◆高頻度/低頻度のTMSとは
TMSは、磁気を用いて頭皮上から脳を刺激することで脳の活動を変化させることができる手法です。高い周波数で行うと脳活動を促進(高頻度)、低い周波数で行うと脳活動を抑制(低頻度)することが知られています。
◆高頻度の深部TMS群、低頻度の深部TMS群、偽刺激群にランダムに分類
今回の研究では、1日20本以上の喫煙者でかつ以前に禁煙治療を失敗している人115人を対象に、以下の方法で治療を実施しました。
参加者はランダムに、13日間の治療として、高頻度の深部TMS群、低頻度の深部TMS群、偽刺激群のどれかに振り分けられ、さらに喫煙手がかりの有無どちらかの施行後にそれらの治療を実施した。
深部TMSは、[...]外側の前頭前野と島に対し、両側に実施した。
主な指標として、治療中のたばこの消費量を、尿中のニコチンレベルを測定することと、患者の自記式レポートによって評価した。
高頻度の深部TMS群、低頻度の深部TMS群、偽刺激群に振り分け、さらにぞれぞれ喫煙てがかりを与えた場合と与えない場合に分類し、計6群の間で比較を行いました。
なお、喫煙手がかりとは、たばこを吸いたいと思わせるようなきっかけ、のことです。
◆高頻度の深部TMSは、たばこの消費量とニコチン依存を有意に減少
調査の結果、以下のことが報告されました。
高頻度の深部TMSを実施すると、たばこの消費量とニコチン依存が有意に減少した(低頻度ではこの結果は見られなかった)。
喫煙手がかりを提示した後に治療を行うことで、たばこ消費量の減少効果が増強し、治療終了時には44%、治療後6ヶ月時点では33%の禁煙が認められた。
高頻度の深部TMSを受けた人では、たばこの消費が減少していました。
以上の結果を踏まえて筆者らは、「この結果は外側前頭前野や島(とう)がニコチン中毒に関係していることをさらに暗示するとともに、喫煙手がかりを示したあとに、この領域に高頻度の深部TMSを施行する手法は、治療戦略として今後に期待ができることを示唆する」と結論付けています。
将来的に、禁煙への治療戦略として、このような手法が検討されるかもしれませんね。
執筆者
Smoking cessation induced by deep repetitive transcranial magnetic stimulation of the prefrontal and insular cortices: a prospective, randomized controlled trial.
Biol Psychiatry. 2014 Nov 1
[PMID: 25038985]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。