2015.07.25 | コラム

風邪の治療・抗生剤の使用について〔小児科に行く前に〕

やたらめったら抗生剤を飲んでいませんか?

風邪の治療・抗生剤の使用について〔小児科に行く前に〕の写真

風邪は、くしゃみ、鼻水、のどの痛み、咳、痰に全身症状(熱、倦怠感、胃腸症状など)をきたした状態。風邪の原因は80~90%がウイルス感染。ウイルスの種類は400種類以上あり、また同じウイルスでも型が何種類もあるため、繰り返し風邪を引きます。そして、ウイルス性の風邪の場合抗生剤は効きません。特殊な場合を除いて自分の免疫力で自然に治りますが、明らかに細菌感染症が疑われるときに抗生剤を飲む必要があります。

◆風邪ってなあに?

子供たちはよく風邪をひきますね。また、医師から「風邪ですね」といわれることも多いと思います。でも、風邪って一体どんな病気なのでしょうか?

風邪とは、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・のどの痛み・咳・痰などに加え、発熱・頭痛・全身倦怠感・食欲不振などの全身症状(時に、嘔吐や下痢などの胃腸症状)が出現した状態のことを言います。

風邪の原因は80~90%がウイルス感染であり、そのほか10~20%が細菌やマイコプラズマ、クラミジアなどの感染によるものです。原因となるウイルスはパラインフルエンザウイルス、ライノウイルスなどが代表的です。それぞれ多くの異なった型を持っていて、更にその他のウイルスも存在し、全部で400種類以上のウイルスが風邪の原因となります。そのために、風邪に何度もかかってしまうのです。

夏に流行する夏風邪には、エコーウイルスやコクサッキーウイルスなどが原因でこれにも種類がたくさんあり、何度も同じような夏風邪にかかってしまうのです。特に集団生活を始めたばかりの子供たちは、いままで風邪のウイルスにさらされていなかったことと、子供たちが様々なウイルスを持ち寄ることで、風邪のウイルスをもらい合い、風邪を繰り返してしまうのです。

 

◆風邪に抗生剤は効かない?

風邪の原因のほとんどがウイルスということを説明しましたが、ウイルス性の風邪の場合は抗生剤は効果がありません。しかし、幸いなことに、ウイルスによる風邪のほとんどは自分の免疫の力で自然と治ってしまうのです。

ウイルスが原因の風邪の場合には、自分の免疫の力で治りやすくするようにサポートしてあげるのが治療の基本となります。症状を和らげる薬(痰を出しやすくする薬、咳を鎮める薬、熱を下げる薬)を飲むこと、食事や水分を十分にとることで体力の回復を助けます。

また、お子さんの場合にはうまく痰が出せずに気管や肺に溜まってしまうこともありますので、水分を多く取って痰を柔らかくしたり、背中を軽く叩いて咳と一緒に出しやすくしたりといった方法が有効です。

 

何度も言う様ですが、ウイルス性の風邪と診断した場合には抗生剤は必要ありません。風邪のときにあとから細菌感染を合併することがあり、以前はこれを予防するため抗生剤をよく処方していましたが、現在では細菌感染の予防はできないことがわかっています。

「風邪をひいたので抗生剤を下さい」と来院されることがありますが、風邪の原因がウイルスのことがほとんどであることを十分に理解してもらい、風邪=抗生剤を飲むという間違った考え方を正していきましょう。風邪と診断されて抗生剤が処方された場合にも本当にそれが必要なのか医師に尋ねてみるのもいいかもしれません。

必要ではないときに抗生剤を使用すると、抗生剤が効かないバイ菌が体に住み着くことがあります。そのバイ菌が体に悪さをしたときに、抗生剤が効かない状況となってしまいます。特に日本は他の国に比べて抗生剤が乱用されています。適切な抗生剤治療を行わないと、将来的に抗生剤が効かない怖い細菌(耐性菌)が増えることとなります。お子さんを守るためにも適切な抗生剤治療を受けてください。

 

◆抗生剤はどういう時に飲めばいいの?

では、どういうときに抗生剤を飲むのでしょうか?

それは、明らかに細菌感染が疑われる場合になります。たとえば、喉が発赤し膿がつくような、溶連菌などによる化膿性の咽頭炎・扁桃炎のとき。細菌による気管支炎・肺炎、また、初期にウイルスによる風邪であったものが、うまく痰などが出せずに肺や気管支に溜まり、そこに細菌感染がおこること(二次感染)による肺炎・気管支炎などが挙げられます。

また、小さなお子さんの場合には、特に細菌の感染源となる場所が見当たらなくても、尿道から感染する尿路感染症があります。ほかに重篤なものとして血液中に細菌が入り込む場合(菌血症)もあります。これは注意が必要で、そのようなときには、症状が急激に悪くなり、その後髄膜炎を引き起こすこともあります。機嫌が悪い、ぐったりして反応が悪い、顔色が悪いなど、全身の状態が良くない場合にはそのようなことも考えられますので、医療機関を受診して相談してください。

 

細菌の感染が疑われる場合に、適切に抗生剤を使用することが重要です。抗生剤が処方された場合は、用法と容量、内服日数を必ず守り、飲みきるようにしましょう。自己判断による抗生剤の内服や、中途半端に抗生剤の使用を中止してしまうと、抗生剤の効かない細菌(耐性菌)を作り出してしまいます。本当に抗生剤が必要なときにその抗生剤が効かなくなってしまっている事態にならないように、適切に診断を受け、抗生剤を使用しましょう。

 

【編集部注】

この記事は、「キャップスクリニック」のサイトで公開中の記事をもとに作成しています。

http://www.caps-clinic.jp/forparents

執筆者

白岡 亮平

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る