あたまがいたい
頭が痛い(数日以内)

片頭痛とは?原因・症状・対処法の解説

片頭痛(偏頭痛)は若い人に多く、激しい痛みや吐き気の発作を繰り返します。前兆が出る人もいます。食べ物や低気圧、生理がきっかけになることがあります。治療には一般的な痛み止めのほか、トリプタン製剤などが処方されます。

1. 片頭痛の特徴

片頭痛は若い人、特に20代から40代の女性に多い頭痛です。次のような特徴があります。

  • 月に1回から数回、頭痛を繰り返す
  • 痛みが始まって数時間から3日以内には治る
  • 痛みは左右の片側のことが多い
  • 「ガンガン」、「ズキズキ」と拍動するような痛み
  • 前兆となる症状がある
  • 光や音に敏感になる
  • 吐き気・嘔吐をともなう
  • 動くと悪化するので、じっと座ったり、横になっていたい
  • 痛みが強く、日常生活が難しい

この特徴のすべてが揃うことは珍しいです。片頭痛だけれども頭の両側が痛い人、ギュッと締め付けられるような痛みの人もいます。

頭の片側が痛むので「片」頭痛と言います。偏頭痛というのも同じです。医学用語としては、今は「片頭痛」と書くのが主流です。

片頭痛は命の危険がなく、何か後遺症を残すこともありません。しかし痛み自体が激しいことが多く、生活の大きな妨げになってしまいます。

動くことが出来ずベッドに横たわっていたり、何度も嘔吐を繰り返すこともあります。また光や音に対して過敏になるため、部屋を暗くして横になっていたり、静かな場所を求めたりします。あまりの症状の強さに、初めて片頭痛発作を経験した人や家族は驚いて、とても心配になることもあります。

2. 片頭痛に予兆はある?

片頭痛が始まる直前、あるいは同時に独特の症状が現れることがあります。これを片頭痛の「前兆」と呼びます。通常は5分から20分に渡って徐々に強くなって、60分以内には治まります。

前兆の種類としては目の症状や皮膚の感覚など、色々あります。個人差が大きいのですが、人によってパターンが決まっていることが多いです。

視野の前兆

目の前がチカチカ、キラキラしたり、光の点や線が見えたりします。このような目の前兆を閃輝暗点(せんきあんてん)と呼びます。目の前が真っ暗になったり、視野の一部が黒く欠けてしまう人もいます。

皮膚の前兆

体や顔のどこかがチクチクし始め、徐々に広がっていきます。あるいは逆に体や顔の感覚が鈍くなっていきます。

その他の前兆

目や皮膚の前兆に比べると珍しいのですが、一時的に言葉が出にくくなる、喋りにくくなる、手足が脱力して動きにくくなる、呂律(ろれつ)が回らない、めまい、耳鳴り、難聴複視(ものが二重に見える)、意識がもうろうとするなどの前兆もあります。

これらの前兆は60分程度で完全に消失することが特徴的です。

特に注意が必要なのは、手足が脱力する、言葉が出にくくなるなどの症状を伴った場合です。片頭痛の前兆以外にも、脳出血などの危険な病気で似た症状が出る場合もあります。頭痛に加えてこうした症状があったら、まずは病院に行ってください。診察や検査を受けて、その後の症状の変化などから診断、治療がなされることになります。

典型的な前兆とは違う症状

片頭痛の発作が起きる24時間から48時間前に下記のような症状があることもあります。その症状を感じとって、「あ、片頭痛が来そうだな」と分かる人もいます。

  • なんとなく幸せな感じ
  • 気分の落ち込み
  • いらだち、焦り
  • 食欲が増す
  • 便秘
  • 首が硬くなる
  • あくびが増える

「前兆」に比べると、24時間から48時間前と発作よりだいぶ前に生じます。症状自体もあまりはっきりと分かるものではありません。今まで意識していなかった人も改めて考えれば、思い当たるところがあるかもしれません。

皮膚アロディニアとは?

皮膚アロディニアとは、片頭痛の発作中に起きる皮膚の痛みです。全然皮膚に触っていないのに、痛みやピリピリした感じがあります。片頭痛の発作が起きている時に髪の毛をくしでとかしたり、頭を触ったり、髭を剃ったり、コンタクトレンズをつけたりすることがきっかけで生じることもあります。

3. 片頭痛の原因は?

片頭痛の原因、メカニズムとして、いくつかの説があります。

  • 血管説
  • 神経説
  • 三叉神経血管説

三叉神経血管説は、何らかの原因で頭の中の血管に付随している神経が刺激を受け、神経の活動によって血管が拡張し、その結果炎症が起こり、他の血管にも炎症が広がっていくことで片頭痛が起きるという説です。片頭痛が起きているときは、脳の血管への血流量が多くなっていると考えられます。

ただ、三叉神経血管説でも片頭痛の特徴のすべてを説明することはできません。これはあくまでひとつの仮説です。

片頭痛で苦しむ人がこれだけ多いにもかかわらず、残念ながらその正確な原因、メカニズムは未だに分かっていません。

片頭痛の原因はセロトニン?

片頭痛の原因に、体内で作られているセロトニンが関係しているとも考えられています。

セロトニンは様々な役割がある物質です。血管を収縮させる働きと、神経から放出される痛み物質を抑制する働きもあります。これらの働きが片頭痛に関係するという説があります。

なんらかの原因で体内にセロトニンが大量に放出されると使い果たされてしまいます。セロトニンが不足すると、頭の血管が拡張します。また、神経からの痛み物質も抑制されないために激しい痛みを感じます。こうして片頭痛が起こるという説です。

片頭痛の薬にトリプタン製剤があります。トリプタン製剤は、セロトニンの代わりの作用をすることで、頭の血管を収縮させ、また痛み自体も抑制すると考えられています。

ストレスや食べ物が片頭痛の原因になる?

特定のきっかけで片頭痛の発作が始まることがあります。きっかけになりやすい要素には以下のものがあります。

  • 精神的な要素
    • ストレス
    • 精神的緊張
    • 疲れ
    • 睡眠不足
    • 寝すぎ
  • 身体的な要素
    • 月経周期(生理前、生理中など)
  • 環境の変化
    • 天候の変化
    • 低気圧(雨の日、台風など)
    • 温度差、暑さ
    • 旅行
    • におい
  • 食事
    • 空腹
    • 食事を抜くこと
    • アルコール(特に赤ワインが有名)
    • チーズ
    • チョコレート
    • ナッツ
  • その他
    • 喫煙
    • 運動

片頭痛がある女性では、生理前や生理中に発作が起きる人も多いです。月経時片頭痛と言います。

これらのきっかけは、片頭痛の大元の原因とは考えられていません。もともと片頭痛で痛みが繰り返しやすい人に対して、発作が始まる引き金になると考えられています。

きっかけになるものは人によって違います。上に挙げたものがきっかけになる人は多いですが、影響を受けない人もいます。

きっかけを徹底して避けたとしても、発作を完全に防げるわけではありません。自分の片頭痛を引き起こすきっかけを知っておけば、発作の回数を減らしたり、症状を軽くすることができます。生活を振り返ってきっかけを見つけ出すためには頭痛ダイアリーが効果的です。

4. 片頭痛に市販薬は効く?

市販薬を使う前に、片頭痛だと思ったら病院で診察を受けることをおすすめします。ほかの病気が隠れていないか一度は診察で調べてもらうことで診断がつきます。また、治療には適切な薬を処方してもらう必要があります。

ただ、病院で処方される薬には、一般的な痛み止めの薬もあります。片頭痛で軽い頭痛や一時的な頭痛が出たときに、市販薬が役に立つ場合もあります。

ここでは片頭痛の治療で病院でも使っている「NSAIDs(エヌセイズ)」と「アセトアミノフェン」という薬、また漢方薬について説明します。

NSAIDsとは?

NSAIDs(エヌセイズ)は、非ステロイド性抗炎症薬の略です。一般的な痛み止めの薬の多くはNSAIDsに分類されます。次のような薬がNSAIDsです。

  • アスピリン(アセチルサリチル酸)
    • 市販薬の例:バファリンAなど
  • イブプロフェン
    • 市販薬の例:イブ®など
  • エテンザミド
  • ロキソプロフェンナトリウム
    • 市販薬の例:ロキソニン®Sなど

NSAIDsは病院でもよく処方されています。市販薬にも、処方される薬と同じ成分を含むものがあります。

アセトアミノフェンとは?

画像:タイレノールAのパッケージ写真。

アセトアミノフェンは、NSAIDsとは違ったしくみで痛みを抑える薬です。

処方薬ではカロナール®錠など、市販薬ではタイレノール®Aなどがアセトアミノフェンを主成分とする薬です。ほかに以下の市販薬もアセトアミノフェンを主成分としています。

カッコ内は1錠あたりに含まれるアセトアミノフェンの量です。

バファリンA

画像:バファリンAのパッケージ写真。

バファリンAの成分はアスピリンです。アスピリンは別名でアセチルサリチル酸とも言います。アスピリンはNSAIDsの一種で、頭痛などの痛みに効果があります。

バファリンAと小児用バファリンCIIの違い

画像:小児用バファリンCIIのパッケージ写真。

小児用バファリンCIIは子供の頭痛にも使える薬です。3歳以上の子供が使えます。

同じ「バファリン」の名前を持つ薬でも、小児用バファリンCIIの主成分はアセトアミノフェンです。アスピリンは、15歳未満の子供に対しては特に必要があって処方された場合にだけ使われる薬です。一方、アセトアミノフェンは子供に対しても安全性が高いとされる薬です。

女性向けのバファリンルナi

画像:バファリンルナiのパッケージ写真。

女性の生理痛・頭痛を主なターゲットとしているバファリンルナi(アイ)は2種類の有効成分が配合されています。

  • イブプロフェン
  • アセトアミノフェン

さらに鎮痛効果を助ける成分(鎮痛補助成分)としてカフェインを、また胃を副作用から保護する成分として水酸化アルミニウムを配合しています。

ロキソニンS

画像:ロキソニンSのパッケージ写真。

ロキソニン®Sはロキソプロフェンナトリウムを主成分としています。

ロキソプロフェンナトリウムは病院で処方されるロキソニン®錠と同じ成分です。痛み、発熱、炎症を抑える効果があります。

以下の市販薬はロキソプロフェンナトリウムを含んでいます。

ロキソニンSプラス

画像:ロキソニンSプラスのパッケージ写真。

ロキソニン®Sプラスは、ロキソニン®Sの成分に加えて、胃を守る成分として酸化マグネシウムを「プラス」した薬です。普通のロキソニン®Sに比べると「胃に優しい」薬ということになります。

とはいえ、胃に負担がかかるロキソプロフェンナトリウムが主成分であることは変わりません。「胃に優しい」と言っても、決められた用法・用量を守らなければ副作用が出る危険性も高くなります。

ロキソニン®Sプレミアム

画像:ロキソニンSプレミアムのパッケージ写真。

ロキソニン®Sプレミアムは、計4種類の有効成分を配合しています。

  • ロキソプロフェンナトリウム
  • アリルイソプロピルアセチル尿素:鎮痛効果を高める
  • 無水カフェイン:鎮痛補助効果をあらわす
  • メタケイ酸アルミン酸マグネシウム:胃を守る

ロキソニン®Sプレミアムは2016年4月に発売されてロキソニン®シリーズに加わりました。4種類の成分による高い効果が期待できます。

カフェインを含むため依存性や不眠などの副作用には注意が必要です。

ノーシンシリーズ

画像:ノーシン錠のパッケージ写真。

頭痛や生理痛に対してよく使われている市販の痛み止めにノーシンがあります。ノーシン(散剤)とノーシン錠の主な成分は3成分です。

  • アセトアミノフェン
  • カフェイン水和物
  • エテンザミド

この3成分の組み合わせのことを、アセトアミノフェンAcetaminophen、カフェイン(カフェイン水和物)Caffeine、エテンザミドEthenzamideの頭文字をとって「痛みや熱に対してのACE処方(エースしょほう)」と呼ぶこともあります。

ノーシン(散剤)もノーシン錠も、主成分は同じ3成分です。

画像:ノーシン散剤のパッケージ写真。

その他の市販の痛み止め

画像:リングルアイビーのパッケージ写真。

この他、市販の痛み止めにはリングル®アイビー、ナロンエースなどいろいろなものがあります。多くは上で挙げたような鎮痛成分を主成分としています。

画像:ナロンエースのパッケージ写真。

片頭痛に漢方薬が効く?

片頭痛には次のような漢方薬が使われることがあります。

  • 呉茱萸湯(ゴシュユトウ)
  • 桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)
  • 五苓散(ゴレイサン)
  • 川芎茶調散(センキュウチャチョウサン)
  • 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
  • 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)
  • 半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)

特に頭痛予防で使われる薬(抗てんかん薬など)の副作用が出たり、薬に対してアレルギー体質があって使える薬が制限される場合などに、漢方薬が有用となる場合があります。

漢方薬の多くは、処方薬と同じ生薬でできたものを市販薬として処方箋なしで買えます。

呉茱萸湯(ゴシュユトウ)

呉茱萸湯は片頭痛、緊張性頭痛など慢性頭痛に効果が期待できるとされています。

特に頭痛発作の時に吐き気を伴ったり、首などのこり、めまい、手足の冷えを伴うような頭痛に対しての効果が期待できるとされています。

比較的体力の低下や冷えがある人で、反復性に起こる激しい頭痛を訴えるような証に適するとされます。呉茱萸湯に含まれている呉茱萸(ゴシュユ)は鎮痛、鎮静、身体を温めるなどの効果が期待できる生薬です。

桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)

桂枝人参湯は慢性頭痛に対して効果が期待できます。

比較的体力が低下していて、冷えがあり、胃腸が弱く食欲不振や吐き気があったり、疲労を伴うような証に適するとされている漢方薬です。

一般的には呉茱萸湯が適するとされる証よりも体力が低下気味な証に適するとされます。

桂枝人参湯には、健胃作用などをあらわす桂皮(ケイヒ)が含まれています。桂皮は調味料のシナモンとしても使われている生薬です。食欲不振や慢性胃炎などの改善効果のほか、熱や痛みなどに対しても改善効果が期待できます。

桂枝人参湯は5種類の生薬からできています。

  • 桂皮
  • 人参(ニンジン)
  • 甘草(カンゾウ)
  • 乾姜(カンキョウ)
  • 蒼朮(ソウジュツ)

甘草はごくまれに、偽性アルドステロン症やミオパチーを起こします。偽性アルドステロン症低カリウム血症浮腫など、ミオパチーは脱力感などを現します。甘草による偽性アルドステロン症は、甘草に含まれるグリチルリチンが原因です。グリチルリチンを含む製剤(グリチロン®錠など)の飲み合わせにはいっそう注意が必要です。

五苓散(ゴレイサン)

五苓散は片頭痛や血液透析に伴う頭痛などに効果が期待できるとされています。

口の渇きや尿量の減少などを伴うような証に適するとされている漢方薬です。

下痢を抑える止瀉(ししゃ)作用、体に水が貯留している状態での利水作用、唾液分泌が減った状態の口の渇きに対する作用などをあらわします。

川芎茶調散(センキュウチャチョウサン)

川芎茶調散は頭痛全般に効果が期待できます。中でも風邪の引き始めに引き起こされる頭痛などに対して効果が期待できるとされています。

お茶の葉である茶葉(チャヨウ)が含まれています。また川芎(センキュウ)は頭痛やのぼせ、婦人病などに効果が期待できる生薬です。

川芎茶調散は更年期障害などに伴う頭痛などに対しても効果が期待できるとされています。

比較的少量ですが甘草を含むため、副作用として偽性アルドステロン症などには注意が必要です。

鎮痛薬の乱用が原因で起こる薬物乱用頭痛に対して、鎮痛薬の乱用を止める目的で川芎茶調散を使う場合もあります。

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

冷えを伴う緊張型頭痛や片頭痛などに使われます。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)

冷えを伴い胃腸の働きが弱い状態における緊張型頭痛や片頭痛などに使われます。

半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)

胃腸が弱く貧血などを伴う緊張型頭痛や片頭痛などに使われます。

サプリメントで片頭痛を予防できる?

次の自然食品やサプリメントもある程度の片頭痛予防効果が期待できます。

  • ビタミンB2(リボフラビン)
  • フィーバフュー(fever few:ハーブの一種)
  • マグネシウム

これらは『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』でも片頭痛予防の選択肢とされています。

5. 片頭痛の対処法は?

片頭痛発作には、病院で処方されるトリプタン製剤などが有効です。トリプタン製剤は発作が始まってすぐに使うことで効果を発揮します。

そこで、片頭痛発作が起きたら最初の対処は「薬を飲む」ということになります。

ここでは薬のほかにも自分でできる対策を紹介します。

安静

片頭痛には安静が大切です。しばらく座って安静にしているだけでも効果はあります。

ただし片頭痛と診断されているのに薬を飲まず安静だけで我慢するのはお勧めできません。痛みが強くなってからではトリプタン製剤は効きにくくなります。

光や音を避ける

片頭痛発作時には痛み以外にも、いつもより光をまぶしく感じることや、音がうるさく感じることがあります。薬を飲んで、安静にするときはできるだけ強い光や強い音のない場所を選んでください。

適度な睡眠をとる

可能であれば適度な睡眠をとることも片頭痛に有効とされています。睡眠ができない状況でも発作は起こるので、可能な場合だけの対処法と思ってください。

頭を冷やす

頭を冷やすことにより片頭痛の痛みを軽減できる場合もあります。冷却シートで症状が和らぐ場合もあります。

片頭痛は予防できる?

片頭痛の発作を減らすために、発作のきっかけになるものごとがわかっていれば避けることができます。人によって以下のようなことがきっかけを避ける対策になる場合があります。

  • 規則正しい生活
    • 寝不足も寝すぎも避ける
  • 食事を抜かない
  • きっかけになる食品を避ける
  • 温度差に気をつける
    • 夏場にクーラーを効かせすぎない、炎天下で外出しない

ただし、きっかけを避けようとして食事を制限しすぎると、食事制限がストレスになってしまいます。強いストレスを感じてまで食事制限をする必要はないという意見もあります。

発作が起きたときのために薬を持ち歩くことも大切です。

6. 片頭痛は病院に行くべき?

片頭痛は病院で治療するべき病気です。病院で処方されるトリプタン製剤は、片頭痛の原因に特化した薬です。また診察を受けることでほかの病気と見分けることも大切です。

片頭痛の治療法は?

片頭痛の治療には主に次の薬が処方されます。

  • トリプタン製剤
  • エルゴタミン製剤
  • NSAIDs
  • アセトアミノフェン
  • 吐き気止めの薬
  • てんかん
  • 抗うつ薬
  • 高血圧などの治療薬
  • 漢方薬

NSAIDsとアセトアミノフェンは、市販薬でもよく使われている痛み止めの薬です。漢方薬も市販薬として手に入れることもできます。

ほかの薬について説明します。

トリプタン製剤

トリプタン製剤の種類として以下のものがあります。

  • スマトリプタン
    • 商品名:イミグラン®など
    • 代表的なトリプタン製剤です。
    • 飲み薬だけでなく、点鼻剤や注射剤もあるので、嘔吐などにより薬を飲みにくいときのメリットが考えられます。
    • 点鼻剤は鼻水を拭いてから使ってください。
  • ゾルミトリプタン
    • 商品名:ゾーミッグ®など
    • ゾーミッグRM錠2.5mgは口の中で溶けて水なしで飲めるので、携帯に便利です。
  • エレトリプタン
    • 商品名:レルパックス®
  • リザトリプタン
    • 商品名:マクサルト®
    • マクサルトRPD錠10mgは口の中で溶けて水なしで飲めるので、携帯に便利です。
  • ナラトリプタン
    • 商品名:アマージ®
    • 長く効く薬です。約24時間効果が持続します。

トリプタン製剤は脳の血管を収縮させ、また神経からの痛み物質の伝達を抑制します。つまり片頭痛が起こる2つの仕組みの両方に働きかけるので、まさに片頭痛発作の治療に特化した薬といえます。

トリプタン製剤はよく「高い」と言われる薬です。飲み薬なら1錠の薬価が900円前後です(2016年9月現在)。自己負担が3割なら支払うのは270円ほどですが、発作が起きるごとに使うのでかなりの値段になります。

一部の薬にはジェネリック医薬品もあります。ジェネリック医薬品が使えれば薬の費用を減らせることがあります。

参照文献:Cochrane Database Syst Rev. 2016 Apr 20

エルゴタミン製剤

エルゴタミン製剤は片頭痛の発作のときに使う薬です。過剰に広がった脳の血管を収縮させ痛みを抑えます。発作が起きてすぐ、もしくは発作の前兆があった段階で服用します。

商品名にはクリアミン®などがあります。クリアミン®はエルゴタミンに無水カフェインとイソプロピルアンチピリン(NSAIDsの一種)を配合した薬です。

ジヒデルゴット®というエルゴタミン製剤も使われていましたが、副作用の懸念などから2016年に販売中止となりました(2017年3月末が経過措置満了時期とされています)。

エルゴタミン製剤をトリプタン製剤と一緒に使うときには、間隔を24時間以上空けて飲むことと決められています。続けて飲むと血圧が上がったり、血管収縮作用が強くなりすぎる可能性があるためです。

妊娠中や授乳中の女性はエルゴタミン製剤を使用できません。

エルゴタミン製剤の副作用としては、服用後に吐き気や腹痛などの消化器症状、めまいや不眠などの精神神経系症状などがあらわれることがあります。

吐き気止めの薬

片頭痛の発作で吐き気・嘔吐の症状が現れます。それに対して、吐き気止めの薬であるメトクロプラミド(商品名:プリンペラン®など)やドンペリドン(商品名:ナウゼリン®など)などが用いられています。

抗てんかん薬

てんかん薬は片頭痛発作を予防する目的で使うことがあります。脳の異常な興奮が片頭痛を起こすため、抗てんかん薬で異常な興奮を抑えることにより、片頭痛発作を予防できると考えられています。

  • バルプロ酸ナトリウム
    • 商品名:デパケン®など
  • トピラマート
    • 商品名:トピナ®
  • クロナゼパム
    • 商品名:ランドセン®、リボトリール®

抗うつ薬

抗うつ薬はセロトニンなどの神経伝達物質に作用します。片頭痛の原因にはセロトニンなどが関わっているので、抗うつ薬で発作を予防できると考えられています。

  • アミトリプチリン
    • 商品名:トリプタノール®など
  • ノルトリプチリン
    • 商品名:ノリトレン®など

高血圧などの治療薬

片頭痛の原因には血管の収縮と拡張が関係しています。血圧を下げる薬の一部は血管の収縮・拡張に対して作用します。このため片頭痛予防にも効果があると考えられています。

次のような薬に片頭痛に対する効果が期待できるとされます。

  • β遮断薬
    • プロプラノロール(商品名:インデラル®など)
    • メトプロロール(商品名:セロケン®、ロプレソール®など)
  • カルシウム拮抗薬
    • ロメリジン(商品名:テラナス®、ミグシス®)
    • ベラパミル塩酸塩(商品名:ワソラン®など)
  • ACE阻害薬(エースそがいやく)
    • エナラプリル(商品名:レニベース®など)
    • リシノプリル(商品名:ゼストリル®、ロンゲス®など)
  • ARB
    • カンデサルタン(商品名:ブロプレス®など)

片頭痛は治る?

片頭痛はしだいに軽くなっていく場合が多いです。しかし、発作が繰り返す期間は人によってかなり違います。

発作が何年も続く人も大勢います。慢性片頭痛と言います。慢性片頭痛では、緊張型頭痛に似たギューッと締め付けられるような痛みに変わってくることがあります。

アメリカの調査で、片頭痛がある人の割合は次のとおりだったと報告されています。

  • 男性
    • 30代:9%
    • 60歳以上:2.1%
  • 女性
    • 30代:38.1%
    • 60歳以上:6.4%

片頭痛は若い人、特に若い女性に多いことが現れています。一方で、片頭痛が60歳まで続く人はわずかであることも表れています。

実際に一人ひとりの患者さんに話を聞いても、長年片頭痛と付き合っているうちに、昔に比べれば楽になってきたという人が多いです。

参照文献:Neurology. 2007 Jan 30.

片頭痛の分類と診断基準

片頭痛は前兆のない片頭痛と前兆のある片頭痛に分かれます。『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』では、次の基準が決められています。

【前兆のない片頭痛】

A. B~Dを満たす頭痛発作が5回以上ある

B. 頭痛の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)

C. 頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす

  1. 片側性
  2. 拍動性
  3. 中等度~重度の頭痛
  4. 日常的な動作(歩行や階段昇降などの)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける

D. 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす

  •  悪心または嘔吐(あるいはその両方)
  •  光過敏および音過敏

E. その他の疾患によらない

【典型的前兆に片頭痛を伴うもの】

A. B~Dを満たす頭痛発作が2回以上ある

B. 少なくとも以下の1項目を満たす前兆があるが、運動麻痺(脱力)は伴わない

  1. 陽性徴候(例えばきらきらした光・点・線)、および/または、陰性徴候(視覚消失)を含む完全可逆性の感覚症状
  2. 陽性徴候(チクチク感)および/または陰性徴候(感覚鈍麻)を含む完全可逆性の感覚症状

C. 少なくとも以下の2項目を満たす

  1. 同名性の視覚症状または片側性の感覚症状(あるいはその両方)
  2. 少なくとも1つの前兆は5分以上かけて徐々に進展するか、および/または、異なる複数の前兆が引き続き5分以上かけて伸展する

D. 「前兆のない片頭痛」の診断基準B~Dを満たす頭痛が、前兆の出現中もしくは前兆後60分以内に生じる

E. その他の疾患によらない

(『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』をもとに作成)