2015.07.11 | ニュース

サイトメガロウイルス感染と梅毒の関連、HIV感染者で

アメリカ131人の観察研究

from PloS one

サイトメガロウイルス感染と梅毒の関連、HIV感染者での写真

性感染症は同じ人に複数の病原体が感染して起こることがしばしばあります。リスクの高い性行為によって感染の機会が増えることが考えられますが、ひとつの性感染症によって体に起こる変化の結果、ほかの感染症に弱くなる場合もあると考えられています。アメリカの研究で、HIVの治療中の男性のうち、サイトメガロウイルスが検出された人はその後梅毒を発症することが多かったことが報告されました。

◆HIV治療中の131人を1年追跡

研究班は、男性と性交する男性でHIVに感染し治療を受けている131人を対象として、フォロー中12か月間の情報をもとに、新たに細菌による性感染症を発症することと関連する要因を調べました。

 

◆CMV排出があると梅毒罹患が多い

調査から次の結果が得られました。

すべての参加者がCMVの血清反応陽性であり、52%はベースラインで性器からCMVが検出されていた。35人がフォロー期間に性感染症に、一部は複数の病原体によって(17例が梅毒、21例が淋病、14例がクラミジア)、罹患した。梅毒の罹患はベースラインでの性器CMVの増殖(CMV排出者の19.1%、排出がなかった人の4.8%、P=0.03)、若い年齢(P=0.02)と関連した。

フォロー開始時の検査で、性器からサイトメガロウイルスが検出された人は、その後1年間に梅毒を発症する割合が大きくなっていました

サイトメガロウイルスは性感染症のない人にも多く感染しているありふれたウイルスですが、AIDSを発症した場合など、免疫が弱っている人には命に関わる症状を起こすことがあります。梅毒は細菌による性感染症のひとつで、適切な治療が行われない場合、脳や心臓に重い障害を起こすことがあります。

 

この結果にはさまざまな解釈がありえます。

サイトメガロウイルスが原因になって、梅毒に感染しやすくなった可能性は考えられます。ただしこの関連が因果関係とは限りません。

梅毒の発症に結び付きそうな要因として、免疫機能のほか、性感染症に感染しやすい行動の影響が考えられます。行動によるリスクが高い人で梅毒が増えることは予想できます。

しかし、サイトメガロウイルスに感染し、ウイルスが検出されるようになることは、必ずしも性行為が原因とは考えられていません。この研究で検出されたサイトメガロウイルスが性行為とは関係ないと仮定すれば、梅毒のリスクの違いは、行動の違いによっては説明しにくいかもしれません。だとすると、サイトメガロウイルスによって体の変化が起こるのではないかと思えてきます。

 

別の解釈としては、対象者に感染していたHIVが原因で梅毒のリスクが増えていた、という想像もできます。梅毒に弱くなった体の変化が、サイトメガロウイルス検出として現れていたとすれば、これらの関連が説明できるかもしれません。

 

梅毒を増やした原因はHIVか、サイトメガロウイルスか、それとも未知の原因がほかにあるのか。この研究だけで断定することはできません。

適切な対策のために、感染症によって起こる変化のより詳しい解明が望まれます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Genital Cytomegalovirus Replication Predicts Syphilis Acquisition among HIV-1 Infected Men Who Have Sex with Men.

PLoS One. 2015 Jun 10

 

[PMID: 26061824]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る