹、顔面潮紅、線状IgA水疱症[症状(異常)が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行う]。
- 肝臓:AST上昇(GOT上昇)、ALT上昇(GPT上昇)、Al-P上昇、ビリルビン上昇、LDH上昇、γ-GTP上昇、LAP上昇[症状(異常)が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行う]。
- 腎臓:BUN上昇、クレアチニン上昇[症状(異常)が認められた場合には、投与を中止することが望ましいが、やむを得ず投与を続ける場合には適切な処置を行う]。
- 血液:貧血、白血球減少、血小板減少、好酸球増多。
- 消化器:下痢、嘔気、嘔吐、腹痛。
- その他:発熱、静脈炎、血管痛、皮膚血管炎、悪寒、注射部疼痛。
使用上の注意
(警告)
本剤の耐性菌の発現を防ぐため、「効能・効果に関連する使用上の注意」、「用法・用量に関連する使用上の注意」の項を熟読の上、適正使用に努める。
(禁忌)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
(原則禁忌)
テイコプラニン、ペプチド系抗生物質又はアミノグリコシド系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者。
ペプチド系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、テイコプラニンによる難聴又はその他の難聴のある患者[難聴が発現又は増悪する恐れがある]。
(慎重投与)
腎障害のある患者[排泄が遅延し、蓄積するため、血中濃度をモニタリングするなど慎重に投与する]。
肝障害のある患者[肝障害が悪化することがある]。
高齢者。
低出生体重児、新生児。
(重要な基本的注意)
本剤によるショック、アナフィラキシーの発生を確実に予知できる方法がないので、次の措置をとる。
- 事前に既往歴等について十分な問診を行う(なお、抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認する)。
- 投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておく。
- 投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行い、特に、投与開始直後は注意深く観察する。
本剤はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)感染症、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症に対してのみ有用性が認められている。但し、ブドウ球菌性腸炎に対しては非経口的に投与しても有用性は認められない。
投与期間中は血中濃度をモニタリングすることが望ましい。
発熱性好中球減少症の治療においては次のことに注意する。
- 発熱性好中球減少症の治療において、本剤は、好中球減少症であり、発熱が認められ、かつMRSA又はMRCNSが原因菌であると疑われる場合に限定して使用する。
- 発熱性好中球減少症の治療において、好中球数、発熱の回復が認められた場合には、本剤の投与中止を考慮する。
- 発熱性好中球減少症の治療において、腫瘍熱・薬剤熱等の非感染性の発熱であることが確認された場合には、速やかに本剤の投与を中止する。
(相互作用)
併用注意:
全身麻酔薬(チオペンタール等)[同時に投与すると、紅斑、ヒスタミン様潮紅、アナフィラキシー反応等の副作用が発現することがあるので、全身麻酔の開始1時間前には本剤の点滴静注を終了する(全身麻酔薬には、アナフィラキシー作用、ヒスタミン遊離作用を有するものがあり、本剤にもヒスタミン遊離作用があるが、相互作用の機序は不明)]。
腎毒性及び聴器毒性を有する薬剤(アミノグリコシド系抗生物質(アルベカシン、トブラマイシン等)、白金含有抗悪性腫瘍剤(シスプラチン、ネダプラチン等))[腎障害・聴覚障害が発現・悪化する恐れがあるので、併用は避けるが、やむを得ず併用する場合は、慎重に投与する((機序)両剤共に腎毒性、聴器毒性を有するが、相互作用の機序は不明(危険因子)腎障害のある患者、高齢者、長期投与の患者等)]。
腎毒性を有する薬剤(アムホテリシンB、シクロスポリン等)[腎障害が発現・悪化する恐れがあるので、併用は避けるが、やむを得ず併用する場合は、慎重に投与する((機序)両剤共に腎毒性を有するが、相互作用の機序は不明(危険因子)腎障害のある患者、高齢者、長期投与の患者等)]。
(高齢者への投与)
高齢者では腎機能が低下している場合が多いので、投与前及び投与中に腎機能検査を行い、腎機能低下の程度により投与量・投与間隔を調節し、血中濃度をモニタリングするなど慎重に投与する。
(妊婦・産婦・授乳婦等への投与)
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない]。
授乳中の婦人には、投与することを避け、やむを得ず投与する場合は授乳を中止する[ヒト母乳中に移行する]。
(小児等への投与)
腎の発達段階にあるため、特に低出生体重児、新生児においては血中濃度の半減期が延長し高い血中濃度が長時間持続する恐れがあるので、血中濃度をモニタリングするなど、慎重に投与する。
(過量投与)
過量投与時の徴候、症状:急性腎障害等の腎障害、難聴等の第8脳神経障害を起こす恐れがある。
過量投与時の処置:HPM(high performance membrane)を用いた血液透析により血中濃度を下げることが有効であるとの報告がある。
(適用上の注意)
調製方法:
- 本剤0.5g(力価)バイアルには10mLの日局注射用水、日局生理食塩液又は日局5%ブドウ糖注射液を加えて溶解し、更に0.5g(力価)に対し100mL以上の割合で補液に加えて希釈し、60分以上かけて点滴静注する。
- 調製後は速やかに使用する。
調製時:現在までに、次の注射剤と混合すると、配合変化を起こすことが確認されているので、混注しない。
- アミノフィリン注射剤、フルオロウラシル製剤注射剤と混合すると外観変化とともに経時的に著しい力価低下を来すことがある。
- ヒドロコルチゾンコハク酸エステル注射剤、セフォタキシム注射剤、セフチゾキシム注射剤、セフメノキシム注射剤、セフォゾプラン注射剤、パニペネム・ベタミプロン注射剤、アズトレオナム製剤注射剤と混合すると著しい外観変化を起こすことがある。
投与時:
- 血栓性静脈炎が起こることがあるので、薬液の濃度及び点滴速度に十分注意し、繰り返し投与する場合は、点滴部位を変更する。
- 薬液が血管外に漏れると壊死が起こる恐れがあるので、薬液が血管外に漏れないように慎重に投与する。
投与経路:筋肉内注射は痛みを伴うので行わない。
(その他の注意)
外国で急速静注により心停止を起こしたとの報告がある。
(取扱い上の注意)
安定性試験:最終包装製品を用いた長期保存試験(25℃、3年間)の結果、通常の市場流通下において3年間安定であることが確認された。