2016.06.22 | ニュース

目が開かないバセドウ病?CTに写ったもうひとつの病気とは

インド38歳女性の症例報告

from Journal of neurosciences in rural practice

目が開かないバセドウ病?CTに写ったもうひとつの病気とはの写真

バセドウ病は目が飛び出す症状(眼球突出)で知られていますが、目に違った症状が出ることもあります。インドの研究班から、まぶたが下がる、ものが二重に見えるという症状で見つかったバセドウ病患者の例が報告されました。

◆目が開かなくなった38歳女性

ここで報告されている38歳の女性は、両目のまぶたが下がる(眼瞼下垂)、ものが二重に見える(複視)という症状があり受診しました。

最近9か月以内に、月経が少ない、体重が減る、手がふるえる、動悸(どうき)、首の前が腫れるという症状が出ていました。

首の前には甲状腺があります。甲状腺が腫れて体重減少や動悸、手のふるえ、月経周期の異常を起こす代表的な病気にバセドウ病があります。しかし、バセドウ病自体には、目が飛び出す症状が知られている一方で、まぶたが下がるという症状は典型的ではありません。

 

◆重症筋無力症の薬が効いた!

診察では、目を動かす筋肉(外眼筋)の麻痺が見つかりました。血液検査、シンチグラフィ、針生検の結果はバセドウ病の特徴に一致しました。

さらに、ネオスチグミンという薬品を使う試験で、眼瞼下垂の症状が改善しました

ネオスチグミンは重症筋無力症の検査と治療に使われる薬で、重症筋無力症に典型的に起こる眼瞼下垂などの症状を改善します。

さらに血液検査とCTも重症筋無力症の特徴に一致しました。

バセドウ病に対する抗甲状腺薬と、重症筋無力症の薬を使った治療によって、2か月のうちに症状が軽くなりました。

研究班は考察として、「バセドウ病は重症筋無力症や1型糖尿病、悪性貧血、自己免疫性副腎不全などさまざまな自己免疫疾患と関連している」と指摘しています。

 

バセドウ病の原因は、免疫の異常(自己免疫)により、甲状腺が自分自身の免疫システムから攻撃を受けて、甲状腺ホルモンを過剰に分泌してしまうことです。自己免疫は複数の病気を同時に引き起こすことも多く、重症筋無力症もそのひとつです。

バセドウ病の典型的な症状は、目が飛び出す以外にも、動悸・手のふるえ・首の腫れ、さらに疲れやすさ・下痢・汗をかくなどがあります。もしいくつかに当てはまる症状が出たら、目が飛び出す症状がなくてもバセドウ病を考えて代謝・内分泌内科などで診察を受けてみるといいでしょう。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Neurological manifestations of Graves' disease: A case report and review of the literature.

J Neurosci Rural Pract. 2016 Jan-Mar.

[PMID: 26933368]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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