◆甲状腺未分化がんの細胞を観察
研究班は甲状腺未分化がんの細胞と、正常な甲状腺の細胞をそれぞれ遺伝子解析し、違いを調べました。
また、甲状腺未分化がんの細胞の中でSCD1を遺伝子操作によって作れないようにしたり、SCD1の働きを抑える物質を与えたときの変化を観察しました。
◆SCD1を抑えるとがん細胞が死んだ
甲状腺未分化がんの細胞では、SCD1が増えていることが確かめられました。
SCD1を作れないようにすると甲状腺未分化がんの細胞に細胞死が誘発されました。さらに、SCD1が関与していると考えられた細胞内の反応を「プロテアソーム阻害薬」という種類の抗がん剤で抑えたところ、甲状腺未分化がんの細胞の増殖がより強く抑えられ、より多くの細胞が死にました。
研究班は「これらの発見はSCD1が甲状腺未分化がんの患者の治療において腫瘍特異的な治療標的となること、臨床のセッティングにおいてさらに精査するべきであることを実証する」と述べています。
この研究で見られたように、実際の患者の体内でもがん細胞を倒すことがもしできれば、画期的な治療法の誕生となるかもしれません。治療が非常に難しい甲状腺未分化がんに立ち向かえるかどうか、今後の研究に期待がかかります。
執筆者
Aberrant Lipid Metabolism in Anaplastic Thyroid Carcinoma Reveals Stearoyl CoA Desaturase 1 as a Novel Therapeutic Target.
J Clin Endocrinol Metab. 2015 May
[PMID: 25675381]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。