じりつしんけいしっちょうしょう
自律神経失調症
自律神経のバランスが崩れた際に起こる症状の総称。めまいや耳鳴り、頭痛など様々な症状が出現する
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最終更新: 2022.12.26
自律神経失調症の基礎知識
POINT 自律神経失調症とは
自律神経は交感神経と副交感神経の2つのことを指し、内臓や血管の働きなどをコントロールしています。普段、交感神経と副交感神経の働きはバランスが保たれていますが、このバランスが乱れた状態を自律神経失調症と言います。さまざまな症状(下記参照)が現れ、主な原因としては過度なストレスや、生活リズムの乱れ、環境の変化などが挙げられます。問診によって診断が行われることが多く、その他の病気の可能性の有無を調べるために、血液検査や心臓の検査などが行われることがあります。治療として、薬物療法や心理療法、自立訓練法などが行われます。自律神経失調症が心配な人は精神科を受診してください。
自律神経失調症について
自律神経 のバランスが崩れた際に起こる症状の総称- 自律神経は
交感神経 と副交感神経 の2つから成り、内臓や血管の働きをコントロールしている - この2つの神経のバランスが乱れることで様々な症状が生じる
- 自律神経は
- 交感神経と副交感神経のバランスによって以下の機能が調整されている
- 瞳孔を開く/閉じる
- 涙を増やす/減らす
- 房水を生産し眼圧を維持する
- 唾液を増やす/減らす
- 皮膚の血管を収縮/弛緩させる
- 立毛筋を収縮/弛緩させる(収縮すると鳥肌が立つ)
- 汗を増やす/減らす
- 心臓の収縮力と心拍数を増やす/減らす
- 呼吸数を増やす/減らす
- 胃腸の蠕動運動(食べ物を送り出す運動)と消化液の分泌を増やす/減らす
- 胆嚢を収縮させ胆汁を排出させる
- 膵臓からの消化液と
ホルモン の分泌を増やす/減らす - 副腎髄質からの
アドレナリン 分泌を増やす/減らす(交感神経のみ) - 膀胱を収縮/弛緩させる
- 排尿・排便のために働く筋肉を収縮/弛緩させる
- 勃起、射精
- 主な原因
- 過度なストレス
- 生活リズムの乱れ
- 環境の変化
- 1つの「病気」として国際的に認識されている概念ではない
- 内臓などに明確な
病変 があるわけではないため、病院で検査を受けても「異常なし」と診断を受けやすい
自律神経失調症の症状
- 複数の症状が長く続く
- 症状には個人差が大きい
- 身体的な症状
- 精神的な症状
- イライラ
- 不安感
- 不眠
- 意欲低下
- 集中力の低下
- 気分の落ち込み
- 感情の起伏が激しくなる
自律神経失調症の検査・診断
問診 、他の病気の除外、自律神経 機能検査などから総合的に判断される- 除外診断ではそれぞれの症状に応じた検査が行われる
- 例としては、
動悸 がする場合には、心電図 など心臓の病気の検査が行われる など
- 例としては、
自律神経失調症の治療法
- 基本的な治療方針
- 薬物療法と心理療法が一般的だが、原因も症状も人により様々なため、個々の症状に応じた治療を選択していくこととなる
- 主な治療
- 薬物療法
自律神経 調整薬:自律神経の中枢に直接作用して、自律神経の安定を図る抗不安薬 :自律神経の緊張をやわらげて、不安や緊張を取り除くビタミン 剤:自律神経のバランスを整えるためホルモン 剤:ホルモンバランスが崩れている女性に処方
- その他
- 抗うつ薬、睡眠薬など
- 心理療法
- カウンセリングなどを通して原因となっていることがらや心の中を整理し、解決へと導いていく
認知行動療法 やグループカウンセリング、バイオフィードバックなども有効とされている
- 自律訓練法
- 体をリラックスさせて、心を安定させるよう暗示をかけていく
- 自己暗示により
交感神経 の働きを弱め、副交感神経 の働きを強化する
- 薬物療法
自律神経失調症に関連する治療薬
セロトニン作動性抗不安薬(タンドスピロン)
- 脳内の神経伝達物質セロトニンの働きを調整し、抗不安作用などによって心身症などの不安、抑うつ、睡眠障害などを和らげる薬
- 心身症はストレスなどの心理的刺激により脳内の機能が乱れ、不安、抑うつ、睡眠障害など様々な症状を引き起こす
- 神経伝達物質セロトニンは脳内で神経興奮・抑制などに関わり、そのバランスが乱れると不安などが引き起こされる
- 本剤は脳内のセロトニンが関わる過剰な神経活動などを調整し、抗不安作用をあらわす
- 神経過敏状態での抑うつや恐怖なども和らげるとされる
自律神経調整薬
- 脳(中枢)に作用し自律神経系の乱れを調整することで、頭痛、めまい、不安、意欲低下などの症状を改善する薬
- 自律神経失調症は自律神経系のバランスの崩れや過度な興奮などによりめまい、不安、意欲の低下など様々な症状があらわれる
- 自律神経のバランスが崩れると内臓や血管の働きが乱れ、頭痛、動悸、発汗などの症状があらわれる場合もある
- 本剤は脳の視床下部という部位に作用し自律神経系のバランスや過度な興奮を調整する作用をあらわす
- 頭部などの損傷や更年期障害などによる自律神経症状に使用する場合もある
ベンゾジアゼピン系抗不安薬
- 脳の興奮などを抑えることで不安、緊張、不眠などを改善する薬
- 脳内のベンゾジアゼピン(BZD)受容体などが抗不安、催眠・鎮静などに関与する
- BZD受容体が刺激を受けると脳の興奮が抑えられ抗不安作用などがあらわれる
- 本剤はBZD受容体に結合しこの受容体を刺激する作用をあらわす
- 筋肉の緊張を緩和する筋弛緩作用により腰痛症や緊張型頭痛などに使用する薬剤もある