◆LDLコレステロールが目標値達成で1,024ドルシェア
「健康になると得をする」という制度(インセンティブ)を設定すると医療費が減らせるのでは、という見方があり、お金を動機づけとして医師や患者さんの行動を促す研究がこれまでにも多く行われています。
研究班は、心血管疾患高リスクの患者さん1,503名と医師340名を対象に、インセンティブがLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)値の降下にどのように影響するのかを検証しました。インセンティブが医師のみ、患者さんのみ、医師と患者さんで配分、インセンティブなし(対照)というグループに分け、医師のみ・患者さんのみの場合は目標値を達成すると最大1,024ドル、配分の場合は合計額が同じになるように配分、対照グループではトライアルに参加するだけで355ドルもらえることにしました。治療にはスタチンという血液中の悪玉コレステロールを低下させる薬をのむことがふくまれ、きちんと薬を続けられるかどうかが大きな鍵になります。
◆医師と患者でシェアすると治療効果が改善
医師と患者さんでインセンティブをシェアするグループでは、LDLコレステロール値が平均33.6 mg/dl減少しました(対照グループとの有意差 8.5 mg/dl)。
アメリカなどではこの種の実験が多くなっています。最近では、デポジット(ある金額を最初に預かり、目標が達成されると返還すること)を課す条件をふくめた禁煙インセンティブが実験されています。
このようなインセンティブの検証に心理学者や経済学者はどのように関わっているのでしょうか。
執筆者
Effect of Financial Incentives to Physicians, Patients, or Both on Lipid Levels
JAMA. 2015 Nov
[PMID: 26547464] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26547464※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。