◆188か国の統計から
この報告は、世界の188か国の人口と病気の統計をまとめた「世界疾病負担研究2013」のデータを使い、いくつかの角度から解析した結果です。
統計をもとに、平均余命と、そのうち病気がなく健康な期間として期待される平均健康余命が計算されました。出生時の平均余命は平均の寿命、出生時の平均健康余命は平均の健康寿命と考えることができます。
◆日本の健康寿命は世界一
得られた2013年の推計値を1990年と比較して、次の結果が得られました。
全世界で、1990年から2013年の間に出生時平均余命は6.2年(95%不確定性区間5.6-6.6)延び、1990年の65.3年(65.0-65.6)から2013年には71.5年(71.0-71.9)となった。出生時平均健康余命は5.4年(4.9-5.8)延び、56.9年(54.5-59.1)から62.3年(59.7-64.8)となった[...]。
全世界の合計で見ると、1990年には出生時の平均寿命が65.3年、平均健康寿命が56.9年でしたが、2013年には平均寿命が71.5年、平均健康寿命が62.3年と、いずれも長くなりました。
国別に見ると、1990年と2013年の比較は次のようになりました。
- 1990年の平均寿命:
- 最も短い国:中央アフリカ共和国、46.9年
- 最も長い国:アンドラ、80.7年
- 1990年の平均健康寿命:
- 最も短い国:中央アフリカ共和国、40.4年
- 最も長い国:日本、70.2年
- 2013年の平均寿命:
- 最も短い国:レソト、48.3年
- 最も長い国:アンドラ、83.9年
- 2013年の平均健康寿命:
- 最も短い国:レソト、42.0年
- 最も長い国:日本、73.4年
このように、2013年の日本は平均健康寿命が世界で最も長い国と見られました。
男女別で全世界と日本を比べると次のようになりました。
- 全世界:
- 男性:平均寿命68.80年、平均健康寿命60.59年
- 女性:平均寿命74.29年、平均健康寿命64.13年
- 日本:
- 男性:平均寿命80.05年、平均健康寿命71.11年(世界最長)
- 女性:平均寿命86.39年、平均健康寿命75.56年(世界最長)
健康を損なう原因として多かった上位10分類は次のものでした。
- 全世界:
- 虚血性心疾患、下気道感染症、脳卒中、腰痛・頸部痛、交通事故、下痢症、COPD、早産合併症、HIV/AIDS、マラリア
- 日本:
- 腰痛・頸部痛、脳卒中、虚血性心疾患、下気道感染症、肺がん、その他の運動器疾患、糖尿病、感覚器障害、自傷、うつ
世界の中では、日本は経済的に豊かで、医療資源が調い、衛生状態がよい環境にあります。同時に、高収入で長命な国の特徴として、がんや糖尿病に苦しむ人が多い面もあります。
これからの医療と健康を考えるうえで、寿命や病気の頻度についてのこうした統計は、基礎となる非常に重要な情報です。
執筆者
Global, regional, and national disability-adjusted life years (DALYs) for 306 diseases and injuries and healthy life expectancy (HALE) for 188 countries, 1990–2013: quantifying the epidemiological transition.
Lancet. 2015 Nov 28
[PMID: 26321261]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。