2015.08.27 | ニュース

頭への電気刺激で手指の細かい動きと注意力が改善する

ランダム化クロスオーバー比較試験により検証
from American journal of physical medicine & rehabilitation / Association of Academic Physiatrists
頭への電気刺激で手指の細かい動きと注意力が改善する の写真
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脳卒中後に手指の細かい動きや注意力が障害され、日常生活動作が円滑に行えなくなることがあります。今回の研究は、そのような脳卒中患者に対して経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を行い、その後手の動きや注意力が改善したと報告しました。

◆運動を司る脳部位にtDCSを実施し、効果を検証

tDCSは、脳を頭蓋骨の外から電気で刺激する手法です。陽極を置いた下の脳活動は促進され、陰極を置いた下の脳活動は抑制されると言われています。

今回の研究は、以下の方法で実施されました。

麻痺側の手でつまみ動作にいくらか力が入る10名の脳卒中患者が、障害側の1次運動野に陽極刺激を行うセッション(M1障害側)、非障害側の1次運動野に陰極刺激を行うセッション(M1非障害側)、偽刺激の3つの異なるtDCS介入をそれぞれ20分、ランダムな順序で実施した。

対象となった脳卒中患者10人に

  • 障害されている側の脳に陽極を置いて、障害側の脳活動を高める
  • 障害されていない側の脳に陰極を置いて非障害側の脳活動を下げ、障害側の脳活動を相対的に高める
  • 偽刺激

の3種類を行い、効果を検証しました。

 

◆非障害側に陰極刺激を行うと効果的

調査の結果、以下のことを報告しました。

M1非障害側に陰極tDCSを行うことで、麻痺側の手の巧緻性(Pudue pegboard unimanual testで1.1ポイント、p=0.014)、選択的注意(反応抑制に対するレベル3のStroop interference testで0.6秒早い反応、p=0.017)は有意に改善したが、つまみ力は改善しなかった。

アウトカムは、M1障害側への陽極tDCSと偽刺激では改善しなかった。

障害されていない側の脳活動を下げることで、麻痺している手の細かい動きや注意力が改善しました。

筆者らは、「慢性期脳卒中患者において、M1非障害側への20分の陰極tDCSにより、麻痺側の手の巧緻性も選択的注意も促通できる。」と述べています。

 

運動機能に対するtDCSの効果はいくつか報告してきました。脳卒中後の治療にもtDCSが役に立てれば、より治療の選択肢が多くなるかもしれません。今後に期待します。

執筆者

Shuhei Fujimoto

参考文献

Transcranial direct current stimulation to primary motor area improves hand dexterity and selective attention in chronic stroke.

Am J Phys Med Rehabil. 2014 Dec

[PMID: 24919077]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。