ゼルボラフ錠240mgの添付文書
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効果・効能
BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫。
(効能又は効果に関連する注意)
- 十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、BRAF遺伝子変異が確認された患者に投与すること(検査にあたっては、承認された体外診断用医薬品又は医療機器を用いること)。なお、承認された体外診断用医薬品又は医療機器に関する情報については、次のウェブサイトから入手可能である:
https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/cd/0001.html。
- 「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で適応患者の選択を行うこと。
- 本剤の術後補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。
用法・用量
通常、成人にはベムラフェニブとして1回960mgを1日2回経口投与する。
(用法及び用量に関連する注意)
- 副作用が発現した場合には、1)の規定を参考にして減量・休薬すること。ただし、有棘細胞癌(皮膚扁平上皮癌)又は新たな原発性悪性黒色腫が発現した場合には、外科的切除等の適切な処置を行った上で、減量・休薬することなく治療の継続を可能とする。また、QT間隔延長が発現した場合には、2)の規定を参考にして減量・休薬すること〔8.1、8.3、9.1.1、11.1.1、11.1.2、11.1.6参照〕。
[減量・休薬の規定]
①. Grade1又は忍容可能なGrade2:減量・休薬不要。
②. 忍容不能なGrade2又はGrade3:初回発現は休薬し、Grade1以下又はベースラインまで軽快後、1回720mg(1日2回)で投与を再開(休薬前に1回720mgに減量されていた場合には1回480mgとする)、2回目発現は休薬し、Grade1以下又はベースラインまで軽快後、1回480mg(1日2回)で投与を再開(休薬前に1回480mgに減量されていた場合には本剤の投与を中止する)、3回目発現は投与中止。
③. Grade4:初回発現は原則投与中止するが、治療継続が患者にとって望ましいと判断された場合には、休薬し、Grade1以下又はベースラインまで軽快後、1回480mg(1日2回)で投与を再開(休薬前に1回480mgに減量されていた場合には本剤の投与を中止する)、2回目発現は投与中止。
NCI-CTCAE v4.0によりGradeを判定。
[QT間隔延長に基づく減量・休薬の規定]
①. QTc値が500msを超えかつベースライン値からの延長が60msを超える場合:投与中止。
②. QTc値が500msを超えかつベースライン値からの延長が60ms以下の場合:初回発現は休薬し、QTc値が500ms以下まで軽快後、1回720mg(1日2回)で投与を再開(休薬前に1回720mgに減量されていた場合には1回480mgとする)、2回目発現は休薬し、QTc値が500ms以下まで軽快後、1回480mg(1日2回)で投与を再開(休薬前に1回480mgに減量されていた場合には本剤の投与を中止する)、3回目発現は投与中止。
- 食後に本剤を投与した場合、Cmax増加及びAUC増加するとの報告がある。食事の影響を避けるため、食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避けることが望ましい〔16.2.1参照〕。
- 他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
1.1. 有棘細胞癌:皮膚有棘細胞癌(18.7%)、ケラトアカントーマ(10.6%)、ボーエン病(0.6%)があらわれることがある〔7.1、8.1参照〕。
1.2. 悪性腫瘍(二次発癌):扁平上皮癌(皮膚以外)(頻度不明)、原発性悪性黒色腫(1.1%)等があらわれることがある〔7.1、8.2参照〕。
1.3. アナフィラキシー(頻度不明)、過敏症(0.9%):アナフィラキシーを含む重篤な過敏症があらわれることがある。
1.4. 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(0.3%)、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis;TEN)(頻度不明)、多形紅斑(0.3%)、紅皮症(剥脱性皮膚炎等)(0.9%):皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症等の重篤な皮膚障害があらわれることがある。
1.5. 薬剤性過敏症症候群(頻度不明):初期症状として発疹、発熱が認められ、更に肝機能障害、リンパ節腫脹、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現等を伴う遅発性の重篤な過敏症状があらわれることがある(本剤の投与中止後も発疹、発熱、肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意すること)。
1.6. QT間隔延長(2.0%)〔7.1、8.3、9.1.1参照〕。
1.7. 肝不全(頻度不明)、肝機能障害(2.0%)、黄疸(頻度不明):肝不全、肝機能障害、黄疸等の肝障害があらわれることがある〔8.4参照〕。
1.8. 急性腎障害(頻度不明)〔8.5参照〕。
- その他の副作用
- 皮膚:(5%以上)発疹(湿疹、丘疹等)(54.0%)、光線過敏症(46.0%)、脱毛症(46.0%)、皮膚過角化(25.9%)、皮膚そう痒症(21.8%)、皮膚乾燥、紅斑、日光性角化症、脂漏性角化症、手足症候群、毛孔性角化症、皮膚病変、毛包炎、(1~5%未満)ざ瘡様皮膚炎、皮膚剥脱、ざ瘡、メラノサイト性母斑、稗粒腫、皮膚嚢腫、全身性皮疹、結節性紅斑、掌蹠角皮症、皮膚色素沈着障害、皮膚炎、皮膚肥厚、毛質異常、蕁麻疹、日光皮膚炎、毛髪成長異常、アレルギー性皮膚炎、寝汗、多汗症、皮膚腫瘤、皮膚変色、(1%未満)せつ、顔面腫脹、休止期脱毛、苔癬様角化症、熱傷、皮膚刺激、皮膚毒性、皮膚疼痛、脂肪織炎。
- 耳:(1~5%未満)回転性めまい。
- 眼:(1~5%未満)ブドウ膜炎、眼充血、流涙増加、眼乾燥、結膜炎、羞明、眼刺激、霧視、(1%未満)眼痛、(頻度不明)網膜静脈閉塞。
- 筋・骨格:(5%以上)関節痛(49.4%)、筋骨格痛、四肢痛、(1~5%未満)筋骨格硬直、関節炎、関節腫脹、背部痛、筋力低下、筋痙縮、(1%未満)関節滲出液、頚部痛、変形性関節症、腱痛、デュプイトラン拘縮。
- 血液・凝固:(1~5%未満)貧血、リンパ球減少、血小板減少、好中球減少、(1%未満)好酸球増加症、白血球減少。
- 呼吸器:(1~5%未満)呼吸困難、咽頭喉頭痛、上気道感染(鼻咽頭炎、副鼻腔炎、上気道感染等)。
- 消化器:(5%以上)悪心(26.1%)、下痢(21.3%)、嘔吐、腹痛、(1~5%未満)口内炎、逆流性食道炎、口唇炎、便秘、口内乾燥、消化不良、腹部膨満、(1%未満)鼓腸、口唇腫脹、腹部不快感、嚥下障害、膵炎。
- 肝臓:(5%以上)血中ビリルビン増加、Al-P上昇、ALT上昇、AST上昇、(1~5%未満)γ-GTP増加。
- 心・血管系:(5%以上)ほてり、(1~5%未満)リンパ浮腫、(1%未満)血管炎、動悸。
- 精神神経系:(5%以上)頭痛、味覚異常、末梢神経障害、(1~5%未満)不眠症、浮動性めまい、知覚過敏、嗜眠、(1%未満)傾眠、振戦、(頻度不明)顔面神経麻痺。
- 生殖器:(1~5%未満)乳頭痛。
- 代謝:(5%以上)食欲減退、(1~5%未満)低カリウム血症、脱水、(1%未満)高コレステロール血症。
- その他:(5%以上)疲労(43.7%)、皮膚乳頭腫(21.6%)、浮腫(全身性浮腫、末梢性浮腫)、発熱、体重減少、(1~5%未満)疼痛、乾燥症、棘細胞腫、悪寒、乳頭腫、アクロコルドン、インフルエンザ様疾患、カンジダ症、胸痛、全身健康状態低下、眼瞼乳頭腫、小結節、(1%未満)ヘルペスウイルス感染、腫瘤、転倒、乳頭腫ウイルス感染、膿瘍。
使用上の注意
(警告)
本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
(禁忌)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
(重要な基本的注意)
- 有棘細胞癌があらわれることがあるので、定期的に皮膚の状態を確認すること。また、皮膚の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること〔7.1、11.1.1参照〕。
- 皮膚以外の部位に扁平上皮癌があらわれることがあるので、観察を十分に行うこと〔11.1.2参照〕。
- QT間隔延長があらわれることがあるので、本剤の投与開始前には心電図検査及び電解質測定を行うこと(投与開始前にQTcベースライン値が500msを超える場合又は投与開始前に補正できない電解質異常が認められる場合には投与を避けること)。本剤投与期間中は定期的に心電図検査及び電解質測定を行うこと〔7.1、9.1.1、11.1.6参照〕。
- 肝不全、肝機能障害、黄疸等の肝障害又はALT上昇、AST上昇、ビリルビン上昇等があらわれることがあるので、患者の状態に応じて定期的に肝機能検査を行うこと〔11.1.7参照〕。
- 急性腎障害があらわれることがあるので、投与開始前及び投与中に定期的に腎機能検査を行うこと〔11.1.8参照〕。
- 光線過敏症があらわれることがあるので、外出時には帽子や衣類等による遮光や日焼け止め効果の高いサンスクリーンの使用により、日光やUV光線の照射を避けるよう患者を指導すること。
- ブドウ膜炎等の重篤な眼障害が報告されているので、定期的に眼の異常の有無を確認すること。また、眼の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。
(特定の背景を有する患者に関する注意)
(合併症・既往歴等のある患者)
- 1.1. QT間隔延長のおそれ又はその既往歴のある患者:QT間隔延長が起こるおそれがある〔7.1、8.3、11.1.6参照〕。
(肝機能障害患者)
- 3.1. 重度の肝機能障害のある患者:重度肝機能障害のある患者を対象とした臨床試験は実施していない。
(生殖能を有する者)
妊娠する可能性のある女性:妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後2週間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明し、経口避妊薬による避妊法の場合には、経口避妊薬以外の方法を併せて使用すること〔9.5妊婦の項、10.2参照〕。
(妊婦)
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠ラット及びウサギを用いた胚・胎仔発生に関する試験において、胚・胎仔への影響は認められていないが、最大投与量におけるAUCは臨床曝露量の約1.2倍(ラット)及び約0.5倍(ウサギ)であった〔9.4生殖能を有する者の項参照〕。
(授乳婦)
授乳しないことが望ましい(乳汁移行に関するデータはないが、ベムラフェニブは乳癌耐性蛋白(BCRP)の基質であるため、乳汁移行の可能性がある)〔16.7.6参照〕。
(小児等)
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
(高齢者)
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能が低下していることが多い)。
(相互作用)
ベムラフェニブは主にCYP3A4で代謝され、CYP3A4を誘導し、CYP1A2、CYP2C9及びP-糖蛋白(P-gp)を阻害することが示されている〔16.4、16.7.6参照〕。
- 2. 併用注意:
- CYP3A4の基質となる薬剤(経口避妊薬、ミダゾラム、アトルバスタチン、シンバスタチン等)〔9.4生殖能を有する者の項、16.7.1参照〕[これらの薬剤の血漿中濃度が低下する可能性がある(併用薬剤の代謝が誘導され血漿中濃度が低下する可能性がある)]。
- CYP3A4を誘導する薬剤(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン等)〔16.7.2参照〕[ベムラフェニブの血漿中濃度が低下し本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、誘導作用のない薬剤への代替を考慮すること(ベムラフェニブの代謝が誘導され血漿中濃度が低下する可能性がある)]。
- CYP3A4を阻害する薬剤(イトラコナゾール、ポサコナゾール、クラリスロマイシン等)〔16.7.3参照〕[ベムラフェニブの血漿中濃度が上昇する可能性があるので、CYP3A4阻害剤と併用する場合は、必要に応じ本剤の減量を考慮すること(ベムラフェニブの代謝が阻害され血漿中濃度が上昇する可能性がある)]。
- CYP1A2の基質となる薬剤(カフェイン、テオフィリン、チザニジン等)〔16.7.1、16.7.4参照〕[これらの薬剤の血漿中濃度が上昇する可能性がある(併用薬剤の代謝が阻害され血漿中濃度が上昇する可能性がある)]。
- CYP2C9の基質となる薬剤(ワルファリン等)〔16.7.1参照〕[これらの薬剤の血漿中濃度が上昇する可能性がある(併用薬剤の代謝が阻害され血漿中濃度が上昇する可能性がある)]。
- P-gpの基質となる薬剤(ジゴキシン等)〔16.7.5参照〕[これらの薬剤の血漿中濃度が上昇する可能性がある(本剤のP-gp阻害作用により併用薬剤の血漿中濃度が上昇する可能性がある)]。
- QT間隔延長を引き起こすことが知られている薬剤(イミプラミン、ピモジド等)、抗不整脈薬(キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、ソタロール等)[QT間隔延長作用を増強する可能性がある(本剤及びこれらの薬剤はいずれもQT間隔を延長させるおそれがあるため、併用により作用が増強する可能性がある)]。
- 放射線照射[放射線照射の併用又は本剤投与前後の放射線照射により放射線皮膚障害、放射線性肺臓炎等の放射線照射リコール反応、放射線増感作用があらわれることがある(放射線毒性を増強させる可能性がある)]。
(適用上の注意)
- 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
(その他の注意)
- 臨床使用に基づく情報
1.1. 海外市販後の自発報告において、RAS遺伝子変異を有する慢性骨髄単球性白血病進行が報告されている。
1.2. 本剤とイピリムマブを併用投与した海外第1相臨床試験において、重度の肝機能障害が高頻度に発現し、忍容性が認められなかった。
- 非臨床試験に基づく情報
イヌ39週間毒性試験において、忍容性低下のため早期(投与10日目)に終了した900mg/kg/日の1例に限局的骨髄壊死が報告されており、この時のAUCは臨床曝露量の約0.5倍であった。
(取扱い上の注意)
湿気を避けて保存すること(PTP包装のまま保存すること)。
(保管上の注意)
室温保存。