2016.10.01 | ニュース

インフルエンザワクチンは朝が効いていた!抗体レベルで比べた結果

イギリス267人の試験

from Vaccine

インフルエンザワクチンは朝が効いていた!抗体レベルで比べた結果の写真

インフルエンザ予防接種が始まりました。ワクチンを朝に打った人と午後に打った人で効果を比較した研究から、朝に打ったほうが抗体が増えていたことが報告されました。

イギリスのバーミンガム大学の研究班が、研究結果を専門誌『Vaccine』に報告しました。この研究では、イギリスの65歳以上の高齢者276人が対象となりました。

対象者は担当する医師ごとに2グループに分けられ、午前9時から11時に注射するグループ、午後3時から5時に注射するグループとされました。

 

次の結果が得られました。

ワクチン接種による抗体レベルの上昇は、朝に注射したときと午後に注射したときで差があった。平均差はA型H1N1に対して293.3(95%信頼区間30.97-555.66、P=0.03)、B型に対して15.89(3.42-28.36、P=0.01)、しかしA型H3N2に対しては有意差がなく平均差47.0(-52.43から146.46、P=0.35)だった。朝にワクチン接種を受けた人でより大きな抗体応答があった。

有害事象は報告されなかった。

午後に注射したグループよりも、朝に注射したグループのほうが、ワクチンに含まれている一部の型のウイルスに対して、抗体がより大きく増えていました

ワクチンによる副作用と疑われる症状などが出た人はいませんでした。

研究班はこの結果について「[...]一般的な予防接種戦略に対しても示唆を含んでいる可能性がある」と述べています。

 

朝に注射することでインフルエンザワクチンの効果が増すかもしれないという結果が提示されました。ただし、この結果は実際にインフルエンザにかかったかどうかで比較されていないので、本当に「朝打ったほうがいい」と言えるかはまだ決められません。

 

この研究は高齢者を対象としています。高齢者はインフルエンザワクチンの効果が比較的出にくいことが知られています。一方で、高齢者はインフルエンザが肺炎や死亡といった深刻な結果につながりやすく、特に効果的な予防法を必要としている人たちです。何かの工夫で高齢者に対する予防接種の効果を増すことがもしできるなら、大きな意味があります。

65歳以上で、時間に融通の効く方は、不確かでも一応は取り込んで朝に打ってみるというのもひとつの考え方です。もしかしたら少し得をするかもしれません。

 

子どもにも当てはまるかどうかは、やはりこの研究では試されていないので、なんとも言えません。将来研究が進んで証拠が集まれば、子どもも高齢者もインフルエンザワクチンはなるべく朝に、と言われるようになるかもしれませんが、現時点では「わからない」と言うべきでしょう。

保育園などでは、ワクチンに対する誤解からか、「ワクチンを打った日は登園しないでください」と言われるところもあるようです。インフルエンザワクチンでインフルエンザにかかることはないのですが、保育園の方針はあらかじめ確認しておいたほうがトラブルは避けられるかもしれません。

 

2016/17年のインフルエンザ予防接種では世界的に「鼻からスプレーするタイプのワクチン(商品名:フルミストなど)は使うべきでない」とされています。日本では未承認ですが、一部の施設で使っているようです。インフルエンザの予防接種をするときは、注射する普通のワクチンにしてください。

そのほかインフルエンザワクチンについて詳しくは下のページでまとめています。注射の前に気になることがある方はぜひご覧ください。

インフルエンザワクチンは打つべき?予防接種の効果と副作用

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Morning vaccination enhances antibody response over afternoon vaccination: A cluster-randomised trial.

Vaccine. 2016 May 23.

[PMID: 27129425]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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