インフルエンザの基礎知識
POINT インフルエンザとは
インフルエンザウイルスによる感染のことです。毎年冬場になると流行しときに大流行が起こることもあるため、毎年秋口あたりに予防接種を打つことが大切です。主な症状は発熱・頭痛・関節痛・筋肉痛などです。さらに重症になると肺炎や脳炎などを起こすため、意識障害や呼吸困難などを起こすことがあります。検査は鼻の奥を綿棒で拭うことで数十分で結果がわかります。また、治療薬には複数のものがありますが、いずれも症状を和らげたり半日から1日ほど症状が治まるのを早くする程度ですので、症状が軽ければ使用する必要はありません。 インフルエンザを疑った場合は、内科・感染症内科・小児科を受診するようにして下さい。
インフルエンザについて
インフルエンザウイルス が原因となり、高熱やのどの痛み、関節・筋肉の痛みなどが引き起こされる感染症 ウイルス によって生じる上気道 の炎症 で、いわゆる「かぜ」の一種とみなされる
- インフルエンザウイルスによる感染は強い症状が出やすく、特に子どもや高齢者では重症になることもある
- A型とB型があり、毎年流行を繰り返すのはA型が多い
- 厳密にはC型も存在するが、流行が問題視されることは少ない
- 鳥類の病気としてのインフルエンザのうち、ヒトにも感染するようになったものが鳥インフルエンザウイルス感染症である
- A型とB型があり、毎年流行を繰り返すのはA型が多い
インフルエンザの症状
インフルエンザの検査・診断
- 流行期には、検査は行わずに、症状と経過から診断することもある
- 検査を行うときには、迅速検査キットと呼ばれるものが広く使用されている
- 鼻の奥(上咽頭)から拭いとった液を採取し、感染の有無を調べる
- 発熱から一定時間(12-24時間)が経過していないと、正しい検査結果が出ないことが多い
- 必要に応じて行う検査
胸部レントゲン (X線 写真)検査:肺炎が起こっていないかを調べる
インフルエンザの治療法
- 治療で最も大事なのは次の2点
- 十分な水分摂取
- 十分な休息
インフルエンザウイルス に対する抗ウイルス 薬もあるが、これらの薬は特効薬ではなく、効果がそれほど大きいわけではない- 実際の効果としては熱が出ている期間を半日から1日ほど短くする程度である
- 特に、若くて体力があり、症状が軽い場合は、インフルエンザウイルスに感染していたとしても抗ウイルス薬を使用する必要はない
- 幼児や
基礎疾患 がある人は抗インフルエンザ薬の使用が検討される
- 症状に応じて、解熱剤などの
対症療法 や漢方薬による治療を行う場合もある - インフルエンザウイルスに感染することで症状が悪化しやすい人(子どもや高齢者、妊婦など)や、症状が重い患者では、薬を内服すべき場合がある
- 抗インフルエンザ薬には、
内服薬 、吸入薬、点滴薬の3種類がある- 年齢、全身状態、症状の重さ、その他の病気の有無により選択される
- タミフル®:内服薬、1日2回、5日間服用
- リレンザ®:吸入薬、1日2回、5日間吸入
- イナビル®:吸入薬、1回だけ吸入する
- ラピアクタ®:点滴薬、入院患者、内服や点滴が難しい場合に使用
- ゾフルーザ®:内服薬、1回だけ内服する、
耐性 ウイルスの問題もあり基本的に使用する場面は少ない
- これらの治療薬は、症状が出てから48時間以内に使い始めなければ効果が乏しい
- よほど重症ではない限り、症状が出てから48時間以上経った人が使用するメリットは乏しい
- 抗インフルエンザ薬には、
- 症状が出てから5日間、また、熱が治まった後も2-3日程度は他人にうつる可能性があるため、解熱後も周囲への配慮が必要
- 感染力のピークは症状が出てから24-48時間程度である
- 他者への感染は、患者の唾液や鼻水などが、他者の鼻や口に入ることで起こる(
飛沫感染 、接触感染 ) - 手洗い、うがい、マスク着用、ワクチンの接種が基本的な感染予防法になる
- インフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからないというものではない
- ある程度(5−7割程度)の発病を阻止する効果があり、高率(9割程度)で
発症 しても重症化を阻止する効果がある - 特に高齢者や
免疫 不全患者、心臓や肺に持病のある人、子どもでは毎年のワクチン接種が推奨される
- ある程度(5−7割程度)の発病を阻止する効果があり、高率(9割程度)で
インフルエンザに関連する治療薬
抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)
- インフルエンザウイルスの増殖を抑えることで、インフルエンザ感染症の治療や予防に使われる薬
- インフルエンザ感染症はインフルエンザウイルスが原因となり高熱や関節痛などを引き起こす
- インフルエンザウイルスは細胞内へ侵入後、新たなウイルスが作られ細胞外へ放出される過程を繰り返すことで増殖する
- 本剤はインフルエンザウイルスに感染した細胞からのウイルス放出を阻害しウイルスの増殖(体内での拡散)を抑える作用をあらわす
- 薬剤によって内服薬、吸入薬(外用薬)、注射薬と分かれる
- それぞれの薬剤に合わせた適切な使用方法などの理解が必要となる
ファビピラビル(抗ウイルス薬)
- RNAウイルスの増殖に必要なRNAポリメラーゼという酵素を阻害することで抗ウイルス効果をあらわす薬
- インフルエンザ感染症はインフルエンザウイルスへの感染によって、また、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)はSFTSウイルスへの感染によって、それぞれ引き起こされる
- インフルエンザウイルスやSFTSウイルスは大きくRNAウイルスに分類され、RNAウイルスが増殖(遺伝子複製)するためにはRNAポリメラーゼという酵素が必要となる
- 本剤はRNAポリメラーゼを阻害する作用をあらわす
- インフルエンザ感染症へ使用する場合の注意点
- 本剤は通常、他の抗インフルエンザ薬が無効または効果不十分な新型または再興型インフルエンザウイルスに対して使用される
抗インフルエンザ薬(バロキサビル)
- 宿主細胞内で新たなウイルスを作るために必要な酵素を阻害し、インフルエンザウイルスの増殖を抑える薬
- インフルエンザ感染症はインフルエンザウイルスが原因となり高熱や関節痛などが引き起こされる
- インフルエンザウイルスは宿主細胞内へ侵入後、遺伝情報を含むRNAやタンパク質を合成し、新たなウイルスを作り出し増殖・拡散を行う
- 本剤は細胞内で新たなインフルエンザウイルスを作り出すために必要な酵素(キャップ依存性エンドヌクレアーゼ)を阻害する作用をあらわす
- 本剤は従来の抗インフルエンザ薬(オセルタミビルなどのノイラミニダーゼ阻害薬)とは異なる作用の仕組みによって抗ウイルス作用をあらわす
インフルエンザの経過と病院探しのポイント
インフルエンザが心配な方
インフルエンザは急激な発熱と、一般的な風邪症状に加えて全身の怠さや筋肉痛、関節痛なども出やすいことが特徴的です。毎年冬になると流行しますが、ワクチンを接種している方では症状が典型的でなく微熱程度で治まる場合もあります。
ご自身がインフルエンザではないかと心配で受診をお考えの方は内科、感染症内科、小児科のクリニックをお勧めします。ただしインフルエンザで医療機関にかかることは一長一短です。自宅で安静にする、または市販薬で様子を見る(セルフメディケーション)ことも選択肢の一つとなります。それぞれのメリット、デメリットについて、詳しくは後述します。
インフルエンザは原則的に、問診と診察で診断をする病気です。採血やレントゲンは、他の病気ではないことを確かめるために使うことができるかもしれませんが、それ以外の意味では診断の参考になりません。
診断の参考とするために、専用の検査キットを使用することがあります。鼻の奥に細い綿棒を入れて粘液をこすりとり、それを用いると5分から15分ほどで検査の結果が分かります。検査キットでの診断の精度は60-70%とあまり高くありませんので、あくまでも問診と診察が基本であり、参考のために行われる検査です。検査を行うまでもなくインフルエンザだと考えられる場合には、検査は省略されます。
なお、インフルエンザの検査を受けないと診断書が書いてもらえない、ということはありません。診断書が必要な場合には、その場で医師に申し出るようにしましょう。
インフルエンザでお困りの方
インフルエンザには、いくつかの種類の治療薬(抗インフルエンザ薬)があります。内服薬と吸入薬、点滴薬がありますが、点滴薬の効果が高いというわけではありません。内服、吸入、点滴ともに基本的に効果は変わらないのですが、例えば重症で意識が無い入院中の方であれば、意識が無いので薬を飲み込むことも、吸い込むこともできません。このような方のために点滴薬があります。内服、吸入ができる方には、内服薬、吸入薬が処方されます。
また、抗インフルエンザ薬を使用しないという選択肢も多くのケースで合理的です。抗インフルエンザ薬は、早期に使用すれば症状が出ている期間を半日から1日程度は短くすると言われていますが、決して特効薬ではありません。現在使用されている抗インフルエンザ薬の中で最も古いものの1つであるタミフル(一般名オセルタミビル)は2001年に発売開始されましたが、それまでインフルエンザは自宅で安静にして治す病気でした。インフルエンザの症状が強いときには外出して医療機関を受診することもかなりの負担になります。そのような場合には無理して抗インフルエンザ薬を使用しようとせず、自宅で休養をしっかりとっておくことは十分に合理的です。
インフルエンザの治療薬として、漢方薬が使用されることもあります。漢方薬は具体的には葛根湯、麻黄湯などがよく用いられます。これらの漢方薬はコンビニエンスストアや薬局などで購入することができます。