2015.05.24 | ニュース

緑茶はこうして口腔がんを狙い撃ちする

口腔がんを予防するとされる緑茶成分「エピガロカテキン-3-ガラート」の作用メカニズムを解明

from Molecular nutrition & food research

緑茶はこうして口腔がんを狙い撃ちするの写真

緑茶に含まれるカテキンはがん予防に有効であると言われていますが、口腔がん予防に対して重要な役割を担っているのがカテキン成分「エピガロカテキン-3-ガラート(EGCG)」です。EGCGは、正常な細胞を傷つけず、口腔がん細胞内においてのみ酸化ストレスを起こして細胞を傷つける作用が確認されていましたが、これらのプロセスに「サーチュイン3」と呼ばれる分子が関与していることが指摘されました。

◆EGCGがミトコンドリア内での細胞死を導くプロセスを誘発

筆者はこの研究を通じて、EGCGがどのようにして、口腔がん細胞と正常細胞に対して違う働きをするのかを調べました。EGCGを与えた細胞の中では、次のような変化が起こっていました。

EGCGは、ヒトの口腔扁平上皮癌細胞(SCC-25、SCC-9)や口腔白板症上皮細胞(MSK-Leuk1)内のミトコンドリアに局在する活性酸素種を急速に誘発する。一方、正常な歯肉線維芽細胞(HGF-1)に対しては同様の作用がない。

 EGCGは口腔がん細胞内において「活性酸素種」と総称される、細胞にダメージを与える物質の生成を促します。一方、正常な細胞に対してはこの作用がありません。その結果、口腔がん細胞だけを傷つけると考えられます。

 

◆各々の細胞の酸化プロセスにサーチュイン3(SIRT3)が関与

細胞の中の物質の変化を観察したところ、口腔がん細胞や正常細胞での酸化プロセスに、サーチュイン3(SIRT3)が関与していることが認められました。

EGCGはSCC-25細胞内でのSIRT3のmRNAおよびタンパク質の発現と活性を抑える一方、HGF-1内ではSIRT3の活性を増大した。

EGCGの作用について簡単に纏めると、以下のとおりです。

  • SIRT3は活性酸素種の増減に関与している
  • EGCGはがん細胞内においてのみ、SIRT3の合成プロセスに特定の変化を起こす
  • EGCGを与えたとしても、正常細胞とがん細胞内では、SIRT3の作用に関わる物質の合成量が異なる

以上のことから、正常細胞とがん細胞内ではEGCGによるダメージが異なるのは、SIRT3が関与しているためだと考えられました。 

今回判明した緑茶の原理を応用することによって、より副作用の少ない抗がん剤の開発の可能性が開けてくるかもしれません。EGCGそのものが薬になるということもあり得るでしょう。さらに、別の方向から研究を進めていくことで、EGCG以外にもSIRT3に影響を及ぼす物質が見つかるかもしれません。さまざまな可能性に結びつく研究です。

執筆者

大澤法子

参考文献

Differential prooxidative effects of the green tea polyphenol, (-)-epigallocatechin-3-gallate, in normal and oral cancer cells are related to differences in sirtuin 3 signaling.

Mol Nutr Food Res. 2015 Feb

[PMID: 25329972] http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/mnfr.201400485/abstract

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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