ジオン注生食液付の添付文書
添付文書PDFファイル
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効果・効能
脱出を伴う内痔核。
用法・用量
本剤の投与に先立ち、腰椎麻酔あるいは仙骨硬膜外麻酔により肛門括約筋を弛緩させる。
用時、本剤1バイアル(10mL)に添付の生理食塩液10mLを加えて20mLとし、硫酸アルミニウムカリウム水和物として2%溶液に調製する。
通常、成人には、1つの主痔核あたり2%溶液として9~13mLを分割して粘膜下に投与する。
なお、投与量は患者の病態により適宜増減することとし、1回の治療あたりの総投与量は2%溶液として60mL以内とする。
(用法及び用量に関連する注意)
- 本剤の投与に先立ち、痔核を十分に観察するための前処置として、腰椎麻酔あるいは仙骨硬膜外麻酔を施行し、肛門括約筋を弛緩させること。
- 本剤は痔核を十分に露出させて観察するための前処置として、腰椎麻酔あるいは仙骨硬膜外麻酔の施行を選択する場合に使用すること。前処置として局所麻酔を選択する場合には、ジオン注無痛化剤付を使用すること。
- 輸液点滴を行い、静脈路を確保するとともに利尿を図ること。
- 本剤は、硫酸アルミニウムカリウム水和物として4%溶液のまま使用せず、用時、添付の生理食塩液を用いて、必ず2%溶液に調製後、使用すること。
- 主痔核に投与する際には、次の標準的投与量を参考に、投与手技に注意しながら投与すること〔8.4参照〕。
5.1. 標準的投与量: 1. 痔核上極部の粘膜下層:3mL。 1. 痔核中央部の粘膜下層:2~4mL。 1. 痔核中央部の粘膜固有層:1~2mL。 1. 痔核下極部の粘膜下層:3~4mL。
5.2. 投与手技(四段階注射法): 1. 痔核上極部の粘膜下層への投与:痔核上極部の上直腸動脈の拍動部(時として拍動が触れないことがある)に注射針を刺入し、粘膜下層深部に2mLを投与し、その後、針先を手元に引きながら1mLを投与する(投与後は、粘膜表面がやや白っぽくなる)。 1. 痔核中央部の粘膜下層への投与:主痔核の中央部に注射針を刺入し、粘膜下層深部に痔核体積に1mLを加えた量を標準として投与する。 1. 痔核中央部の粘膜固有層への投与:痔核中央部の粘膜下層への投与後、針先を少し手元に引いて粘膜固有層へ1~2mLを投与する(投与量が適当であれば粘膜の表面がやや隆起する)。 1. 痔核下極部の粘膜下層への投与:痔核の下極部(歯状線の上0.1~0.2cmの部位)へ注射針を刺入し、粘膜下層深部に2~3mL投与する(その後、針先を手元に引きながら1mLを投与する)。
- 主痔核の体積が1cm3以下の場合、及び副痔核に投与する場合には、痔核上極部及び痔核下極部への投与は行わないこと。
- 筋層内には投与しないこと。誤って筋層内に刺入した場合には、針先を一度戻し、改めて刺入してから投与すること。
- 膀胱刺激症状に十分注意し、前立腺及び腟壁には投与しないように注意すること〔8.4.1、8.4.2参照〕。
- 歯状線より下方への投与や、薬液が歯状線下に浸潤することにより、嵌頓痔核や肛門部疼痛があらわれるおそれがあるので注意すること〔8.4.4参照〕。
- 全ての痔核への投与を行った後、過度の炎症を予防し、効果を十分に得るため、手指で投与部位全体を十分にマッサージし、薬液を分散させること〔8.4.3、8.4.5参照〕。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
1.1. 血圧低下、徐脈(いずれも頻度不明)〔8.3参照〕。
1.2. アナフィラキシー(頻度不明):血圧低下、呼吸困難、顔面浮腫、紅潮等が症状としてあらわれることがあり、アナフィラキシーショックに至った例も報告されている。
1.3. 直腸潰瘍(頻度不明):本剤の投与後に出血、肛門痛等を伴った直腸潰瘍があらわれることがあるので、本剤投与後は定期的に観察を行い、このような症状があらわれた場合には、抗生物質・痔疾用坐剤を投与するなど適切な処置を行うこと〔8.7参照〕。
1.4. 直腸狭窄(頻度不明):本剤投与後は定期的に観察を行い、このような症状があらわれた場合には、狭窄部の切開やブジー等の適切な処置を行うこと〔8.4.7、8.7参照〕。
1.5. 直腸腟瘻(頻度不明):本剤投与後は定期的に観察を行い、瘻孔が認められた場合には、手術等の適切な処置を行うこと〔8.4.2参照〕。
- その他の副作用
- 血液:(5%以上)リンパ球減少、好中球増加、白血球数上昇、(1~5%未満)好酸球増加、APTT延長、(1%未満)単球増加、赤血球数低下、ヘモグロビン減少、プロトロンビン時間延長。
- 皮膚・粘膜:(1%未満)蕁麻疹。
- 腎・泌尿器:(5%以上)尿中β2マイクログロブリン上昇、(1~5%未満)尿酸上昇、尿糖陽性化、尿潜血陽性化、尿中NAG上昇、(1%未満)頻尿、血尿、多尿、BUN上昇・BUN減少、尿蛋白陽性化、尿ウロビリノゲン上昇、血清カリウム上昇、(頻度不明)尿閉。
- 循環器:(1~5%未満)徐脈、血圧低下。
- 消化器:(1~5%未満)下痢、食欲不振、嘔気、(1%未満)不快感、胃潰瘍、(頻度不明)下腹部痛、嘔吐。
- 肝臓:(1~5%未満)総ビリルビン上昇、AST上昇、ALT上昇、ALP上昇、γ-GTP上昇、(1%未満)アルブミン低下、A/G比低下、トリグリセライド上昇、LDH上昇。
- 精神神経系:(1~5%未満)頭痛。
- その他:(5%以上)発熱、CRP上昇(12%)、(1~5%未満)全身倦怠(全身倦怠感)、血栓形成性痔核、(1%未満)肛門不快感、頚肩痛、熱感、(頻度不明)肛門周囲膿瘍、直腸周囲膿瘍、直腸炎、肛門浮腫、肛門周囲炎、肛門縁腫脹、肛門出血。
使用上の注意
(禁忌)
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性〔9.5妊婦の項参照〕。
- 授乳中の女性〔9.6授乳婦の項参照〕。
- 透析療法を受けている患者〔9.2.1参照〕。
- 嵌頓痔核を伴う患者[症状を悪化させることがある]。
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
- 次の部位には投与しないこと
直腸下部の粘膜下以外の部位[壊死等の症状があらわれることがある]。
(重要な基本的注意)
- 本剤の投与は、痔疾治療に精通し、本剤を用いた手技を理解した医師が四段階注射法を遵守して行うこと。
- 本剤は組織傷害性があることから、適切な場所に適量投与されなかった場合や原液を投与した場合、直腸筋層壊死、直腸狭窄等が発生する可能性があるので十分に注意すること。
- 本剤の投与中あるいは投与後に過度の血圧低下、徐脈があらわれることがあるので、本剤の投与に際しては、常時、血圧及び心拍数を観察し、直ちに適切な救急処置のとれる準備をしておくとともに、予め静脈路の確保を行うこと〔11.1.1参照〕。
- 本剤の投与手技上、次の事象が発生する可能性があるので十分に注意すること〔7.5参照〕。
4.1. 前立腺炎、副睾丸炎、睾丸炎、血精液症:男性の前側の痔核に注射する際、直腸壁全層を注射針が穿通し、前立腺・精嚢とその近傍に刺入・注射した場合に発生するので、このような場合には、観察を十分に行い、導尿、抗生物質の投与等の適切な処置を行うこと〔7.8参照〕。
4.2. 直腸腟瘻:女性の前側の痔核に注射する際、直腸壁全層を注射針が穿通し、腟とその近傍に刺入・注射した場合に発生するので、このような場合には、観察を十分に行い、手術等の適切な処置を行うこと〔7.8、11.1.5参照〕。
4.3. 痔核壊死:痔核中央部への投与において、投与部位が浅い場合、又は痔核中央部への投与において、投与量が多く投与部位を十分にマッサージせず薬液が均一に分散しなかった場合に発生するので、このような場合には、観察を十分に行い、抗生物質を投与するなど適切な処置を行うこと。痔核全体が壊死した場合、手術等の適切な処置を行うこと〔7.10参照〕。
4.4. 嵌頓痔核、肛門部疼痛:歯状線及び肛門管皮下に投与した場合、又は肛門管皮下に薬液が浸潤した場合に発生するので、このような場合には、坐浴や消炎鎮痛剤の投与等の適切な処置を行い、また、嵌頓痔核が回復しない場合には手術等の適切な処置を行うこと〔7.9参照〕。
4.5. 硬結:投与量の過多、又は投与後に十分にマッサージせず痔核の一部に薬液が集中した場合に発生し、なお、痔核中央部の粘膜固有層への投与量が多く、粘膜下層への投与量が少なかった場合にも発生する。通常は自然に吸収され、肛門機能に影響を残さないが、硬結が著しく排便障害等が認められる場合には、観察を十分に行い、手術等の適切な処置を行うこと〔7.10参照〕。
4.6. 直腸筋層壊死:針先が直腸の筋層まで達し、投与量が多い場合に発生するので、このような場合には、観察を十分に行い、消炎鎮痛剤及び抗生物質の投与等の適切な処置を行うこと。
4.7. 直腸狭窄:多くは痔核上極部の粘膜下層への投与量過多の場合に発生し、なお、痔核中央部の粘膜下層への投与の際、痔核上極部の粘膜下層に薬液が誤って注入された場合にも投与量過多となり発生するので、このような場合には、観察を十分に行い、狭窄部の切開やブジー等の適切な処置を行うこと〔11.1.4参照〕。
- 本剤投与後、少なくとも前処置の麻酔の影響がなくなるまで、医師の監督下で患者の全身状態の観察を十分に行うこと。
- 本剤投与2週間後までに一過性発熱があらわれることがあるので、このような場合には、観察を十分に行い、解熱鎮痛剤を投与するなど適切な処置を行うこと。
- 本剤による治療後に重篤な直腸潰瘍や重篤な直腸狭窄等が発生する可能性があるので、治療後は定期的に経過観察を行うこと。また、投与に際しては、患者に対して本剤の副作用等について十分な説明を行うとともに、出血、肛門痛等の異常が認められた場合には速やかに主治医に連絡するように注意を与えること〔11.1.3、11.1.4参照〕。
(特定の背景を有する患者に関する注意)
(合併症・既往歴等のある患者)
- 1.1. 前立腺癌等の放射線治療歴のある患者:前立腺癌の放射線治療後本剤の投与により出血を伴った直腸潰瘍を発現した症例がある。
(腎機能障害患者)
2.1. 透析療法を受けている患者:投与しないこと(本剤の有効成分である硫酸アルミニウムカリウム水和物に由来するアルミニウムは、主に腎臓から排泄されるため、アルミニウムの排泄が極端に遅延するおそれがある)〔2.3参照〕。
2.2. 腎機能障害(透析療法中を除く)のある患者:尿量が十分に確保できることを確認してから投与すること(アルミニウムの排泄が遅延するおそれがある)。
(妊婦)
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと(動物実験(ラット)で胎仔へのアルミニウムの移行が認められている)〔2.1参照〕。
(授乳婦)
投与しないこと(動物実験(ラット)で乳汁中へのアルミニウムの移行が認められている)〔2.2参照〕。
(小児等)
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
(高齢者)
尿量が十分に確保されていることに注意すること(一般に腎機能が低下していることが多い)。
(適用上の注意)
- 薬剤調製時の注意
1.1. 本剤は添付の生理食塩液で調製後、速やかに使用すること。
1.2. 細菌の汚染を避けるため、調製は投与直前に行い、使用後の残液は再使用しないこと。
1.3. バイアルの液目盛り線は、薬液調製後の液面のおよその目安として使用すること。
1.4. 薬液の調製方法:本剤のバイアルのキャップを外し、ゴム栓表面をアルコール綿で清拭する。次いで、添付の生理食塩液10mLを注射筒に採り、ゴム栓の中心部に注射針を垂直に刺入してバイアル内に注入する。注入後、バイアルを軽く振盪し、均一に混和していることを確認した上で使用すること。
- 薬剤投与時の注意
2.1. 注射針刺入時、血液の逆流のないことを確かめること。
2.2. 粘膜下へ刺入した際の筋層抵抗をつかみやすいよう、細くて弾力のある注射針(長さ4cm程度、太さ25G程度)を使用することが望ましい。
(薬液の調製方法)
①. 添付の生理食塩液10mLを注射筒に採る。
②. ジオン注生食液付バイアルのゴム栓の中心部に注射針を垂直に刺入して①の生理食塩液10mLを注入する。
③. 注入後、ジオン注生食液付バイアルを軽く振盪し、均一に混和する。
④. ジオン注生食液付バイアルから③で調製した薬液を注射筒に採り、使用する。
(保管上の注意)
室温保存。