◆変形性膝関節症患者100人を比較
2012年から2014年にわたり、画像検査上で変形性膝関節症の所見があり、なおかつ炎症所見が確認されており、歩行時に痛みがある変形性膝関節症患者100人を、関節内注射をする群と偽薬を注射する群にそれぞれ50人ずつランダムに振り分けました(二重盲検法)。
両群とも注射後、運動訓練を12週間行いました。
注射前、注射後2週間、注射後14週間、注射後26週間でKOOSという質問票を使って痛みや日常生活動作 (ADL) などを評価するほか、客観的に運動機能や炎症所見を調べ、治療によってどのように変化するかを比較しました。
◆ステロイド注射による効果がみられない
今回の研究を終えることができた患者は関節内注射の群が45人、偽薬群が44人でした。
KOOSによる痛みの評価スコアは、関節内ステロイド注射群が13.6点改善し、偽薬群が14.8点改善しました。両群に統計的な有意に差はありませんでした。
また補足評価(疼痛以外の症状を表す指標や筋力といった運動評価など)においても両群に数値の有意な差は見受けられませんでした。
KOOSの痛み以外の指標、運動機能、炎症所見に両群に有意な差は見受けられませんでした。
研究チームは「痛みを伴う変形性膝関節症患者が運動療法の前にステロイド薬を関節内注射することに効果がなかった。手術以外の治療法に、最適で相乗効果のある組み合わせを確立するためには追加研究が必要」と述べています。
膝関節内の炎症を抑えるために行われてきたステロイド薬の注射を再考する必要が出てきそうです。現場で治療にあたられている方は、今回の報告をどのようにお考えでしょうか?
執筆者
Evaluation of the Benefit of Corticosteroid Injection Before Exercise Therapy in Patients With Osteoarthritis of the Knee: A Randomized Clinical Trial.
JAMA Intern Med. 2015 Mar 30
[PMID: 25822572]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。