2015.08.30 | ニュース

脳動静脈奇形があるとALSになるリスクが2.69倍

イギリスのナショナルデータベースを分析

from Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry

脳動静脈奇形があるとALSになるリスクが2.69倍 の写真

脳動静脈奇形は、生まれつき脳の血管に異常が見られる病気です。今回の研究は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と脳の病気の関連性を検証した結果、脳動静脈奇形とALSに関連が認められることを報告しました。

◆過去に脳の病気にかかった患者のその後のALS発症を調査

脳動静脈奇形は、脳の一部に生まれつきできている血管の異常の一種で、動脈と静脈をつなぐ毛細血管が先天的に欠損し、動脈と静脈が直接つながった状態になっていることを言います。異常な血管が破裂することにより、くも膜下出血などが起こりやすいと言われています。

一方ALSは、筋肉を動かす命令を伝える神経が障害されることによって筋肉がやせていき、筋力がなくなる病気です。 ALSは脳を含む神経の変化によって症状が現れますが、神経が異常な変化を起こす原因ははっきりわかっていません。

この研究は、脳の血管の異常とALSとの関連を検証しています。

筆者らは、診療データベースを用いて、脳動静脈奇形が見つかったか、脳卒中、一過性脳虚血発作、くも膜下出血を発症した患者が、その後ALSを発症する頻度を調べました。

 

◆脳動静脈奇形があるとALSを発症する率は2.69倍

以下の結果が得られました。

AVM(2.69、p=0.005)、すべての脳卒中(1.38、p<0.001)、TIA(1.47、p<0.001)の既往と関連して、ALSの率比の増大が見られた。

ALSの発症は、脳動静脈奇形が見つかった人で2.69倍、脳卒中が起こったことのある人で1.38倍、一過性脳虚血発作が起こったことのある人で1.47倍多いという結果でした。

筆者らは、「脳動静脈奇形やそれに関連する塞栓術そのものによってと言うよりも、様々な原因により発症する脳血管障害が、病態発生におけるより複雑な多重ヒットモデルの文脈で、ALSのリスク因子になるかもしれない。」と推論しています。

 

今回の結果だけでは結論は出せませんが、ALSの原因解明に向けた一歩として今後に期待したいです。

執筆者

Shuhei Fujimoto

参考文献

Cerebrovascular injury as a risk factor for amyotrophic lateral sclerosis.

J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2015 Aug 10

[PMID: 26260352]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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