2015.06.23 | ニュース

画像検査「SPECT/CT」で変形性膝関節症の診断・治療の85%が変わった

人工膝関節全置換術の手術を受けた患者を対象

from European journal of nuclear medicine and molecular imaging

画像検査「SPECT/CT」で変形性膝関節症の診断・治療の85%が変わったの写真

変形性膝関節症や関節リウマチの治療として、人工膝関節全置換術(TKA)という手術があります。手術で歩きやすくなるなどの効果がありますが、手術のあと状態が悪くなって再手術が必要になることもあり、経過をよく見ることが重要です。最近使われるようになったSPECT/CTという画像検査でTKA後の人を検査した研究の中で、対象者の85%の診断がSPECT/CTによって変わったという結果が出ました。

◆SPECT/CTとは

SPECT/CTは、SPECTとCTという2種類の画像を一緒に撮影し、画像を重ねて表示することで、それぞれの画像の特徴が補いあって診断に役立つことを狙う検査方法です。

SPECTは骨の代謝を反映し、人工関節のゆるみなどがあると特徴的な変化が画像に現れますが、細かい構造を描写することができないため、ゆるみなどの異常が正確にどの場所にあるのかを見分けにくいことがあります。CTは細かい構造が描写できますが、異常があるかないかは骨や組織の形だけから見分けなければなりません。これらを重ねて見ると、SPECTに表れる異常がCTで見える構造のどこに対応するのかがわかります。

 

◆TKA後に痛みがある人の膝100例

研究班は、次の対象者について、SPECT/CTを撮影する前後で、症状や検査結果などから考えられた診断を記録して比較しました。

TKAを受けたあと持続的な膝の痛みがある患者で連続する84人(年齢は平均±標準偏差で70±11歳)の膝100例を前向き研究の対象とした。

TKAのあと膝に痛みがある人84人の膝100例(両膝が痛んでいた場合は2例と数える)を対照としました。

 

◆85%の診断変更、手術例の97%は的中

次の結果が得られました。

SPECT/CTは100例中85例(85%)で臨床的診断と最終的な治療を変えた。術中の所見により、術前SPECT/CTによる診断が33例中32例(97%)で確認された。TKAの緩み、膝蓋大腿関節症の進行は100%の膝で正しく診断された。

100例のうち85例で、SPECT/CTの前後で診断が変わっていました。100例のうち33例が再手術になり、そのうち32例(97%)で、SPECT/CTによる診断と、手術中に関節の中を目で見てわかった診断が一致しました

研究班は「TKA後の患者に対するSPECT/CTの診断的利益が証明された」と述べています。

 

85%の診断が変更されたという結果には驚かされます。ただし、このような診断能力がどのような場合にまで発揮されるかは別の課題になるかもしれません。また、SPECTもCTも放射線を使う技術なので、放射線被曝のリスクと、診断の役に立つ効果は比較して考える必要がありそうです。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Clinical value of SPECT/CT in the painful total knee arthroplasty (TKA): a prospective study in a consecutive series of 100 TKA.

Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2015 Jun 6. [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26044121]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る