2015.09.21 | ニュース

発作性夜間血色素尿症での妊娠、エクリズマブを使っているとどうなる?

妊娠75件の集計

from The New England journal of medicine

発作性夜間血色素尿症での妊娠、エクリズマブを使っているとどうなる?の写真

発作性夜間血色素尿症(PNH)はまれな病気で、赤血球が壊れること(溶血)による貧血などさまざまな異常を起こしますが、エクリズマブによる治療で溶血の改善が期待できます。治療中の妊娠の経過が報告されました。

◆質問票で情報収集

PNHでは溶血のほか、感染しやすくなる、出血しやすくなる、あるいは血栓症(血の塊が血管に詰まること)が起きやすくなるといった異常も起こることがあります。このような血液の病気がある女性が妊娠するときは、母親の出血・血栓症だけでなく、流産などのリスクも高いと考えられます。

エクリズマブは溶血を抑える効果が知られているほか、血栓症を防ぐという説もあります。

研究班は、PNH患者の妊娠についての情報を関係者から質問票で集めました。

 

◆母体死亡はなく、流産6例、胎児死亡3例

集まった回答で、61人の女性の75件の妊娠について情報が得られました。報告された中に母親が死亡した例はなく、妊娠初期の流産が6例、胎児死亡が3例ありました。ほか詳しくは以下の報告がありました。

発作性夜間血色素尿症のある61人の女性、75件の妊娠が評価された。母体死亡はなく、胎児死亡が3例(4%)あった。妊娠初期に6例の流産が起こった。赤血球輸血の必要は増加し、妊娠6か月前の月当たり平均0.14ユニットから、妊娠中には月当たり平均0.92ユニットとなった。血小板輸血は16件の妊娠で行われた。

低分子量ヘパリンは妊娠の88%で使われていた。10件の出血性イベントと2件の血栓性イベントが記録された。血栓性イベントは2件とも出産後の時期に起こった。計22件の出産(29%)が早産だった。

これらの結果について、研究班は「胎児の生存率が高く、母親の合併症発生率が低いことで示されているように、エクリズマブは発作性夜間血色素尿症がある女性の妊娠中に利益をもたらした」と結論しています。

 

この研究はエクリズマブを使わなかった場合との比較を行っていないため、エクリズマブの効果の判断は、歴史的に知られていることをもとになされています。

妊娠中は病気やその治療による影響が大きく変わることがあります。発作性夜間血色素尿症がある女性の妊娠という、まれで専門的な注意を必要とする状況では、こうした例の情報が助けになるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Eculizumab in Pregnant Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria.

N Engl J Med. 2015 Sep 10

[PMID: 26352814]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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