◆卵円孔開存のカテーテル手術とは?
心臓の右心房と左心房の間は心房中隔という壁で区切られています。胎児では心房中隔に卵円孔という穴があって、右心房と左心房がつながっています。卵円孔は成長とともに自然にふさがりますが、成人しても穴が開いたまま(卵円孔開存)の人もいます。
卵円孔開存は治療しなくてもほとんど問題にならないと言われていますが、心臓の中で血液の流れが正常と違うことなどにより、脳梗塞などのリスクがいくぶん高くなるという説もあります。卵円孔をふさぐ方法にはカテーテル手術があります。
◆カテーテル手術で脳梗塞の再発を防げるか
この研究は、卵円孔開存があり、潜在性脳卒中または一過性脳虚血発作が以前に起こった人を対象として、カテーテル手術で卵円孔をふさぐことにより脳梗塞や一過性脳虚血発作の再発を防ぐ効果があるかを、過去の複数の研究を集める方法で調べました。
治療効果として、一般に脳梗塞の再発予防に使われる、血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬または抗血小板薬)を使った場合と比較した研究を選びました。
◆薬物治療と差がない
見つかった3件の研究データから、合計2,303人の対象者を含めた解析で、次の結果が得られました。
脳卒中または一過性脳虚血発作の複合アウトカムについて、カテーテル閉鎖術を薬物治療と比較したときにintention-to-treat分析において統計的に有意なリスク減少は見られなかった。
カテーテル手術を行ったグループと、薬物治療を行ったグループで、脳梗塞などの頻度に違いが見られませんでした。
この研究では一過性脳虚血発作などいくつかの場合をまとめて効果の指標としていますが、指標の選び方によって結果が若干違う可能性も考えられます。とはいえ、卵円孔開存の治療が必要かどうかを判断するため、個人ごとの要因をもとに考えるうえで、ひとつの参考になるかもしれません。
執筆者
Closure versus medical therapy for preventing recurrent stroke in patients with patent foramen ovale and a history of cryptogenic stroke or transient ischemic attack.
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Sep 8 [Epub ahead of print]
[PMID: 26346232]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。