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アナペイン注7.5mg/mL
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効果・効能

麻酔(硬膜外麻酔、伝達麻酔)。

用法・用量

  1. 硬膜外麻酔には、1回ロピバカイン塩酸塩水和物(無水物として)150mgまでを硬膜外腔に投与する。なお、期待する痛覚遮断域、手術部位、年齢、身長、体重、全身状態等により適宜減量する。

  2. 伝達麻酔には、1回ロピバカイン塩酸塩水和物(無水物として)300mgまでを目標の神経あるいは神経叢近傍に投与する。なお、期待する痛覚遮断域、手術部位、年齢、身長、体重、全身状態等により適宜減量する。

(用法・用量に関連する使用上の注意)

本剤に血管収縮剤(アドレナリン)を添加しても、作用持続時間の延長は認められない。

副作用

国内臨床試験の安全性評価対象症例670例中253例に334件の副作用が認められた。このうち、硬膜外麻酔及び伝達麻酔の臨床試験では、438例中185例に239件の副作用が認められ、主な副作用は血圧低下166件(37.9%)、徐脈18件(4.1%)であった(承認時)。

使用成績調査の安全性評価対象症例1,937例中336例に359件の副作用が認められた。このうち、硬膜外麻酔及び伝達麻酔の使用成績調査では、1,357例中301例に321件の副作用が認められ、主な副作用は血圧低下274件(20.2%)、徐脈28件(2.1%)、血圧上昇3件(0.2%)であった(再審査終了時)。

  1. 重大な副作用

    1. ショック(頻度不明):徐脈、不整脈、血圧低下、呼吸抑制、チアノーゼ、意識障害等を生じ、まれに心停止を来すことがある。また、まれにアナフィラキシーショックを起こす恐れがあるので、観察を十分に行い、このような症状が現れた場合には、適切な処置を行う。
    2. 意識障害、振戦、痙攣(0.1%未満):意識障害、振戦、痙攣等の中毒症状が現れることがあるので、観察を十分に行い、このような症状が現れた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行う。
    3. 異常感覚、知覚・運動障害(0.1~1%未満):注射針又はカテーテルの留置時に神経(神経幹、神経根)に触れることにより一過性異常感覚が発現することがある。また、神経が注射針や薬剤あるいは虚血によって障害を受けると、まれに持続的異常感覚、疼痛、知覚障害、運動障害、硬膜外麻酔及び術後鎮痛では膀胱直腸障害等の神経学的疾患が現れることがある。
  2. その他の副作用

    1. 循環器:(5%以上)血圧低下(19.2%)、(1~5%未満)徐脈、(1%未満)血圧上昇、頻脈、心室性不整脈、洞性不整脈。
    2. 呼吸器:(1%未満)SpO2低下、呼吸困難。
    3. 中枢・末梢神経系:(1%未満)眩暈、振戦、攣縮、異常感覚、下肢知覚異常、全身しびれ感、運動障害、昏迷、言語障害、口唇しびれ感、譫妄、頭痛、(頻度不明)不安。
    4. 消化器:(1~5%未満)嘔気、(1%未満)嘔吐。
    5. 過敏症:(1%未満)蕁麻疹、(頻度不明)血管浮腫。
    6. 泌尿器:(1%未満)排尿困難、尿閉。
    7. その他:(1%未満)発熱、耳鳴、戦慄、低体温、悪寒、顔面潮紅、結膜充血、硬結性紅斑、ホルネル症候群。

      発現頻度は、術後鎮痛、硬膜外麻酔、伝達麻酔の承認時までの臨床試験及び使用成績調査の合計より算出した。なお、前記臨床試験及び使用成績調査で認められなかった副作用については頻度不明とした。

使用上の注意

(禁忌)

  1. 本剤の成分又はアミド型局所麻酔薬に対し過敏症の既往歴のある患者。

  2. (硬膜外麻酔)大量出血やショック状態の患者[過度の血圧低下が起こることがある]。

  3. (硬膜外麻酔)注射部位又はその周辺に炎症のある患者[化膿性髄膜炎症状を起こすことがある]。

  4. (硬膜外麻酔)敗血症の患者[敗血症性髄膜炎を生じる恐れがある]。

(慎重投与)

  1. 高齢者。

  2. 全身状態不良な患者[生理機能の低下により麻酔に対する忍容性が低下していることがある]。

  3. 心刺激伝導障害のある患者[症状を悪化させることがある]。

  4. 重篤な肝機能障害又は重篤な腎機能障害のある患者[中毒症状が発現しやすくなる]。

  5. (硬膜外麻酔)中枢神経系疾患:髄膜炎、灰白脊髄炎、脊髄ろう等の患者及び脊髄に腫瘍・脊椎に腫瘍又は脊髄に結核・脊椎に結核等のある患者[硬膜外麻酔により病状が悪化する恐れがある]。

  6. (硬膜外麻酔)血液凝固障害や抗凝血薬投与中の患者[出血しやすいため、血腫形成や脊髄障害を起こすことがあるので、やむを得ず投与する場合は観察を十分に行う]。

  7. (硬膜外麻酔)脊柱に著明な変形のある患者[脊髄損傷や神経根損傷の恐れがあり、また麻酔範囲の予測も困難であるので、やむを得ず投与する場合は患者の全身状態の観察を十分に行う]。

  8. (硬膜外麻酔)妊産婦。

  9. (硬膜外麻酔)腹部腫瘤のある患者[仰臥位性低血圧を起こすことがあり、麻酔範囲が広がりやすい;麻酔中は更に増悪することがあるので、投与量の減量を考慮するとともに、患者の全身状態の観察を十分に行う]。

  10. (硬膜外麻酔)重症高血圧症、心弁膜症等の心血管系に著しい障害のある患者[血圧低下や病状の悪化が起こりやすいので、患者の全身状態の観察を十分に行う]。

(重要な基本的注意)

  1. まれにショックあるいは中毒症状を起こすことがあるので、本剤の投与に際しては、十分な問診により患者の全身状態を把握するとともに、異常が認められた場合に直ちに救急処置のとれるよう、常時準備をしておく。なお、事前の静脈路確保が望ましい。

  2. 本剤の投与に際し、その副作用を完全に防止する方法はないが、ショックあるいは中毒症状をできるだけ避けるために、次の諸点に留意する。

    1. できるだけ必要最少量にとどめ、追加投与の際には特に注意する。
    2. 注射の速度はできるだけ遅くする。
    3. 注射針が、血管又はクモ膜下腔に入っていないことを確かめる。血管内へ誤投与された場合、中毒症状が発現することがあり、また、クモ膜下腔へ誤投与された場合、全脊椎麻酔となることがある。
    4. 前投薬や術中に投与した鎮静薬、鎮痛薬等による呼吸抑制が発現することがあるので、鎮静薬、鎮痛薬等を使用する際は少量より投与し、必要に応じて追加投与することが望ましい(なお、高齢者、小児、全身状態不良な患者、肥満者、呼吸器疾患を有する患者では特に注意し、異常が認められた際には、適切な処置を行う)。
    5. 本剤を他のアミド型局所麻酔薬と併用する際には、中毒症状が相加的に起こることに留意して投与する。
    6. (硬膜外麻酔)患者のバイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸数等)及び全身状態の観察を十分に行い、また、麻酔が消失するまで観察を行うことが望ましい。なお、硬膜外麻酔時、術中は経皮的に動脈血酸素飽和度の測定(パルスオキシメーター等)を行うことが望ましい。
    7. (硬膜外麻酔)試験的に注入(test dose)し、注射針又はカテーテルが適切に留置されていることを確認する。
    8. (硬膜外麻酔)麻酔範囲が予期した以上に広がることにより、過度の血圧低下、徐脈、呼吸抑制を来すことがあるので、麻酔範囲に注意する。
    9. (硬膜外麻酔)本剤を全身麻酔薬と併用する際には、血圧がより低下しやすいので、留意して投与する。
    10. (伝達麻酔)患者のバイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸数等)及び全身状態の観察を行う。
    11. (伝達麻酔)血管の多い部位(頭部、顔面、扁桃等)に注射する場合には、吸収が速いので、できるだけ少量を投与する。
  3. 注射針又はカテーテルが適切に位置していない等により、神経障害が生じることがあるので、穿刺に際し異常を認めた場合には本剤の注入を行わない。

(相互作用)

本剤は、主として肝代謝酵素CYP1A2で代謝される。

併用注意:

  1. CYP1A2阻害剤(フルボキサミン、エノキサシン等)[本剤の血中濃度が上昇することがある;本剤とフルボキサミンとの併用で、本剤のクリアランスの低下が報告されており、また、他のCYP1A2代謝剤とエノキサシンとの併用でも同様のクリアランスの低下が報告されている(本剤の代謝には主にCYP1A2が関与しているため、併用薬剤のようなCYP1A2阻害剤との併用で、本剤の代謝が阻害され、血中濃度が上昇する恐れがある)]。

  2. クラス3抗不整脈剤(アミオダロン等)[心機能抑制作用が増強する恐れがあるので、心電図検査等によるモニタリングを行う(作用が増強することが考えられる)]。

(高齢者への投与)

(硬膜外麻酔)一般に高齢者では、麻酔範囲が広がりやすく、生理機能の低下により麻酔に対する忍容性が低下しているので、投与量の減量を考慮するとともに、患者の全身状態の観察を十分に行う等、慎重に投与する。

(妊婦・産婦・授乳婦等への投与)

  1. 妊婦等:妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない]。

  2. 妊産婦

    1. (硬膜外麻酔)妊娠後期の患者には、投与量の減量を考慮するとともに、患者の全身状態の観察を十分に行う等、慎重に投与する[妊娠末期は、仰臥位性低血圧を起こしやすく、麻酔範囲が広がりやすい;麻酔中は更に増悪することがある]。
    2. (伝達麻酔)本剤を傍頚管ブロックに用いる場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する[類薬(ブピバカイン塩酸塩)では使用しないこととされている]。
    3. (伝達麻酔)傍頚管ブロックにより胎児の徐脈を起こすことが知られている。

(小児等への投与)

小児等に対する安全性は確立していない(使用経験がない)。

(過量投与)

局所麻酔剤の過量投与や血管内誤投与又は非常に急速な吸収等による血中濃度の上昇に伴い、中毒が発現する。特に血管内誤投与となった場合には、数分以内に発現することがあり、その症状は、主に中枢神経系症状及び心血管系症状として現れる。また、腕神経叢ブロックや坐骨神経ブロック等の伝達麻酔の過量投与や硬膜外麻酔の過量投与で、蘇生術困難及び死亡に至った報告がある。

  1. 徴候、症状

    1. 過量投与時の中枢神経系症状:初期症状として視覚障害、聴覚障害、口周囲知覚麻痺、眩暈、ふらつき、不安、刺痛感、感覚異常が現れ、また、構音障害、筋硬直、攣縮等が現れる(症状が進行すると意識消失、全身痙攣が現れ、これらの症状に伴い低酸素血症、高炭酸ガス血症が生じる恐れがあり、より重篤な場合には呼吸停止を来すこともある)。
    2. 過量投与時の心血管系症状:血圧低下、徐脈、心筋収縮力低下、心拍出量低下、刺激伝導系抑制、心室性頻脈及び心室細動等の心室性不整脈、循環虚脱、心停止等が現れる。これらの心血管系の症状は、鎮静下又は全身麻酔下において、中枢神経系症状を伴わずに発生することがある。
  2. 処置:過量投与時には呼吸を維持し、酸素を十分投与することが重要であり、必要に応じて人工呼吸を行う。過量投与による振戦や痙攣が著明であれば、ジアゼパム又は超短時間作用型バルビツール酸製剤(チオペンタールナトリウム等)を投与する。過量投与による心機能抑制に対しては、カテコールアミン等の昇圧剤を投与する。過量投与により心停止を来した場合には直ちに心マッサージ等の蘇生術を開始する。

(その他の注意)

  1. 球後麻酔、眼球周囲麻酔に際し、類薬(リドカイン塩酸塩等)で持続性眼筋運動障害が発現することが報告されている(本剤での球後麻酔、眼球周囲麻酔に対する使用経験はない)。

  2. ポルフィリン症の患者に投与した場合、急性腹症、四肢麻痺、意識障害等の急性症状を誘発する恐れがある。

  3. 因果関係は明らかでないが、外国において術後に本剤を関節内(特に肩関節)に持続投与された患者で軟骨融解を発現したとの報告がある。

(取扱い上の注意)

  1. 薬液の漏出や容器に破損が認められるものは使用しない。

  2. ロピバカイン塩酸塩水和物はpH6以上で溶解性が低下するため、本剤をアルカリ性溶液と混合することにより、沈殿を生じる可能性があるので、注意する。

  3. ブリスター包装は高圧蒸気滅菌済みであるため、使用時まで開封しない。

  4. 本剤の容器(アンプル)の開封方法については、「本剤の容器(アンプル)の開封方法」の説明を参照する。

  5. 1アンプルを複数の患者に使用しない。また、残液は廃棄する。

(本剤の容器(アンプル)の開封方法)

  1. アンプルを振り、首の部分に溜まっている液体を落とす。

  2. アンプル本体の肩の部分を持ち、上部をねじって取り外す。このとき本体を強く握らない。