2016.03.22 | ニュース

治療による発がんか、前立腺がんの放射線治療後に多かった3種類のがん

21件の研究の調査から

from BMJ (Clinical research ed.)

治療による発がんか、前立腺がんの放射線治療後に多かった3種類のがんの写真

放射線治療はがんを治療できる一方、正常な組織も少しの放射線にさらされることが避けられないため、さまざまな副作用があります。前立腺がんの放射線治療と、新たにがんが発生することに関連があるか、これまでの研究報告をもとに検討されました。

◆前立腺がんの放射線治療

放射線治療による悪影響として、皮膚炎などのほか、まれに新しいがんを発生させてしまうことがありえます。放射線治療には多くの方法がありますが、どの方法でも、悪影響を防ぐため、正常な組織が受ける放射線の量を最小限に抑える工夫がなされています。

前立腺がんは、進行が遅く早期のものは死因になりにくいことから、場合によっては治療が不要とも判断されます。

治療法には手術、放射線治療のほか、ホルモン療法などがあります。放射線治療以外の治療にも、手術で周りの組織を傷付けたり、ホルモン療法で全身への影響があるなどのリスクがあります。

前立腺がんの放射線治療には、体の外から放射線を照射する方法(外照射)のほかに、少量の放射性物質を前立腺の中に埋め込む方法(小線源治療)があります。

 

◆放射線治療のあとにほかのがんは増えるか?

この研究は、過去の研究を集める方法で、前立腺がんの放射線治療のあと、ほかのがんが新たに発生する頻度について調べました。

膀胱がん、大腸がん、特に直腸がん、また肺がん、血液のがんについての情報を集めました。

 

◆外照射で膀胱がん、大腸がん、直腸がんが多い

次の結果が得られました。

放射線治療を受けていない人に比べて、放射線治療後のリスク増加が、膀胱がん(4件の研究、調整ハザード比1.67、95%信頼区間1.55-1.80)、結腸直腸がん(3件の研究、1.79、1.34-2.38)、直腸がん(3件の研究、1.79、1.34-2.38)について見られたが、造血系のがん(1件の研究、1.64、0.90-2.99)、肺がん(2件の研究、1.45、0.70-3.01)については見られなかった。第二のがんのオッズは放射線治療の種類によって多様であり、外照射による放射線治療は一貫してオッズの増加と関連したが、小線源治療は一貫した関連がなかった。

放射線治療を受けたあとの人では、受けていない人よりも、膀胱がん、大腸がん、直腸がんの発生が多いと見られました。肺がん、血液のがんには違いが見られませんでした。放射線治療の中でも外照射に対しては、データがあったどの研究でも関連が見られました。

研究班は「前立腺がんの放射線治療は[...]第二の悪性物が発生するリスクがより高いことと関連したが、報告されていた率の絶対量は低かった」と述べています。

 

がんの治療には絶対に安全と言えるものはなく、治療によってまれに悪影響が起こる可能性と、がんを治療する効果のバランスを考えて、治療法が選ばれます。早期前立腺がんでは治療しないほうが有益と判断される場合もあります。放射線治療も、まれな悪影響よりも治療が重要という判断のうえで使われますが、そのときに注意するべき点はあります。

この報告は、放射線治療を受けようとするときの参考のひとつにできるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Second malignancies after radiotherapy for prostate cancer: systematic review and meta-analysis.

BMJ. 2016 Mar 2.

[PMID: 26936410]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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