2015.05.25 | コラム

全身麻酔前にはヒゲを剃る!?

手術室看護師が解説する術前準備の意味

全身麻酔前にはヒゲを剃る!? の写真

筆者は以前手術室看護師をしていましたが、患者さんに「なぜ必要?手術と関係ないのでは?」と言われる術前準備がいくつかありました。例えば、術前のヒゲ剃りです。 全身麻酔を受けるにあたって、準備として長く生えたヒゲを剃っていただく必要がある場合があります。全身麻酔とヒゲ…、全く関係ないように思えますが、全身麻酔中の患者さんの命を守る為に重要な意味があります。

◆気管挿管チューブとヒゲの関係

全身麻酔の患者さんは人工呼吸器で呼吸を管理しますが、呼吸時の空気の通り道を確保するために、口から気管までチューブを挿入(気管内挿管)します。この挿管チューブが抜けたり深く入りすぎたりして位置がずれると呼吸ができなくなり、文字通り”命取り”になります。その為、挿管チューブの位置を最良の深さで固定する為に、テープや専用の固定器具を使います。

固定の際にテープを使用する場合、唇の周りや顎にかけてテープを貼ります。この時に口周りや顎に長いヒゲが生えていると、テープが浮いてしまったり剥がれてしまい、固定が弱まって、挿管チューブの位置がずれたり抜けたりしてしまう原因になるのです。(施設によっては専用の固定器具を使用している所もあり、その場合にはヒゲを剃る必要が無い場合もあります。)

つまり、ヒゲが全身麻酔中の呼吸管理の妨げになってしまう場合があるのです。

 

◆絶対に剃らなきゃだめ?

全身麻酔を受ける予定のある方で、長いヒゲをお持ちの方は、特別な理由が無ければ剃ることをお勧めします。ただし、ヒゲの範囲や長さによってはテープでの固定に支障を来さない場合もありますし、中にはヒゲに対する強いこだわりをお持ちで、「絶対に剃りたくない!」という方もいらっしゃると思います。そう思う方は、ぜひ事前に麻酔科医師に相談してみてくださいね。

執筆者

名原 史織

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る