2017.10.15 | ニュース

男性避妊手術で前立腺がんに?53件の研究報告を調査

文献の調査から
from JAMA internal medicine
男性避妊手術で前立腺がんに?53件の研究報告を調査の写真
(c) g-stockstudio - iStock

精管切除は男性の避妊法のひとつです。精管切除により前立腺がんが増えるのではないかという観点の研究が多く行われています。これまでに報告されたデータの調査が行われました。

精管切除と前立腺がんの関連

アメリカとカナダの研究班が、精管切除と前立腺がんの関係に対してなされた研究データの調査を行い、専門誌『JAMA Internal Medicine』に報告しました。

この研究は、文献を集める方法により、これまでに精管切除と前立腺がんの関係として報告されているデータを評価してまとめたものです。

調査により53件の研究が見つかりました。

精管切除をしても性交をする機能は残りますが、子供を作ることは以後できなくなります。元に戻す手術方法もありますが確実ではありません。

このように明らかに重大な作用がある治療については、使うか使わないかをランダムに分ける方法の研究(ランダム化対照試験)が倫理的に困難です。検証のためには、治療選択には研究者が介入せず、データを解析するだけの方法(観察研究)がしばしば使われます。

観察研究では、データの偏り(バイアス)やほかの要因の影響(交絡)が結果を左右しやすく、ここで言うと精管切除が原因ではないのに一見前立腺がんが増えているように見える現象が起こっていないかを慎重に検討する必要があります。

 

前立腺がん全体で1.05倍、高グレード前立腺がんには差がない

データに偏りがある可能性が小さいと見られた7件の研究のデータを統合すると、精管切除をした人で研究期間に前立腺がんはわずかに多く、1.05倍の人数が診断されていました。

高グレード前立腺がんに限ると、精管切除の有無によって統計的に確認できる違いはありませんでした。進行前立腺がん、死因となった前立腺がんに限っても同様に、精管切除による違いは統計的に確認できませんでした。

研究班は結論として「この関連が因果関係である可能性は小さく、これによって精管切除の使用を長期避妊の選択肢から排除するべきではない」と述べています。

 

精管切除は安全?

精管切除と前立腺がんの関係の研究を紹介しました。

前立腺がんは高齢男性では非常に多いですが、進行が非常に遅く寿命に影響しないものも多く、前立腺がんが診断されてもすぐには治療せず監視療法とする場合があります。

研究班は精管切除が前立腺がんの原因にはなっていないことを主張していますが、仮に因果関係があっても5%増加する程度ならば、実質的に無害な前立腺がんが含まれていることでさらに影響は小さいと言えるかもしれません。そして進行前立腺がんなどに的を絞れば統計的に違いはないという結果でした。

どんな治療でも害になるリスクがゼロになることはありません。精管切除は避妊の目的については非常に効果の高い方法です。もちろん「リスクが不確かでも念のため避ける」という考え方はあるでしょうし、避妊方法として精管切除に魅力を感じない人もいるでしょう。しかし精管切除を使いたい人にとって、前立腺がんを理由に禁止されるほどの強い関係はないと言ってよいのではないでしょうか。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

The Association Between Vasectomy and Prostate Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis.

JAMA Intern Med. 2017 Sep 1.

[PMID: 28715534]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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