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リンヴォック錠15mg
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効果・効能

1.  **既存治療で効果不十分な次記疾患**:①関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、②乾癬性関節炎、③X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎、④強直性脊椎炎、⑤*アトピー性皮膚炎。
1.  中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)。
1.  中等症から重症の活動期クローン病の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)。

    *)最適使用推進ガイドライン対象。

(効能又は効果に関連する注意)

    1. 〈関節リウマチ〉過去の治療において、メトトレキサートをはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること〔1.4参照〕。
    1. 〈乾癬性関節炎〉既存の全身療法(従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)等)で十分な効果が得られない、難治性の関節症状を有する患者に投与すること〔1.5、17.1.7参照〕。
    1. 〈X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎〉過去の治療において、既存治療薬(非ステロイド性抗炎症薬等)による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状及び炎症の客観的徴候が認められる場合に投与すること〔1.6参照〕。
    1. 〈強直性脊椎炎〉過去の治療において、既存治療薬(非ステロイド性抗炎症薬等)による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与すること〔1.6参照〕。
    1. 〈アトピー性皮膚炎〉ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等の抗炎症外用剤による適切な治療を一定期間施行しても、十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に用いること。
    1. 〈アトピー性皮膚炎〉原則として、本剤投与時にはアトピー性皮膚炎の病変部位の状態に応じて抗炎症外用剤を併用すること。
    1. 〈アトピー性皮膚炎〉アトピー性皮膚炎の場合、本剤投与時も保湿外用剤を継続使用すること。
    1. 〈潰瘍性大腸炎〉過去の治療において、他の薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫調節薬又は生物製剤)による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与すること〔1.7参照〕。
    1. 〈クローン病〉過去の治療において、栄養療法、他の薬物療法(ステロイド、免疫調節薬又は生物製剤)による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与すること〔1.8参照〕。

用法・用量

〈関節リウマチ〉

通常、成人にはウパダシチニブとして15mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて7.5mgを1日1回投与することができる。

〈乾癬性関節炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎、強直性脊椎炎〉

通常、成人にはウパダシチニブとして15mgを1日1回経口投与する。

〈アトピー性皮膚炎〉

通常、成人にはウパダシチニブとして15mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて30mgを1日1回投与することができる。

通常、12歳以上かつ体重30kg以上の小児にはウパダシチニブとして15mgを1日1回経口投与する。

〈潰瘍性大腸炎〉

導入療法では、通常、成人にはウパダシチニブとして45mgを1日1回8週間経口投与する。なお、効果不十分な場合はさらに8週間投与することができる。

維持療法では、通常、成人にはウパダシチニブとして15mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて30mgを1日1回投与することができる。

〈クローン病〉

導入療法では、通常、成人にはウパダシチニブとして45mgを1日1回12週間経口投与する。

維持療法では、通常、成人にはウパダシチニブとして15mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて30mgを1日1回投与することができる。

(用法及び用量に関連する注意)

    1. 〈効能共通〉免疫抑制作用が増強されると感染症のリスクが増加することが予想されるので、本剤と適応疾患(関節リウマチ)の生物製剤、適応疾患(乾癬性関節炎)の生物製剤、適応疾患(X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎)の生物製剤、適応疾患(強直性脊椎炎)の生物製剤、適応疾患(アトピー性皮膚炎)の生物製剤、適応疾患(潰瘍性大腸炎)の生物製剤、適応疾患(クローン病)の生物製剤、他の経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、タクロリムス(局所製剤以外)、シクロスポリン(局所製剤以外)、アザチオプリン(局所製剤以外)、ミゾリビン(局所製剤以外)等のような免疫抑制剤(局所製剤以外)(感染症のリスクが増加)との併用はしないこと(本剤とこれらの薬剤との併用経験はない)〔8.1参照〕。
    1. 〈乾癬性関節炎〉治療反応が得られない場合は、現在の治療計画の継続を慎重に再考すること(本剤による治療反応は、通常、投与開始から12週以内に得られる)。
    1. 〈X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎、強直性脊椎炎〉治療反応が得られない場合は、現在の治療計画の継続を慎重に再考すること(本剤による治療反応は、通常、投与開始から16週以内に得られる)。
    1. 〈アトピー性皮膚炎〉強いCYP3A4阻害剤継続的投与中の患者には、本剤15mgを1日1回投与すること〔10.2、16.7.1参照〕。
    1. 〈アトピー性皮膚炎〉アトピー性皮膚炎で高度腎機能障害患者には、本剤15mgを1日1回投与すること〔9.2腎機能障害患者の項、16.6.1参照〕。
    1. 〈アトピー性皮膚炎〉本剤による治療反応は、通常投与開始から12週までには得られるため、12週までに治療反応が得られない場合は、用量調節又は投与中止を考慮すること。
    1. 〈潰瘍性大腸炎〉強いCYP3A4阻害剤と併用する場合は、導入療法では本剤30mgを1日1回投与し、維持療法では本剤30mgは投与しないこと〔10.2、16.7.1参照〕。
    1. 〈潰瘍性大腸炎〉潰瘍性大腸炎で高度腎機能障害患者には、導入療法では本剤30mgを1日1回投与し、維持療法では本剤30mgは投与しないこと〔9.2腎機能障害患者の項、16.6.1参照〕。
    1. 〈潰瘍性大腸炎〉本剤の導入療法の開始後16週時点で治療反応が得られない場合は、他の治療への切り替えを考慮すること。
    1. 〈クローン病〉強いCYP3A4阻害剤と併用する場合は、導入療法では本剤30mgを1日1回投与し、維持療法では本剤30mgは投与しないこと〔10.2、16.7.1参照〕。
    1. 〈クローン病〉クローン病で高度腎機能障害患者には、導入療法では本剤30mgを1日1回投与し、維持療法では本剤30mgは投与しないこと〔9.2腎機能障害患者の項、16.6.1参照〕。
    1. 〈クローン病〉導入療法後に本剤30mgを1日1回投与し、本剤の投与開始24週後までに治療反応が得られない場合は、他の治療への切り替えを考慮すること。

副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

    1. 重大な副作用
  1. 1.1. 感染症:帯状疱疹(4.5%)、肺炎(1.1%)、結核(頻度不明)等の重篤な感染症(日和見感染症を含む)があらわれ、致死的経過をたどるおそれがあるので、本剤投与中に重篤な感染症を発現した場合は、感染症がコントロールできるようになるまでは投与を中止すること〔1.1、1.2.1、1.2.2、2.2、2.3、8.1、8.2、8.4、9.1.1-9.1.3、9.8高齢者の項、15.1.1、15.1.3、15.1.5、15.1.7、15.1.9、15.1.11、15.1.13参照〕。

  2. 1.2. 消化管穿孔(0.1%未満):異常が認められた場合には投与を中止するとともに、腹部X線、CT等の検査を実施するなど十分に観察し、適切な処置を行うこと〔9.1.7参照〕。

  3. 1.3. 好中球減少(2.8%)、リンパ球減少(1.7%)、ヘモグロビン減少(0.5%)。

    好中球数:本剤投与開始後、好中球数が1000/mm3未満になった場合には、1000/mm3以上となるまで本剤の投与を中断すること。

    リンパ球数:本剤投与開始後、リンパ球数が500/mm3未満になった場合には、500/mm3以上となるまで本剤の投与を中断すること。

    ヘモグロビン値:本剤投与開始後、ヘモグロビン値が8g/dL未満になった場合には、8g/dL以上となるまで本剤の投与を中断すること。

    〔2.5-2.7、8.3参照〕。

  4. 1.4. 肝機能障害:ALT上昇(2.8%)、AST上昇(2.3%)等の肝機能障害があらわれるおそれがある〔8.10参照〕。

  5. 1.5. 間質性肺炎(頻度不明):発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状に十分に注意し、異常が認められた場合には、速やかに胸部X線検査、速やかに胸部CT検査及び速やかに血液ガス検査等を実施し、本剤の投与を中止するとともにニューモシスチス肺炎との鑑別診断(β-Dグルカンの測定等)を考慮に入れ適切な処置を行うこと〔9.1.8参照〕。

  6. 1.6. 静脈血栓塞栓症:肺塞栓症(0.1%)及び深部静脈血栓症(0.1%未満)があらわれることがある〔9.1.4参照〕。

  7. 1.7. 重篤な過敏症:アナフィラキシー(頻度不明)及び血管浮腫(0.1%未満)があらわれるおそれがある〔2.1参照〕。

    1. その他の副作用
    1. 消化器:(1%~10%未満)悪心、腹痛(上腹部痛を含む)。
    2. 呼吸器:(1%~10%未満)咳嗽。
    3. 感染症:(10%以上)上気道感染(急性副鼻腔炎、喉頭炎、ウイルス性喉頭炎、鼻咽頭炎、口腔咽頭痛、咽頭膿瘍、咽頭炎、レンサ球菌性咽頭炎、咽頭扁桃炎、気道感染、ウイルス性気道感染、鼻炎、鼻喉頭炎、副鼻腔炎、扁桃炎、細菌性扁桃炎、ウイルス性咽頭炎、ウイルス性上気道感染を含む)、(1%~10%未満)気管支炎(ウイルス性気管支炎、細菌性気管支炎、気管気管支炎を含む)、単純ヘルペス(陰部ヘルペス、陰部単純ヘルペス、ヘルペス性皮膚炎、ヘルペス眼感染、鼻ヘルペス、眼部単純ヘルペス、ヘルペスウイルス感染、口腔ヘルペスを含む)、インフルエンザ、毛包炎、(1%未満)口腔カンジダ。
    4. 皮膚及び皮下組織:(1%~10%未満)ざ瘡(嚢胞性ざ瘡、ざ瘡様皮膚炎を含む)、発疹(紅斑性皮疹、毛孔性皮疹、斑状皮疹、斑状丘疹状皮疹、丘疹性皮疹、そう痒性皮疹、膿疱性皮疹を含む)、(1%未満)蕁麻疹、皮膚有棘細胞癌、基底細胞癌。
    5. 神経系障害:(1%~10%未満)頭痛。
    6. 一般・全身障害及び投与部位の状態:(1%未満)発熱、疲労。
    7. 臨床検査値:(1%~10%未満)CK上昇、高コレステロール血症(血中コレステロール増加を含む)、高脂血症(脂質異常症、低比重リポ蛋白増加を含む)、(1%未満)高トリグリセリド血症、体重増加。

      副作用の発現頻度は、関節リウマチ(投与期間1.36年(中央値)の安全性データ)、乾癬性関節炎(投与期間1.32年(中央値)の安全性データ)、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(投与期間0.87年(中央値)の安全性データ)、強直性脊椎炎(投与期間0.82年(中央値)の安全性データ)、アトピー性皮膚炎(投与期間1.19年(中央値)の安全性データ)、潰瘍性大腸炎(投与期間1.66年(中央値)の安全性データ)及びクローン病(投与期間0.939年(中央値)の安全性データ)を対象とし、本剤との関連性が否定できない事象につき、当該臨床試験の統合データに基づいて算出した。

使用上の注意

(警告)

    1. 〈効能共通〉本剤投与により、結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染等による重篤な感染症の新たな発現もしくは重篤な感染症悪化等や悪性腫瘍の発現が報告されている。本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、重篤な感染症の新たな発現もしくは悪化等や悪性腫瘍の発現が報告されていることを患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

    また、本剤投与により重篤な副作用が発現し、致死的な経過をたどった症例が報告されているので、緊急時の対応が十分可能な医療施設及び医師が使用すること。また、本剤投与後に有害事象が発現した場合には、主治医に連絡するよう患者に注意を与えること〔1.2.1、1.2.2、2.2、2.3、8.1、8.2、8.7、8.8、9.1.1-9.1.3、9.8高齢者の項、11.1.1、15.1.1-15.1.15参照〕。

    1. 〈効能共通〉感染症
  1. 2.1. 〈効能共通〉重篤な感染症:肺炎、敗血症、真菌感染症を含む日和見感染症等の致命的感染症が報告されているため、十分な観察を行うなど感染症の発現に注意すること〔1.1、2.2、8.1、9.1.1、9.1.3、9.8高齢者の項、11.1.1、15.1.1、15.1.3、15.1.5、15.1.7、15.1.9、15.1.11、15.1.13参照〕。

  2. 2.2. 〈効能共通〉結核:肺外結核(泌尿生殖器結核、リンパ節結核等)を含む結核が報告されている。結核の既感染者では症状の顕在化及び悪化のおそれがあるため、本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部X線検査に加え、インターフェロンγ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。結核の既往歴を有する患者及び結核の感染が疑われる患者には、結核等の感染症について診療経験を有する医師と連携の下、原則として本剤投与前に適切な抗結核薬を投与すること。ツベルクリン反応検査等の検査が陰性の患者において、投与後活動性結核が認められた例も報告されている〔1.1、2.3、8.2、9.1.2、11.1.1参照〕。

    1. 〈効能共通〉本剤についての十分な知識と適応疾患の治療の知識・経験をもつ医師が使用すること。
    1. 〈関節リウマチ〉本剤の治療を行う前に、少なくとも1剤の抗リウマチ薬等の使用を十分勘案すること〔5.1参照〕。
    1. 〈乾癬性関節炎〉本剤の治療を開始する前に、既存の全身治療の適用を十分に勘案すること〔5.2参照〕。
    1. 〈X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎、強直性脊椎炎〉本剤の治療を開始する前に、適応疾患の既存治療の適用を十分に勘案すること〔5.3、5.4参照〕。
    1. 〈潰瘍性大腸炎〉本剤の治療を行う前に、既存治療薬(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫調節薬又は生物製剤)の使用を十分勘案すること〔5.8参照〕。
    1. 〈クローン病〉本剤の治療を行う前に、栄養療法、既存治療薬(ステロイド、免疫調節薬又は生物製剤)の使用を十分勘案すること〔5.9参照〕。

(禁忌)

    1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者〔11.1.7参照〕。
    1. 重篤な感染症(敗血症等)の患者[症状が悪化するおそれがある]〔1.1、1.2.1、8.1、9.1.1、9.1.3、9.8高齢者の項、11.1.1、15.1.1、15.1.3、15.1.5、15.1.7、15.1.9、15.1.11、15.1.13参照〕。
    1. 活動性結核の患者[症状が悪化するおそれがある]〔1.1、1.2.2、8.2、9.1.2、11.1.1参照〕。
    1. 重度肝機能障害を有する患者〔9.3.1、16.6.2参照〕。
    1. 好中球数が1000/mm3未満の患者〔8.3、9.1.9、11.1.3参照〕。
    1. リンパ球数が500/mm3未満の患者〔8.3、9.1.10、11.1.3参照〕。
    1. ヘモグロビン値が8g/dL未満の患者〔8.3、9.1.11、11.1.3参照〕。
    1. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性〔9.5妊婦の項参照〕。

(重要な基本的注意)

    1. 〈効能共通〉本剤は、免疫反応に関与するJAKファミリーを阻害するので、感染症に対する宿主免疫能に影響を及ぼす可能性があり、本剤の投与に際しては十分な観察を行い、感染症の発現や感染症増悪に注意すること。また、患者に対し、発熱、倦怠感等があらわれた場合には、速やかに主治医に相談するよう指導すること〔1.1、1.2.1、2.2、7.1、9.1.1、9.1.3、9.8高齢者の項、11.1.1参照〕。
    1. 〈効能共通〉本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部X線検査に加え、インターフェロンγ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。本剤投与中は胸部X線検査等の適切な検査を定期的に行うなど結核の発現には十分に注意すること。患者に対し、結核を疑う症状が発現した場合(持続する咳、発熱等)には速やかに主治医に連絡するよう説明すること〔1.1、1.2.2、2.3、9.1.2、11.1.1参照〕。
    1. 〈効能共通〉好中球減少、リンパ球減少及びヘモグロビン減少があらわれることがあるので、投与前の検査値を測定するとともに本剤投与開始後は定期的に好中球数、リンパ球数及びヘモグロビン値を確認すること〔2.5-2.7、9.1.9-9.1.11、11.1.3参照〕。
    1. 〈効能共通〉播種性帯状疱疹を含む帯状疱疹等のウイルス再活性化が報告されていることから、ヘルペスウイルス再活性化等の徴候や症状の発現に注意すること(ヘルペスウイルス等の再活性化の徴候や症状の発現が認められた場合には、患者に受診するよう説明し、本剤の投与を中断し速やかに適切な処置を行うこと)。また、ヘルペスウイルス以外のウイルス再活性化にも注意すること〔11.1.1参照〕。
    1. 〈効能共通〉本剤によるB型肝炎ウイルス再活性化が報告されているので、投与に先立ってB型肝炎ウイルス感染の有無を確認すること〔9.1.5参照〕。
    1. 〈効能共通〉感染症発現のリスクを否定できないので、本剤開始直前及び投与中の生ワクチン接種は行わないこと。
    1. 〈効能共通〉非黒色腫皮膚癌を除く、悪性リンパ腫、固形癌等の悪性腫瘍の発現が報告されている。本剤との因果関係は明らかではないが、悪性腫瘍の発現には注意すること〔1.1、8.8、15.1.2、15.1.4、15.1.6、15.1.8、15.1.10、15.1.12、15.1.14、15.1.15参照〕。
    1. 〈効能共通〉皮膚有棘細胞癌、基底細胞癌等の非黒色腫皮膚癌があらわれることがあるので、定期的に皮膚の状態を確認すること。また、皮膚の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。臨床試験において本剤15mgと比較して本剤30mgで非黒色腫皮膚癌の発現率が高いことが報告されている〔1.1、8.7、15.1.2、15.1.4、15.1.6、15.1.8、15.1.10、15.1.12、15.1.14、15.1.15参照〕。
    1. 〈効能共通〉総コレステロール上昇、LDLコレステロール上昇、HDLコレステロール上昇及びトリグリセリド上昇等の脂質検査値異常があらわれることがあるので、本剤投与開始後は定期的に脂質検査値を確認すること(臨床上必要と認められた場合には、脂質異常症治療薬の投与等の適切な処置を考慮すること)。
    1. 〈効能共通〉トランスアミナーゼ値上昇があらわれることがあるので、トランスアミナーゼ値のベースラインを測定するとともに、本剤投与中は観察を十分に行うこと(トランスアミナーゼ値が基準値上限の3倍以上に上昇した症例も報告されている)〔11.1.4参照〕。
    1. 〈アトピー性皮膚炎〉アトピー性皮膚炎の場合、本剤が疾病を完治させる薬剤でなく、本剤投与中も保湿外用剤等を併用する必要があることを患者に対して説明し、患者が理解したことを確認したうえで投与すること。
    1. 〈アトピー性皮膚炎〉本剤は免疫抑制作用を有することから、皮膚バリア機能が低下しているアトピー性皮膚炎患者への投与に際しては十分な観察を行い、皮膚感染症の発現に注意すること(アトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験において重篤な皮膚感染症が報告されている)。

(特定の背景を有する患者に関する注意)

(合併症・既往歴等のある患者)

  1. 1.1. 感染症(重篤な感染症を除く)の患者又は感染症が疑われる患者〔1.1、1.2.1、2.2、8.1、11.1.1参照〕。

  2. 1.2. 結核の既感染者(特に結核の既往歴のある患者及び胸部X線上結核治癒所見のある患者)又は結核感染が疑われる患者。 1. 結核の既感染者では、結核を活動化させるおそれがある〔1.1、1.2.2、2.3、8.2、11.1.1参照〕。 1. 結核の既往歴を有する場合及び結核感染が疑われる場合には、結核の診療経験がある医師に相談すること。次のいずれかの患者には、原則として本剤投与前に適切な抗結核薬を投与すること〔1.1、1.2.2、2.3、8.2、11.1.1参照〕[1)胸部画像検査で陳旧性結核に合致するか推定される陰影を有する患者、2)結核の治療歴(肺外結核を含む)を有する患者、3)インターフェロンγ遊離試験やツベルクリン反応検査等の検査により、結核既感染が強く疑われる患者、4)結核患者との濃厚接触歴を有する患者]。

  3. 1.3. 易感染性の状態にある患者:感染症を発現するリスクが高い〔1.1、1.2.1、2.2、8.1、11.1.1参照〕。

  4. 1.4. 静脈血栓塞栓症のリスクを有する患者〔11.1.6参照〕。

  5. 1.5. B型肝炎ウイルスキャリアの患者又はB型肝炎既往感染者(HBs抗原陰性かつHBc抗体陽性又はHBs抗原陰性かつHBs抗体陽性):肝機能検査値やHBV DNAのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルス再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。本剤によるB型肝炎ウイルスの再活性化が報告されている。なお、HBs抗原陽性又はHBV DNA陽性の患者は臨床試験では除外されている〔8.5参照〕。

  6. 1.6. C型肝炎患者:HCV抗体陽性、HCV RNA陽性の患者は臨床試験から除外されている。

  7. 1.7. 腸管憩室のある患者:消化管穿孔があらわれるおそれがある〔11.1.2参照〕。

  8. 1.8. 間質性肺炎の既往歴のある患者:定期的に問診を行うなど、注意すること(間質性肺炎があらわれるおそれがある)〔11.1.5参照〕。

  9. 1.9. 好中球減少(好中球数1000/mm3未満を除く)のある患者:好中球減少が更に悪化するおそれがある〔2.5、8.3参照〕。

  10. 1.10. リンパ球減少(リンパ球数500/mm3未満を除く)のある患者:リンパ球減少が更に悪化するおそれがある〔2.6、8.3参照〕。

  11. 1.11. ヘモグロビン値減少(ヘモグロビン値8g/dL未満を除く)のある患者:ヘモグロビン減少が更に悪化するおそれがある〔2.7、8.3参照〕。

(腎機能障害患者)

腎機能障害患者:腎機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加し、副作用が強くあらわれるおそれがある〔7.5、7.8、7.11、16.6.1参照〕。

(肝機能障害患者)

  1. 3.1. 重度肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者:投与しないこと(臨床試験において除外されている)〔2.4、16.6.2参照〕。

  2. 3.2. 軽度肝機能障害又は中等度肝機能障害のある患者:肝機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加し、副作用が強くあらわれるおそれがある〔16.6.2参照〕。

(生殖能を有する者)

妊娠する可能性のある女性:妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後1月経周期において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること〔9.5妊婦の項参照〕。

(妊婦)

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと(ラット及びウサギでヒト臨床用量15mg、30mg、45mg(母体経口投与量は4mg/kg/日及び25mg/kg/日)のそれぞれ1.2倍、0.7倍、0.56倍及び11倍、6.6倍、5.3倍に相当する曝露量で催奇形性が確認されている)〔2.8、9.4生殖能を有する者の項参照〕。

(授乳婦)

本剤投与中は授乳しないことが望ましい(ラットで乳汁中へ移行することが報告されているが、本剤のヒト乳汁中への移行は不明である)。

(小児等)

  1. 7.1. 〈関節リウマチ、乾癬性関節炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、クローン病〉関節リウマチの小児等、乾癬性関節炎の小児等、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎の小児等、強直性脊椎炎の小児等、潰瘍性大腸炎の小児等、クローン病の小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

  2. 7.2. 〈アトピー性皮膚炎〉アトピー性皮膚炎の体重30kg以上40kg未満の小児に投与する場合には、観察を十分に行い、慎重に投与すること。アトピー性皮膚炎の12歳未満の小児等、又はアトピー性皮膚炎の体重40kg未満の小児等を対象とした臨床試験は実施されていない〔17.1.12、17.1.13参照〕。

(高齢者)

高齢者:患者の状態を観察しながら、用量に留意して慎重に投与すること(臨床試験では非高齢者と比較して重篤な感染症等の有害事象の発現率の上昇が認められている)。また、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎及びクローン病を対象とした臨床試験では、65歳以上のアトピー性皮膚炎、65歳以上の潰瘍性大腸炎及び65歳以上のクローン病患者において、15mg1日1回投与と比較して、30mg1日1回投与で重篤な有害事象の発現率の上昇が認められている〔1.1、1.2.1、2.2、8.1、11.1.1参照〕。

(相互作用)

本剤は主としてCYP3Aで代謝される〔16.4参照〕。

  1. 2. 併用注意
    1. CYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、リトナビル、クラリスロマイシン等)、グレープフルーツ〔7.4、7.7、7.10、16.7.1参照〕[本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、これらを長期間併用する場合は副作用の発現等に注意すること(CYP3A阻害作用により本剤のクリアランスが低下するため)]。
    2. CYP3Aを強く誘導する薬剤(リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン等)、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品(St.John’s Wort)〔16.7.1参照〕[本剤の血中濃度が低下し効果減弱のおそれがあるので、併用する場合は疾患活動性の変化をモニタリングすること(CYP3A誘導作用により本剤のクリアランスが増加するため)]。

(適用上の注意)

    1. 薬剤調製時の注意

    粉砕して使用しないこと。

    1. 薬剤交付時の注意
  1. 2.1. PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。

  2. 2.2. かみ砕いて服用しないように患者に指導すること。

(その他の注意)

    1. 臨床使用に基づく情報
  1. 1.1. 〈関節リウマチ〉関節リウマチ患者を対象とした第3相試験における本剤15mg併合解析(長期、5試験)において、重篤な感染症の発現率は3.8件/100人・年であった〔1.1、1.2.1、2.2、11.1.1参照〕。

  2. 1.2. 〈関節リウマチ〉関節リウマチ患者を対象とした第3相試験における本剤15mg併合解析(長期、5試験)において、非黒色腫皮膚癌を除く悪性腫瘍の発現率は0.9件/100人・年であった。また投与期間別の発現状況は次のとおりであった〔1.1、8.7、8.8参照〕。

    [投与期間別の発現状況]

    1. 〈関節リウマチ〉投与期間0~6ヵ月(15mgQD投与群(2630例)):例数10/曝露期間1226.3人・年;発現率0.8/100人・年[95%信頼区間:0.4,1.5]。
    2. 〈関節リウマチ〉投与期間6~12ヵ月(15mgQD投与群(2630例)):例数6/曝露期間903.4人・年;発現率0.7/100人・年[95%信頼区間:0.2,1.4]。
    3. 〈関節リウマチ〉投与期間12ヵ月~(15mgQD投与群(2630例)):例数6/曝露期間522.9人・年;発現率1.1/100人・年[95%信頼区間:0.4,2.5]。
  3. 1.3. 〈乾癬性関節炎〉乾癬性関節炎患者を対象とした第3相試験における本剤15mg併合解析(長期、2試験)において、重篤な感染症の発現率は2.3件/100人・年であった〔1.1、1.2.1、2.2、11.1.1参照〕。

  4. 1.4. 〈乾癬性関節炎〉乾癬性関節炎患者を対象とした第3相試験における本剤15mg併合解析(長期、2試験)において、非黒色腫皮膚癌を除く悪性腫瘍の発現率は0.7例/100人・年であった〔1.1、8.7、8.8参照〕。

  5. 1.5. 〈X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎〉X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎を対象とした第3相試験における本剤15mgの解析(長期)において重篤な感染症の発現率は1.1件/100人・年であった〔1.1、1.2.1、2.2、11.1.1参照〕。

  6. 1.6. 〈X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎〉X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎を対象とした第3相試験における本剤15mgの解析(長期)において、非黒色腫皮膚癌を除く悪性腫瘍の発現率は0.4例/100人・年であった〔1.1、8.7、8.8参照〕。

  7. 1.7. 〈強直性脊椎炎〉強直性脊椎炎患者を対象とした第2/3相試験及び第3相試験における本剤15mgの解析(長期)において重篤な感染症の発現はそれぞれ0件及び6.0件/100人・年(うち、COVID-19関連のものは3.7件/100人・年)であった〔1.1、1.2.1、2.2、11.1.1参照〕。

  8. 1.8. 〈強直性脊椎炎〉強直性脊椎炎患者を対象とした第2/3相試験及び第3相試験における本剤15mgの解析(長期)では、非黒色腫皮膚癌を除く悪性腫瘍の発現率はそれぞれ0.4例/100人・年及び0例/100人・年であった〔1.1、8.7、8.8参照〕。

  9. 1.9. 〈アトピー性皮膚炎〉アトピー性皮膚炎患者を対象とした第3相試験における本剤15mg及び30mg併合解析(長期、3試験)において、重篤な感染症の発現率は15mg群で2.4件/100人・年、30mg群で3.3件/100人・年であった〔1.1、1.2.1、2.2、11.1.1参照〕。

  10. 1.10. 〈アトピー性皮膚炎〉アトピー性皮膚炎患者を対象とした第3相試験における本剤15mg及び30mg併合解析(長期、3試験)において、非黒色腫皮膚癌を除く悪性腫瘍の発現率は15mg群で0.2例/100人・年、30mg群で0.3例/100人・年であった〔1.1、8.7、8.8参照〕。

  11. 1.11. 〈潰瘍性大腸炎〉潰瘍性大腸炎を対象とした第2b/3相試験における導入療法期に本剤45mgを8週間(3試験)及び16週間(2試験:投与8週時点で臨床的改善を達成しなかった場合、更に8週間)投与した併合解析において、重篤な感染症の発現率はプラセボ8週間投与群では10.8件/100人・年であったのに対し、本剤8週間投与及び16週間投与でそれぞれ9.1件/100人・年及び2.6件/100人・年であった。第2b/3相試験における導入療法期に本剤45mgにより改善し、第3相試験(1試験)における維持療法期に本剤15mg及び30mgを投与した併合解析において、重篤な感染症の発現率はプラセボ群では6.2件/100人・年であったのに対し、15mg併合群で4.9件/100人・年、30mg併合群で3.0件/100人・年であった〔1.1、1.2.1、2.2、11.1.1参照〕。

  12. 1.12. 〈潰瘍性大腸炎〉潰瘍性大腸炎を対象とした第2b/3相試験における導入療法期に本剤45mgを8週間(3試験)及び16週間(2試験:投与8週時点で臨床的改善を達成しなかった場合、更に8週間)投与した併合解析において、悪性腫瘍の発現はなかった(第3相試験における導入療法期に本剤45mgにより改善し、第3相試験(1試験)における維持療法期に本剤15mg及び30mgを投与した併合解析において、非黒色腫皮膚癌を除く悪性腫瘍の発現率はプラセボ群では0.8例/100人・年であったのに対し、15mg併合群で0.5例/100人・年、30mg併合群で1.0例/100人・年であった)〔1.1、8.7、8.8参照〕。

  13. 1.13. 〈クローン病〉クローン病患者を対象とした第3相導入療法試験でプラセボ又は本剤45mgを12週間投与した集団における併合解析(2試験)において、重篤な感染症の発現率はプラセボ12週間投与では7.9件/100人・年であったのに対し、本剤12週間投与では9.3件/100人・年であった。第3相導入療法試験で本剤45mgの12週間投与により臨床的改善を達成し、第3相維持療法試験でプラセボ、本剤15mg又は30mgを投与した併合解析(長期、1試験)において、重篤な感染症の発現率はプラセボ群では7.2件/100人・年であったのに対し、15mg併合群で4.0件/100人・年、30mg併合群で5.7件/100人・年であった〔1.1、1.2.1、2.2、11.1.1参照〕。

  14. 1.14. 〈クローン病〉クローン病患者を対象とした第3相導入療法試験でプラセボ又は本剤45mgを12週間投与した集団における併合解析(2試験)において、悪性腫瘍の発現はなかった(第3相導入療法試験で本剤45mgの12週間投与により臨床的改善を達成し、第3相維持療法試験でプラセボ、本剤15mg又は30mgを投与した併合解析(長期、1試験)において、非黒色腫皮膚癌を除く悪性腫瘍の発現率はプラセボ群では0.7例/100人・年であったのに対し、15mg併合群で0.4例/100人・年、30mg併合群で1.5例/100人・年であった)〔1.1、8.7、8.8参照〕。

  15. 1.15. 〈効能共通〉心血管系事象のリスク因子を有する関節リウマチ患者を対象としたJAK阻害剤トファシチニブクエン酸塩の海外臨床試験の結果、主要評価項目である主要な心血管系事象(Major Adverse Cardiovascular Events:MACE)及び悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現率について、TNF阻害剤群に対するハザード比(95%信頼区間)はそれぞれ1.33(0.91,1.94)及び1.48(1.04,2.09)であり、95%信頼区間上限は予め設定していた非劣性マージン1.8を超え、TNF阻害剤群に対する非劣性が検証されなかったことが報告されている。また、本剤でも、国内市販後の自発報告において、心血管系事象の発現が認められている〔1.1、8.7、8.8参照〕。

    1. 非臨床試験に基づく情報

    本剤はJAK阻害作用を有することから免疫系及び造血系へ影響を及ぼす可能性があり、非臨床試験ではリンパ球数減少及び赤血球数減少等に加え、免疫抑制に起因する二次的な作用(毛包虫症(疥癬)など)がみられた。

(保管上の注意)

室温保存。