2015.06.22 | ニュース

子どもの心臓を助ける補助人工心臓「EXCOR」とは?

アメリカ2007年から2010年の手術の報告

from Circulation

子どもの心臓を助ける補助人工心臓「EXCOR」とは?の写真

拡張型心筋症などで心臓移植を待つ子どもに、移植までの橋渡しとして、補助人工心臓という装置を埋め込むことで、血液を循環させる機能を補う治療法があります。日本で小児用の補助人工心臓として初めて承認されたEXCORは、欧米では1990年代から使われています。ここでは、アメリカで2007年から2010年に子どもの体にEXCORが埋め込まれた結果の報告を紹介します。

◆EXCORとは

EXCORは、体の中に手術で接続され、心臓を助けて血液を循環させるポンプです。心臓の代わりをするものではなく、機能が弱った心臓と接続されることで働きます。ポンプの容量を変えて、体の小さい子どもにも使うことができます。心臓移植を待つ間のおよそ1年間使うことができます。

EXCORは日本では2012年まで使われることがありませんでした。2015年1月には、大阪府で脳死と判定された女の子の遺族が、補助人工心臓が承認されていない状態の改善を訴えたことがニュースになりました。

 

◆2007年から2010年の埋め込み手術の結果

研究班は、次の対象者についての情報をまとめました。

この多施設前向きコホート研究では、2007年5月から2010年12月にわたって、47の施設で、ベルリン・ハト社の小児用心室補助装置であるEXCORを埋め込まれたすべての子どもが対象となった。

研究に参加した47の施設で2007年から2010年にEXCORを埋め込む手術を受けた子どもが対象となりました。

 

◆1年間の生存率は75%

手術の結果は次のようなものでした。

EXCORの補助を受けた204人の子どものうちで、補助の期間の中央値は40日(レンジ1日から435日)だった。12か月での生存率は75%だった。64%は心臓移植に至り、6%は回復し、5%はEXCORを埋め込まれたまま生存していた。

神経学的機能不全は29%に起こり、これが最大の死因だった。

対象者204人がEXCORによって心臓機能の補助を受けていた期間は1日から435日で、半数が40日以上でした。75%が手術後1年間生存し、64%が手術後1年以内に心臓移植を受けました。1年以内に死亡した子どもの死因で最も多かったのは神経系へのダメージでした。

 

補助人工心臓と、それに続く心臓移植は、重い心臓の病気があり、ほかの治療ができない人にとって最後の頼みの綱になることがあります。少しでも多くの場面で、治療ができない状態が解消されることが望まれます。

【訂正6/28】「埋め込む」という表現に誤解を招く恐れがあると思われたため、該当箇所を「接続される」「使う」と訂正しました。EXCORのポンプの部分は体外に装着されます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Berlin Heart EXCOR pediatric ventricular assist device for bridge to heart transplantation in US children.

Circulation. 2013 Apr 23

 

[PMID: 23538380]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る