2015.07.22 | ニュース

悪性リンパ腫に使う抗がん剤、途中でやめてはいけないのか?ホジキンリンパ腫に対する化学療法中止の検証

ドイツ3,309人の観察研究

from Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology

悪性リンパ腫に使う抗がん剤、途中でやめてはいけないのか?ホジキンリンパ腫に対する化学療法中止の検証の写真

ホジキンリンパ腫には複数の抗がん剤がよく使われますが、副作用により一部の薬を使用中止することもあります。ドイツで標準的な化学療法のうち2種類の薬について、ある期間で使用中止しても生存率に違いがなかったという研究結果が出ました。

◆BEACOPP治療を受けたホジキンリンパ腫患者が対象

ホジキンリンパ腫は血液のがんである悪性リンパ腫の一種で、治療には複数の抗がん剤の併用による化学療法がよく使われます。化学療法は一定のスケジュールに沿った「サイクル」を繰り返し行います。

研究班は、ドイツのホジキンリンパ腫患者を対象とした大規模研究のデータを統計解析しました。解析の対象は、代表的な化学療法であるBEACOPP(ブレオマイシン、エトポシド、アドリアマイシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾンの7剤併用)で治療された患者とし、使用中止が多いと見られたブレオマイシンまたはビンクリスチン、またはその両方を中止した場合の、結果との関連を調べました。

 

◆中止しても生存率に差がない

次の結果が得られました。

[...]ブレオマイシンを4サイクル以下使用した患者と、4サイクルを超えて使用した患者には、無増悪生存率にも(5年無増悪生存率の差1.7%、95%信頼区間-4.2%から7.6%)、全生存率にも(5年全生存率の差1.5%、95%信頼区間-2.6%から5.5%)有意な差がなかった。同様に、ビンクリスチンを3サイクル以下使用した患者と、3サイクルを超えて使用した患者にも有意な差がなかった(5年無増悪生存率の差-1.3%、95%信頼区間-5.6%から3.1%、5年全生存率の際-0.1%、95%信頼区間-3.1%から2.9%)。

ブレオマイシンの使用期間が4サイクル以下のときと4サイクルを超えたとき、ビンクリスチンの使用期間が3サイクル以下のときと3サイクルを超えたときで、生存率には違いが見られませんでした

 

もしこの期間で中止しても結果に差がないとすれば、それ以上使用を続けなくてよいのではないか、という疑問が生まれます。BEACOPPがこの期間、この組み合わせの薬でなければならないのかどうか、改めて検証する余地があるのかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Impact of Bleomycin and Vincristine Dose Reductions in Patients With Advanced Hodgkin Lymphoma Treated With BEACOPP: An Analysis of the German Hodgkin Study Group HD12 and HD15 Trials.

J Clin Oncol. 2015 Jun 22 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26101245]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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