2015.06.11 | ニュース

偏頭痛と脳梗塞は親戚!?

約20万人のゲノムデータを解析
from Neurology
偏頭痛と脳梗塞は親戚!?の写真
(C) olgavolodina- Fotolia.com

偏頭痛は、頭の片側にズキズキするような頭痛が起きる病気で、日本人の10%程度が生涯に一度は経験すると言われるほど多い病気です。また、脳梗塞といえば、日本人の死因の第3位である脳卒中の8割程度を占める病気です。今回の研究では、これらの日本人と深く関係のある2つの疾患に、遺伝的共通点があることがわかりました。

◆偏頭痛や脳梗塞の患者を含めた約20万人のゲノムデータを解析

筆者らは以下の方法で研究を行いました。

偏頭痛に関するゲノムデータ(23,285人の患者と95,425人の一般人口)と脳梗塞に関するゲノムデータ(12,389人の患者と62,004人の一般人口)のメタアナリシスに対して、4つの違った方法を用いて解析した。まず、それぞれの疾患に対して、関連があるとされる遺伝子座を調べて重なりの候補を調べた。次にポリジーンスコアを用いて全体として両疾患群での遺伝子の重なりを調べ、さらにそれぞれの疾患のサブタイプに遺伝的関連性が有るかを調べた。

偏頭痛の患者23,285人、脳梗塞の患者12,389人、一般人口157,429人、合計で20万人のデータに対して、偏頭痛脳梗塞の遺伝的共通点があるかどうかを解析しました。

 

◆偏頭痛と脳梗塞は遺伝的共通点を持つ

以下のような結果になりました。

偏頭痛脳梗塞には上記の4つの方法いずれにおいても十分な遺伝的共通点を見つけた。前兆のない偏頭痛は、前兆のある偏頭痛と比較して、より強い脳梗塞およびそのサブタイプとの遺伝的共通点を認めた。 偏頭痛脳梗塞にはいずれの手法を用いても遺伝的共通点があり、特に前兆のない偏頭痛脳梗塞と強い遺伝的相関を示しました。

一般的に偏頭痛の典型的な症状として「前兆」というものがあります。目の前が光ってから頭痛が始まる(閃輝暗点)といったものが特に典型的で、今回の研究では、こういった前兆の認められない偏頭痛脳梗塞に、より強い遺伝的な相関がみられました

 

この研究だけで結論付けることはなかなか難しいですが、遺伝的背景の面から考えると、前兆のない偏頭痛脳梗塞は一部が共通したメカニズムで発症している可能性が考えられます。偏頭痛は、疾患頻度が高いにもかかわらず、正確なメカニズムはまだ解明されておらず、この論文をきっかけにさらなる研究が進むことを期待しています。

執筆者

石田 渉

参考文献

Shared genetic basis for migraine and ischemic stroke: A genome-wide analysis of common variants.

Neurology. 2015 May 26

[PMID: 25934857 ] http://www.neurology.org/content/84/21/2132.short

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。