頭への電気刺激で手指の細かい動きと注意力が改善する
脳卒中後に手指の細かい動きや注意力が障害され、日常生活動作が円滑に行えなくなることがあります。今回の研究は、そのような脳卒中患者に対して経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を行い、その後手の動きや注意力が改善したと報告しました。
◆運動を司る脳部位にtDCSを実施し、効果を検証
tDCSは、脳を頭蓋骨の外から電気で刺激する手法です。陽極を置いた下の脳活動は促進され、陰極を置いた下の脳活動は抑制されると言われています。
今回の研究は、以下の方法で実施されました。
麻痺 側の手でつまみ動作にいくらか力が入る10名の脳卒中患者が、障害側の1次運動野に陽極刺激を行うセッション(M1障害側)、非障害側の1次運動野に陰極刺激を行うセッション(M1非障害側)、偽刺激の3つの異なるtDCS介入をそれぞれ20分、ランダムな順序で実施した。
対象となった脳卒中患者10人に
- 障害されている側の脳に陽極を置いて、障害側の脳活動を高める
- 障害されていない側の脳に陰極を置いて非障害側の脳活動を下げ、障害側の脳活動を相対的に高める
- 偽刺激
の3種類を行い、効果を検証しました。
◆非障害側に陰極刺激を行うと効果的
調査の結果、以下のことを報告しました。
M1非障害側に陰極tDCSを行うことで、麻痺側の手の巧緻性(Pudue pegboard unimanual testで1.1ポイント、p=0.014)、選択的注意(反応抑制に対するレベル3のStroop interference testで0.6秒早い反応、p=0.017)は
有意 に改善したが、つまみ力は改善しなかった。アウトカムは、M1障害側への陽極tDCSと偽刺激では改善しなかった。
障害されていない側の脳活動を下げることで、麻痺している手の細かい動きや注意力が改善しました。
筆者らは、「慢性期脳卒中患者において、M1非障害側への20分の陰極tDCSにより、麻痺側の手の巧緻性も選択的注意も促通できる。」と述べています。
運動機能に対するtDCSの効果はいくつか報告してきました。脳卒中後の治療にもtDCSが役に立てれば、より治療の選択肢が多くなるかもしれません。今後に期待します。
執筆者
Transcranial direct current stimulation to primary motor area improves hand dexterity and selective attention in chronic stroke.
Am J Phys Med Rehabil. 2014 Dec
[PMID: 24919077]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。