2015.07.19 | ニュース

65歳未満男性で盲腸の切除を行うと、2型糖尿病リスクが1.47倍に!

台湾での大規模解析から

from The British journal of surgery

65歳未満男性で盲腸の切除を行うと、2型糖尿病リスクが1.47倍に!の写真

最近の研究から、虫垂炎(盲腸)の治療として行われる虫垂切除手術の後に免疫機能の変化が生じる事が知られて来ました。また、2型糖尿病には免疫機能との関係が指摘されていますが、虫垂切除との関連は不明でした。今回台湾の研究グループが、虫垂切除を行った集団と行ってない集団を比較した結果、虫垂切除手術を行った65歳未満の男性では、高い頻度での2型糖尿病発症が観察されました。

◆Taiwan Longitudinal Health Insurance Database 2000を用いた後ろ向きコホート研究

著者らは台湾の大規模調査のデータを解析して、虫垂切除手術後3年間のうちに2型糖尿病を発症するリスクを、虫垂切除していない集団と比較しました。

 

◆虫垂切除手術後の2型糖尿病発症リスクは未手術に比べて1.45倍

以下の結果が得られました。

この研究では計31,512人の患者を対象にし、5,252人は虫垂切除(研究コホート)を行い26,260人が対照としてマッチされた。3年間の追跡調査期間内に714人(2.3%)が2型糖尿病を発症し、内訳は研究コホートの161人(3.1%)と対照コホートの553人(2.1%)であった。この研究コホートでの2型糖尿病発症に関し補正したハザード比(HR)は、1.45(95%信頼区間は1.22から1.74)であった。この増加リスクは男性(補正HRは1.47、95%信頼区間1.16から1.88)と 穿孔性虫垂炎患者(補正HRは2.28、95%信頼区間1.71から3.03)で顕著だった。また65歳未満の若い患者のみに適応出来た。

つまり虫垂切除をおこなった5,252人での2型糖尿病発症リスクは、虫垂切除をしていない集団と比べて高く、65歳未満の男性、穿孔性虫垂炎患者の場合は特に大きい増加が見られました。

著者らは、「虫垂切除後3年間での2型糖尿病発症リスクの増加が65歳未満で見られた。このリスクは男性で複雑性虫垂炎を発症した患者で高くなった」と結論づけています。

 

最近虫垂切除が腸内細菌の分布を変えるとの報告もあります。今回の結果も、虫垂切除手術によって免疫システムの変化が生じた事で、2型糖尿病が発症しやすくなった可能性が考えられます。ただし男女、年齢に差がある結果を考慮すると、虫垂炎が起こりやすい人の背景に、糖尿病にもつながる要因があった可能性も否定できず、より詳細な研究が待たれます。

執筆者

高田

参考文献

Risk of new-onset type II diabetes after appendicectomy.

Br J Surg. 2015 Jun 29.

[PMID: 26122401] http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/bjs.9875/abstract

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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