2017.02.04 | ニュース

のどの痛みのあと熱が出て赤い◯ができた36歳男性

リウマチ熱による輪状紅斑の症例報告

from The New England journal of medicine

のどの痛みのあと熱が出て赤い◯ができた36歳男性の写真

皮膚の見た目が診断に役立つ病気があります。たとえば赤い輪のような症状が出る病気は限られています。日本の36歳男性に現れた特徴的な症状の例が報告されました。

東京大学病院と自治医科大学の研究者が、赤い輪のような「輪状紅斑」という皮膚症状の特徴が強く現れた写真を、医学誌『New England Journal of Medicine』に寄稿しました。

写真は以前に大きな病気のなかった36歳男性を撮ったものです。

この男性は、喉の痛みが2週間続いたあと、発熱肩・肘の痛みが1か月続いたことで受診しました。
検査では白血球13,800個/μl、CRP 26mg/dl、ASO 1478 IU/mlと、レンサ球菌(溶連菌)が感染していることを疑わせる数値が出ました。解熱鎮痛薬を使うと症状は軽くなりました。

 

1週間後に両腕と腹部に赤い輪のような斑が現れました。痛み・かゆみはありませんでした。輪のような症状は数時間ごとに少しずつ移動し、一部が消えて新しいものが現れました。

検査の結果とあわせてリウマチ熱による輪状紅斑と診断されました。悪化予防のために薬の治療が始められました。

4か月後には輪状紅斑は完全に消えました。

 

リウマチ熱により輪状紅斑が現れた人の例を紹介しました。

輪状紅斑はリウマチ熱に特徴的な症状のひとつです。リウマチ熱の患者の中でも輪状紅斑が現れる人はごく一部だけですが、輪状紅斑が現れた場合は診断の手がかりになります。「参照文献」のリンク先で、この男性の右腕に現れた輪状紅斑の写真が見られます。

リウマチ熱の症状はこの男性にも現れたように多彩です。以下が出やすい症状です。

  • 発熱
  • 息苦しさ(心炎による)
  • 複数の関節の痛み(多関節炎による)
  • 手足が勝手に動く(小舞踏病)
  • 輪状紅斑
  • 皮膚の下に数mm程度の塊ができる(皮下結節)

リウマチ熱は、レンサ球菌の感染が原因で起こります。手のこわばりなどを起こす「関節リウマチ」とはまったく別の病気です。原因がわからなかった時代に、関節が痛くなることから「リウマチ」と名付けられました。

リウマチ熱は心臓の組織を破壊して「心内膜炎」という病気を起こす場合があります。リウマチ熱にかかった人は、リウマチ熱の再発を防ぐため、長年抗生物質(ペニシリン系抗菌薬)を飲み続ける必要があります。

米国心臓学会(AHA)のガイドラインでは、心内膜炎が起こっていなければ5年以上、起こっていれば10年以上、予防内服を続けることが勧められています。何歳まで続けるべきかは議論が続いている点です。

かつては日本でもリウマチ熱による心臓の病気が大勢の人を苦しめていましたが、抗生物質がよく使われるようになり大幅に減りました。

リウマチ熱の原因となるレンサ球菌(溶連菌)はどこにでもいる細菌です。溶連菌はのどにいても感染を起こさずに常在菌として存在することもありますが、感染を確実に予防する方法もないことも特徴です。また、感染してもほとんどの場合は軽症で自然に治ります。咽頭炎による喉の痛みなどがよく起こります。

ごく一部の場合が、扁桃周囲膿瘍、急性糸球体腎炎、リウマチ熱、壊死性筋膜炎、トキシックショック症候群などにつながります。悪化する原因ははっきりしていません。咽頭炎が見つかった時点で抗生物質を飲むとリウマチ熱を予防する効果があります。

溶連菌感染が見つかったときは、その場の治療とともに、違った症状が現れたときに早く気付いて主治医に相談に行くことも大切です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Acute Rheumatic Fever with Erythema Marginatum.

N Engl J Med. 2016 Dec 22.

[PMID: 28002702] http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1601782

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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