2016.04.03 | コラム

脳出血の症状・後遺症は片麻痺だけ?その他の症状について詳しく解説

脳出血

脳出血の症状・後遺症は片麻痺だけ?その他の症状について詳しく解説の写真
1.脳出血の概略と原因について
2.脳出血では一般的にどのような症状が出るか?症状について詳しく解説
3.症状が出てしまったら回復できる?後遺症の回復過程と予後について

脳出血を発症すると体の片側が麻痺するというイメージが強いかもしれませんが、出血部位により現れる症状は様々です。脳出血を発症すると一般的にどのような症状が出るのか、また後遺症と回復の過程について今回は解説していきます。

脳出血の概略と原因について

脳出血は、脳を栄養している血管が切れて脳の中で出血を起こしてしまう病気です。原因は、高血圧によるものが最も多いと考えられています。高血圧の状態が長く続くと血管に対して常に高い圧力が加わり、やがて血管に傷がつき血管が硬くもろくなります。この硬く、しなやかさを失った血管は小さな瘤(コブ)を作り、それが破裂したとき出血が起こります。

高血圧以外にも、脳出血を引き起こす原因があります。アミロイドアンギオパチー、脳動静脈奇形、もやもや病などの脳血管自体の病気や異常がある場合です。以下ではそれぞれの原因について解説します。

 

脳アミロイドアンギオパチー 

アミロイドという異常タンパクが脳の血管に沈着する病気です。血管にアミロイドが溜まるとがもろくなって出血をしやすくなると言われています。

脳動静脈奇形

先天異常の一つです。通常、血管は動脈から静脈に移行する間に毛細血管を介するのですが、脳動静脈奇形は毛細血管を介さずに動脈と静脈が直接つながっています。この異常により出血が起こりやすくなると言われています。

 

もやもや病

脳に栄養を送っている主要な太い血管が狭窄・閉塞しており、それを補うために小さな細い血管が発達する病気です。脳の血管撮影を行うと、発達した血管がもやもやと写ることから、もやもや病と呼ばれています。なぜ主要な血管が閉塞してしまうのかは不明ですが、日本人に多いという特徴があります。

 

脳出血では一般的にどのような症状が出るか?症状について詳しく解説

脳出血を発症すると出現する症状は様々です。ここでは、脳出血を起こした時に出現しやすい症状を挙げていきたいと思います。

 

運動麻痺(片麻痺)

人が手足を動かすには運動神経と呼ばれる神経が正常に働いている必要があります。神経にはそれぞれ通り道(経路)があらかじめ決まっており、この運動神経の通り道に何らかの障害が生じた場合、運動麻痺が起こります。運動神経の経路は錐体と呼ばれる部分を通ることから、錐体路とも呼ばれており、この錐体路は頸髄(脊髄の上方部)上部から延髄(脳幹の一部)下部の辺りで交叉します。そのため、左の脳からの運動命令は右の手足へ伝わり、右の脳からの運動命令は左の手足に伝わります。脳出血を起こし、この錐体路に障害が及ぶと反対側の手足の麻痺(片麻痺)という症状が現れます。運動麻痺を起こすと、自分の意志で思うように手足を動かすことが難しくなります。しかし、その麻痺の程度は出血の大きさや錐体路がどの程度損傷されたかにより異なってきます。脳出血を起こしても運動麻痺が出現しないこともあります。

 

感覚障害

運動神経同様、感覚神経にも経路が存在します。感覚神経は脊髄あるいは延髄で交叉し大脳まで上行していきます。そのため、感覚神経が脳内で損傷された場合も一般的には反対側に感覚障害の症状が現れます。感覚神経は脳出血を発症しやすい視床と呼ばれる部分を中継地点とし、大脳へと経路を伸ばしています。そのため、視床出血を起こすと感覚障害が出現しやすいです。また最も脳出血を起こしやすい部位である被殻と呼ばれる部分が出血を起こした場合も感覚障害が現れることは多いです。その理由としては、被殻のそばには内包と呼ばれる部分があり、この内包にも感覚神経線維が通っていることから感覚障害を引き起こしてしまうのです。感覚障害を起こすと、冷たい・温かいという感覚がわからなくなる、触られてもわからない、痛みがわかりにくくなる、自分の手足の位置が目をつぶるとわからなくなるといった症状が現れます。

 

高次脳機能障害

高次脳機能とは、運動や感覚を除いた精神・認知機能のことを指し、言語、思考、記憶、学習、注意などがそれにあたります。脳の最上部であり、大脳と呼ばれる部分が損傷を受けることでこれらの機能に障害が起こることがあります。高次脳機能障害が出現すると、例え運動麻痺がなく手足に不自由がなくても、今までと同じように日常生活を送ることや仕事を行うことなどが困難になる場合があります。また、言語の障害が生じることを失語症と言い、思い通りに言葉を出せない、相手の話していることが理解できないといった症状が現れます。高次脳機能障害は大脳の損傷で起こりやすいため、脳出血では皮質下出血(大脳の下方での出血)などの場合に発症しやすいです。また、被殻出血などにおいても出血した範囲が広ければ症状を現すことがあります。

 

眼球運動障害

眼球を動かす筋肉は外眼筋と呼ばれます。この外眼筋は6種類あり、これらの筋肉を動かす神経は脳幹と呼ばれる部分に存在しています。そのため、脳幹に出血が起こった場合や脳幹の後方に位置する小脳と呼ばれる部分が出血すると、眼球運動障害は現れやすいです。眼球運動が障害されると、思い通りに目を動かすことが難しくなります。そのため、両眼で物を見た時に左右における眼球の動きにズレが生じ二重に見えることがあります(複視)

 

協調運動障害

意識的に筋を動かし運動を遂行するためには、前述した運動神経が重要になってきますが、人は動作を行う際常にその動作に見合った力を発揮できるように運動をコントロールしています。そのため、常に円滑な動作が可能となっています。円滑な動作遂行には小脳が大きく関与していると言われています。そのため、小脳出血あるいは小脳の後方に位置する脳幹出血では協調運動障害が現れやすいです。協調運動障害は運動失調とも呼ばれ、物に手を伸ばすときに揺れてしまう(企図振戦)、行き過ぎてしまう(測定障害)、歩くときに千鳥足の様になる(酩酊歩行)などといった症状が現れます。

 

不随意運動

意識的に筋肉を働かせ身体を動かすことを随意運動と呼び、無意識に筋肉が働き身体が動いてしまうことを不随意運動と呼びます。運動を円滑に遂行するためには、前述した小脳が関与していますが、大脳基底核と呼ばれる部分(脳の中で神経細胞が集まって核を作っている部分)も運動のコントロールに関与しています。脳出血を起こしやすい部位として被殻が挙げられますが、この被殻という部分がは大脳基底核の一つであるため、損傷すると自分の意志とは関係なく身体が動く不随意運動が生じることがあります。

 

意識障害

脳幹と呼ばれる部分は生命中枢とも呼ばれ、人が生きていくために必要な部分です。意識・覚醒などにも関与しており、広範な脳幹出血などが生じると意識障害が起こることもあります。

 

症状が出てしまったら回復はできる? 後遺症の回復過程と予後について

脳出血により生じた症状の回復過程は、その出血範囲と部位に左右されます。脳出血により生じた血腫(血の塊)は徐々に吸収されていきます。脳出血を発症してすぐは、血腫により脳の細胞が圧迫されて一時的にダメージを受け、症状を現すことがあります。そのため、血腫が吸収されることで症状が少しずつ改善することもあります。しかし、完全にダメージを受けてしまった細胞は元に戻らないため後遺症として残ることになります。

後遺症を少しでも減らし、元の生活に戻れることを目的にリハビリテーションが早期から開始されます。脳の細胞は一度死んでしまうと元には戻りませんが、脳には可塑性という能力があります。これは、脳の神経細胞が新たに経路を作ったり、失われた細胞の役割を他の細胞が担おうとする能力のことを指します。この可塑性という能力を最大限に生かすためにリハビリテーションは行われます。発症直後の症状が重度の場合は、後遺症も残りやすいですが、長期的ににリハビリテーションを行うことで、少しずつ脳の神経細胞に刺激を与え変化をもたらし回復する期待は持たれています。しかし、広範な脳幹出血などにより意識障害が長く続く場合は、その後重い後遺症が残ることがあります。

 

 

脳出血の症状は、その発症部位と出血範囲により様々で、運動麻痺以外にも高次脳機能障害や眼球運動障害、協調運動障害などの症状が現れることもあります。脳出血を発症した後は早期にリハビリテーションを開始することが有効で後遺症を少しでも軽減させることに繋がります。

執筆者

中嶋 侑

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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