2015.08.06 | ニュース

血小板を増やす薬で難病の子どもを治療、出血を減らす効果あり

92人のランダム化試験

from Lancet (London, England)

血小板を増やす薬で難病の子どもを治療、出血を減らす効果ありの写真

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)では、血小板が少なくなることにより、脳出血などの深刻な出血が起こります。エルトロンボパグは血小板を増やす薬として最近登場しました。新たに子どもの治療に使った研究でも、深刻な副作用なく効果が見られました。

◆血小板が少ない子どもが対象

研究班は、次の対象者をエルトロンボパグで治療しました。

1歳から17歳の小児科患者で、慢性の自己免疫性血小板減少症があり、血小板数が30×10^9/l未満の子どもが2:1の比でランダムにエルトロンボパグか偽薬に割り付けられた。

血小板は健康な人では1mm3あたり20万個程度ありますが、この数が慢性的に少なく、3万個未満になっている17歳以下の子どもが対象となりました。対象者は飲み薬のエルトロンボパグを飲むグループと、偽薬を飲むグループにランダムに分けられました。

 

◆血小板が増え、出血が減った

次の結果が得られました。

63人の患者がエルトロンボパグ治療に、29人が偽薬に割り付けられた。

偽薬群の1人(3%)に対して、エルトロンボパグ群の25人(40%)の患者が、一次アウトカムである血小板50×10^9/lを二重盲検期間の最後の8週のうち6週で達成した(オッズ比18.0、95%信頼区間2.3-140.9、P=0.0004)。

二重盲検期間終了時にWHO分類1度から4度の出血を経験していた患者の割合は、偽薬群(29人中16人、55%)よりもエルトロンボパグ群で小さかった(63人中23人、37%)。

エルトロンボパグ群で偽薬群よりも多く起こった有害事象は、鼻咽頭炎(11人、17%)、鼻炎(10人、16%)、上気道感染症(7人、11%)、咳(7人、11%)だった。深刻な有害事象はエルトロンボパグ群の5人(8%)、偽薬群の4人(14%)に起こった。

血小板数の目標はエルトロンボパグのグループの40%で達成され、出血は偽薬のグループよりもエルトロンボパグのグループで少なくなっていました。副作用の可能性がある出来事として、鼻咽頭炎、鼻炎などが見られました。

 

ITPは、免疫の異常により脾臓で血小板が破壊されてしまうことが原因と言われています。治療には、発病に関係すると言われているピロリ菌の除菌、異常な免疫の働きを抑えるステロイド薬、脾臓を取り除く手術などがあり、エルトロンボパグはこれらの効果が十分でない場合などに使うこととされています。子どもに対する作用は未知とされていましたが、この報告が加わったことで、より計画的に治療に活かせるようになるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Eltrombopag for children with chronic immune thrombocytopenia (PETIT2): a randomised, multicentre, placebo-controlled trial.

Lancet. 2015 Jul 28 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26231455]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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