2017.10.21 | ニュース

卵巣のホルモン検査「AMH」は妊娠率と関係ない?

981人の統計から

from JAMA

卵巣のホルモン検査「AMH」は妊娠率と関係ない?の写真

抗ミュラー管ホルモン(AMH)は卵巣から分泌されるホルモンで、卵巣の状態を反映すると考えられます。しかしアメリカで行われた調査では、AMHの測定値と妊娠率に相関がない結果となりました。

不妊症がない女性のAMHと妊娠率

アメリカの研究班が、不妊症のない女性でAMHなどの検査値と妊娠率の関係を調べ、結果を医学誌『JAMA』に報告しました。

この研究は、ノースカロライナ州の一地域で参加者を募集し、参加者の状態を追跡調査する方法で行われました。30歳から44歳で、不妊症を診断されたことがなく、妊娠しようとしはじめてから3か月以内の女性が対象となりました。

研究班は月経周期に合わせて血液検査と尿検査を行いました。以下の項目を測定しました。

  • 血液検査
    • AMH
    • 卵胞刺激ホルモン(FSH)
    • インヒビンB
  • 尿検査
    • FSH

対象者が妊娠したかどうかを追跡して、検査値との関連を検討しました。妊娠率に影響すると思われた、年齢や喫煙の有無などの要素は計算上調整しました。

 

AMHと妊娠率に関連なし

750人の女性のデータを解析しました。平均年齢は33.3歳でした。

月経周期6回後までに妊娠した割合は、AMHが基準値内(0.7-8.4ng/ml)の人で62%、AMHが低値(0.7ng/ml未満)の人で65%であり、AMHが低くても統計的に確認できる差がありませんでした

月経周期12回後までの妊娠で比較すると、AMHが基準値内の人で75%、AMHが低い人で84%であり、統計的に確認できる差がありませんでした。

血液検査のFSHとインヒビンB、尿検査のFSHについても、検査値によって統計的に確認できる妊娠率の差がありませんでした。

研究班は結論として「これらの結果から、尿または血液のFSHまたはAMHの検査をこのような背景の女性の自然妊娠能力を判定するために使うことは支持されない」と述べています。

 

妊娠のために何を調べるか?

AMHやFSHの検査と妊娠率に関連がなかったとする報告を紹介しました。

日本産科婦人科学会による不妊の定義は「生殖年齢の男女が妊娠を希望し,ある一定期間,避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、妊娠の成立をみない場合を不妊という.その一定期間については1年というのが一般的である.なお,妊娠のために医学的介入が必要な場合は期間を問わない.」とされています。つまり検査ではなく妊娠しないことそのものを不妊と呼びます。

不妊に悩む人は大勢いますが、原因は人それぞれです。一律に数字で表せるようなものではありません。半数ほどで男性に原因があるとされます。特定の原因を見分けるためにそれぞれ対応する検査があります。

不妊ではないと思う人が検査をするなら、検査をする前に目的を考えておくのも大事なことではないでしょうか。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Association Between Biomarkers of Ovarian Reserve and Infertility Among Older Women of Reproductive Age.

JAMA. 2017 Oct 10.

[PMID: 29049585]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る