じょうわんこつかじょうこっせつ
上腕骨顆上骨折
小児に多い骨折のひとつ。上腕骨(肩と肘の間の骨)のうち、肘に近い部分に起きる骨折
7人の医師がチェック 103回の改訂 最終更新: 2022.03.11

Beta 上腕骨顆上骨折のQ&A

    上腕骨顆上骨折の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    転んだり、高いところから落ちた際、肘がそるように手をつくことで生じます。上腕(腕のうち肩から肘の部分)骨の顆上部は、肘より少し肩側の骨が細くなっている部分で、強い力がかかると骨折しやすい構造になっています。

    上腕骨顆上骨折は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    小児の肘関節周囲骨折のなかでは、60-80%ともっとも頻度が高く、5-6歳の男子に特に多く見られます。鉄棒や雲梯(うんてい)などから落ちり、転んで手をついた衝撃でおこる骨折です。

    上腕骨顆上骨折は上腕骨遠位端骨折とも呼ばれますか?

    上腕骨顆上骨折は、上腕骨の遠位(肘側)に位置する骨折であるため、上腕骨遠位端骨折に含まれます。

    上腕骨遠位端骨折は、骨の折れる部位によって、「上腕骨顆上骨折」「上腕骨顆間骨折」、「上腕骨通顆骨折」に分けられます。分類の違いは、肘関節が動くために重要な関節部分の骨が折れているかどうかです。「上腕骨顆上骨折」は、関節部の骨が折れていない骨折です。「上腕骨顆間骨折」と「上腕骨通顆骨折」は、関節部の骨が折れてしまっているものをさします。そのうち、「上腕骨通顆骨折」は、関節の中でも軟骨と呼ばれる部分の骨も折れている場合をさます。この骨折は、高齢者に多く、治療に難渋することがあります。

    上腕骨顆上骨折は、どんな症状で発症するのですか?

    肘の部分に激しい痛みと腫れがあり、痛くて動かすことができなくなります。折れてしまった骨が神経や血管を傷つけることで手や指がしびれることもあります。

    上腕骨顆上骨折の、その他の症状について教えて下さい。

    折れた骨が曲がったままくっつくことで、肘を伸ばした時に内側に曲がる変形(内反肘)がおこることがあります。また、肘から手にかけての動かしにくさや痺れ、皮膚の色が青紫色になっている場合は、骨折に伴って、神経や血管が傷つき、神経の麻痺や筋肉に血が通わず死んだ状態(フォルクマン拘縮)を引き起こす可能性もあります。

    上腕骨顆上骨折は、どのように診断するのですか?

    レントゲン(X線)で診断を行います。骨のズレ具合を確認するために、身体の正面と側面の2カ所からレントゲンをとります。診断では、折れてしまった骨がどの程度はなれているか、折れた骨がいくつに割れてしまっているかなどを確認します。

    上腕骨顆上骨折の治療法について教えて下さい。

    変形の程度が軽い場合は、折れてしまった骨を元の位置に戻してギプスなどによる固定を行います。骨を元の位置に戻すために腕をつり上げておく(牽引)治療法もあります。

    変形が大きい場合には、手術が必要となります。手術は、金属鋼線を皮膚の上から挿入して固定する方法(経皮的鋼線固定法)と骨折した部分をひらき、骨を金属で固定する方法などがあります。

    上腕骨顆上骨折は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    骨と骨が正しい位置でくっつけば、その後は問題なく生活を送ることができます。骨同士がズレでくっついた場合は、肘が変形する、肘を曲げたり伸ばしたりする際に制限を生じるなどといった後遺症を伴う場合があります。

    上腕骨顆上骨折は、どのくらいで回復しますか。

    骨折したときの骨のズレ具合や骨の周りの組織への影響によって、回復にかかる期間は異なります。

    殆ど骨のズレがなく、ギプス固定のみの場合は、3-4週間で回復します。骨のズレがあり、骨を元の位置に戻すために鋼線での固定が必要な場合は、4週間程度ギプスをした後、鋼線を抜くことができます。骨のズレが大きく、骨以外の部分の損傷が見られる場合は、手術が必要です。手術から退院までにかかる期間は、骨のズレ具合や骨の周りの神経がその程度損傷をうけているかによって異なります。

    上腕骨顆上骨折ではどのようなリハビリテーションが行われますか。

    骨折後は、3-4週間の固定が必要な場合が多いため、低下した肘周囲の筋力を向上させるための筋力トレーニングなどが行われます。