ドネペジル塩酸塩錠3mg「杏林」の添付文書
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効果・効能
アルツハイマー型認知症における認知症症状及びレビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制。
(効能又は効果に関連する注意)
- 〈効能共通〉本剤がアルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない。
- 〈効能共通〉アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症以外の認知症性疾患において本剤の有効性は確認されていない。
- 〈効能共通〉他の認知症性疾患との鑑別診断に留意すること。
- 〈アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制〉本剤は、アルツハイマー型認知症と診断された患者にのみ使用すること。
- 〈レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制〉本剤は、認知症治療に精通し、「17.臨床成績」の項の内容について十分に理解した医師又はその指導の下で、レビー小体型認知症の臨床診断基準に基づき、適切な症状観察や検査等によりレビー小体型認知症と診断され、本剤の使用が適切と判断された患者にのみ使用すること。
- 〈レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制〉レビー小体型認知症における精神症状・レビー小体型認知症における行動障害、レビー小体型認知症における全般臨床症状に対する本剤の有効性は確認されていない〔17.1.3、17.1.4、17.2.1参照〕。
用法・用量
〈アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制〉
通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により適宜減量する。
〈レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制〉
通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により5mgまで減量できる。
レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制の場合、投与開始12週間後までを目安に、認知機能検査、患者及び家族・介護者から自他覚症状の聴取等による有効性評価を行い、認知機能、精神症状・行動障害、日常生活動作等を総合的に評価してベネフィットがリスクを上回ると判断できない場合は、投与を中止すること(投与開始12週間後までの有効性評価の結果に基づき投与継続を判断した場合であっても、定期的に有効性評価を行い、投与継続の可否を判断すること)。
(用法及び用量に関連する注意)
- 3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として1~2週間を超えて使用しないこと。
- 10mg/日に増量する場合は、消化器系副作用に注意しながら投与すること。
- 医療従事者、家族などの管理のもとで投与すること。
副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 重大な副作用
1.1. QT延長(0.1~1%未満)、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)、心室細動、洞不全症候群、洞停止、高度徐脈(各頻度不明)、心ブロック(洞房ブロック、房室ブロック)、失神(各0.1~1%未満):心停止に至ることがある〔9.1.1参照〕。
1.2. 心筋梗塞、心不全(各0.1%未満)。
1.3. 消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)(0.1%未満)、十二指腸潰瘍穿孔(頻度不明)、消化管出血(0.1%未満):本剤のコリン賦活作用による胃酸分泌及び消化管運動の促進によって消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)、十二指腸潰瘍穿孔、消化管出血があらわれることがある。
1.4. 肝炎(頻度不明)、肝機能障害(0.1~1%未満)、黄疸(頻度不明)。
1.5. 脳性発作(てんかん、痙攣等)(0.1~1%未満)、脳出血、脳血管障害(各0.1%未満)。
1.6. 錐体外路障害
- 錐体外路障害(アルツハイマー型認知症:0.1~1%未満):寡動、運動失調、ジスキネジア、ジストニア、振戦、不随意運動、歩行異常、姿勢異常、言語障害等の錐体外路障害があらわれることがある〔8.1参照〕。
- 錐体外路障害(レビー小体型認知症:9.5%):寡動、運動失調、ジスキネジア、ジストニア、振戦、不随意運動、歩行異常、姿勢異常、言語障害等の錐体外路障害があらわれることがある〔8.1参照〕。
1.7. 悪性症候群(Syndrome malin)(0.1%未満):無動緘黙、強度筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合は、投与を中止し、体冷却、水・電解質管理等の全身管理とともに適切な処置を行うこと(本症発症時には、白血球増加や血清CK上昇がみられることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能低下がみられることがある)。
1.8. 横紋筋融解症(頻度不明):筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中ミオグロビン上昇及び尿中ミオグロビン上昇等があらわれた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、横紋筋融解症による急性腎障害の発症に注意すること。
1.9. 呼吸困難(0.1%未満)。
1.10. 急性膵炎(0.1%未満)。
1.11. 急性腎障害(0.1%未満)。
1.12. 原因不明の突然死(0.1%未満)。
1.13. 血小板減少(0.1%未満)。
- その他の副作用
- 過敏症:(0.1~1%未満)発疹、そう痒感。
- 消化器:(1~3%未満)食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢、(0.1~1%未満)腹痛、便秘、流涎、(0.1%未満)嚥下障害、便失禁。
- 精神神経系:(0.1~1%未満)興奮、不穏、不眠、眠気、易怒性、幻覚、攻撃性、せん妄、妄想、多動、抑うつ、無感情、(0.1%未満)リビドー亢進、多弁、躁状態、錯乱、(頻度不明)悪夢。
- 中枢・末梢神経系:(0.1~1%未満)徘徊、振戦、頭痛、めまい、(0.1%未満)昏迷。
- 肝臓:(0.1~1%未満)LDH上昇、AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇、Al-P上昇。
- 循環器:(0.1~1%未満)動悸、血圧上昇、血圧低下、上室性期外収縮、心室性期外収縮、(頻度不明)心房細動。
- 泌尿器:(0.1~1%未満)BUN上昇、尿失禁、頻尿、(頻度不明)尿閉。
- 血液:(0.1~1%未満)白血球減少、ヘマトクリット値減少、貧血。
その他:(0.1~1%未満)CK上昇、総コレステロール上昇、トリグリセライド上昇、アミラーゼ上昇、尿アミラーゼ上昇、倦怠感、むくみ、転倒、筋痛、体重減少、(0.1%未満)顔面紅潮、脱力感、胸痛、(頻度不明)発汗、顔面浮腫、発熱、縮瞳。
発現頻度は、軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症承認時までの臨床試験及び使用成績調査、高度のアルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症承認時までの臨床試験の結果をあわせて算出した。
使用上の注意
(禁忌)
本剤の成分又はピペリジン誘導体に対し過敏症の既往歴のある患者。
(重要な基本的注意)
- レビー小体型認知症で日常生活動作が制限される錐体外路障害、あるいはレビー小体型認知症で薬物治療を要する程度の錐体外路障害を有する場合、本剤の投与により、錐体外路障害悪化の発現率が高まる傾向がみられていることから、重篤な症状に移行しないよう観察を十分に行い、症状に応じて減量又は中止など適切な処置を行うこと〔11.1.6参照〕。
- 定期的に認知機能検査を行う等患者の状態を確認し、本剤投与で効果が認められない場合、漫然と投与しないこと。
- 他のAChE阻害作用を有する同効薬(アルツハイマー型・レビー小体型認知症)(ガランタミン等)と併用しないこと(AChE:アセチルコリンエステラーゼ)。
- アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症では自動車運転等の機械操作能力が低下する可能性があり、本剤により意識障害、めまい、眠気等があらわれることがあるので自動車運転等危険を伴う機械操作に従事しないよう患者等に十分に説明すること。
(特定の背景を有する患者に関する注意)
(合併症・既往歴等のある患者)
1.1. 心疾患(心筋梗塞、弁膜症、心筋症等)を有する患者、電解質異常(低カリウム血症等)のある患者:QT延長、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)、心室細動、洞不全症候群、洞停止、高度徐脈、心ブロック(洞房ブロック、房室ブロック)等があらわれることがある〔11.1.1参照〕。
1.2. 洞不全症候群、心房内伝導障害及び房室接合部伝導障害等の心疾患のある患者:迷走神経刺激作用により徐脈あるいは不整脈を起こす可能性がある。
1.3. 消化性潰瘍の既往歴のある患者:胃酸分泌の促進及び消化管運動の促進により消化性潰瘍を悪化させる可能性がある。
1.4. 気管支喘息又は閉塞性肺疾患の既往歴のある患者:気管支平滑筋の収縮及び気管支粘液分泌の亢進により症状が悪化する可能性がある。
1.5. 錐体外路障害(パーキンソン病、パーキンソン症候群等)のある患者:線条体のコリン系神経を亢進することにより、症状を誘発又は増悪する可能性がある。
(妊婦)
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療での有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(動物実験(ラット経口10mg/kg)で出生率減少、死産仔頻度増加及び生後体重増加抑制が報告されている)。
(授乳婦)
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(ラットに14C-ドネペジル塩酸塩を経口投与したとき、乳汁中へ移行することが認められている)。
(小児等)
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
(相互作用)
本剤は、主として薬物代謝酵素CYP3A4及び一部CYP2D6で代謝される〔16.4参照〕。
- 2. 併用注意:
- スキサメトニウム塩化物水和物[筋弛緩作用を増強する可能性がある(併用薬剤の脱分極性筋弛緩作用を増強する可能性がある)]。
- コリン賦活剤(アセチルコリン塩化物、カルプロニウム塩化物、ベタネコール塩化物)、コリンエステラーゼ阻害剤(アンベノニウム塩化物、ジスチグミン臭化物、ピリドスチグミン臭化物、ネオスチグミン等)[迷走神経刺激作用などコリン刺激作用が増強される可能性がある(本剤とともにコリン作動性の作用メカニズムを有している)]。
- CYP3A阻害剤(イトラコナゾール、エリスロマイシン等)、ブロモクリプチンメシル酸塩、イストラデフィリン[本剤の代謝を阻害し作用を増強させる可能性がある(併用薬剤のチトクロームP450(CYP3A4)阻害作用による)]。
- キニジン硫酸塩水和物等[本剤の代謝を阻害し作用を増強させる可能性がある(併用薬剤のチトクロームP450(CYP2D6)阻害作用による)]。
- カルバマゼピン、デキサメタゾン、フェニトイン、フェノバルビタール、リファンピシン等[本剤の代謝を促進し作用を減弱させる可能性がある(併用薬剤のチトクロームP450(CYP3A4)の誘導による)]。
- 中枢性抗コリン剤(トリヘキシフェニジル塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、ビペリデン塩酸塩等)、アトロピン系抗コリン剤(ブチルスコポラミン臭化物、アトロピン硫酸塩水和物等)[本剤と抗コリン剤は互いに干渉しそれぞれの効果を減弱させる可能性がある(本剤と抗コリン剤の作用が、相互に拮抗する)]。
- 非ステロイド性消炎鎮痛剤[消化性潰瘍を起こす可能性がある(コリン系の賦活により胃酸分泌が促進される)]。
(過量投与)
- 症状
コリンエステラーゼ阻害剤の過量投与は高度嘔気、嘔吐、流涎、発汗、徐脈、低血圧、呼吸抑制、虚脱、痙攣及び縮瞳等のコリン系副作用を引き起こす可能性があり、筋脱力の可能性もあり、呼吸筋弛緩により死亡に至ることもあり得る。
- 処置
アトロピン硫酸塩水和物のような3級アミン系抗コリン剤が本剤の過量投与の解毒剤として使用でき、アトロピン硫酸塩水和物の1.0~2.0mgを初期投与量として静注し、臨床反応に基づいてその後の用量を決める(他のコリン作動薬では4級アンモニウム系抗コリン剤と併用した場合、血圧及び心拍数が不安定になることが報告されている)。
(適用上の注意)
- 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
(その他の注意)
- 臨床使用に基づく情報
外国において、NINDS-AIREN診断基準に合致した脳血管性認知症(本適応は国内未承認)と診断された患者を対象(アルツハイマー型認知症と診断された患者は除外)に6カ月間のプラセボ対照無作為二重盲検試験3試験が実施された。最初の試験の死亡率はドネペジル塩酸塩5mg群1.0%(2/198例)、ドネペジル塩酸塩10mg群2.4%(5/206例)及びプラセボ群3.5%(7/199例)であった。
2番目の試験の死亡率はドネペジル塩酸塩5mg群1.9%(4/208例)、ドネペジル塩酸塩10mg群1.4%(3/215例)及びプラセボ群0.5%(1/193例)であった。3番目の試験の死亡率はドネペジル塩酸塩5mg群1.7%(11/648例)及びプラセボ群0%(0/326例)であり両群間に統計学的な有意差がみられた。なお、3試験を合わせた死亡率はドネペジル塩酸塩(5mg及び10mg)群1.7%、プラセボ群1.1%であったが、統計学的な有意差はなかった。
- 非臨床試験に基づく情報
動物実験(イヌ)で、ケタミン・ペントバルビタール麻酔又はペントバルビタール麻酔下にドネペジル塩酸塩を投与した場合、呼吸抑制があらわれ死亡に至ったとの報告がある。
(保管上の注意)
室温保存。