◆アトピー性皮膚炎患者の食塩水に対する反応
研究班は、アトピー性皮膚炎がある参加者14人の腕の皮膚に微小な傷をつけて生理食塩水を触れさせ、それが無害であることを教えたときと、教えないとき(ノセボ)で、対象者がかゆみを感じるかどうかを調べました。また、アレルギーを起こしやすい花粉などの物質(アレルゲン)によって起こるかゆみについても調べました。
かゆみの試験をしている間、脳の活動を画像検査(fMRI)で観察し、活動の違いがあるかどうかを調べました。
◆ノセボでかゆみが発生、プラセボで本物の症状も軽減
次の結果が得られました。
ノセボの生理食塩水は、それと示した生理食塩水の対照よりも強く、かゆみを引き起こした(P<0.01)。
ノセボによってより強いかゆみを誘発されたことを報告した対象者はまた、プラセボによってより強く、アレルゲンによって起こされたかゆみが軽減し、かゆみの知覚について全般性の調節が起こっていることが示唆された。
ノセボとして生理食塩水を触れさせたときに、無害と教えたときよりも強いかゆみが引き起こされました。また、アレルゲンによってかゆみが引き起こされたあと、プラセボとして鍼治療に似せた針を当てたときにかゆみが軽くなる効果を調べたところ、ノセボで強いかゆみを感じた人ほど、プラセボでかゆみが軽くなる傾向が見られました。
fMRIでは、ノセボでかゆみを感じているときに、背外側前頭前皮質、頭頂間溝という部分の活動が見られました。
かゆみの症状が心理的な原因とどのように関係しているか、脳の活動と結び付けて詳しく知ることで、より効果的な治療を探る手掛かりになるかもしれません。
執筆者
The imagined itch: Brain circuitry supporting nocebo-induced itch in atopic dermatitis patients.
Allergy. 2015 Aug 17 [Epub ahead of print]
[PMID: 26280659]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。