2017.09.06 | ニュース

抗がん剤のスケジュールほか、効能など追加の5製品はどんな薬?

添付文書を中心に
抗がん剤のスケジュールほか、効能など追加の5製品はどんな薬?の写真
(c) Smitt - iStock

8月25日に、医療用医薬品8製品について、新効能などの追加が承認されました。そのうちアブラキサン、ビムパット、献血ノンスロン、リュープリン、オビソートの新効能などを紹介します。

アブラキサンとは?

アブラキサン®は抗がん剤です。一般名は「パクリタキセル注射剤(アルブミン懸濁型)」とされますが、nab-パクリタキセル(ナブパクリタキセル)とも呼ばれます。

パクリタキセルは抗がん剤として多くの用途がある薬剤です。タキソール®などのパクリタキセル製剤が広く使われていますが、普通のパクリタキセル製剤には添加物や添付溶解液にエタノールが含まれ、アルコール過敏症の体質がある人には注意が必要です。nab-パクリタキセルはパクリタキセルを加工してエタノール(及びヒマシ油)を含まないようにした製剤です。人間の血液から取り出したアルブミンを添加物として含みます。

新たに胃がんに対する用法が追加されました。以前は胃がんに対しては3週間ごとの点滴とされていましたが、週1回の点滴を3週繰り返し、4週目は休むという方法も選択肢に加えられました。

臨床試験では、ほかのパクリタキセル製剤と比較した結果、3週間ごとのnab-パクリタキセルを使用したグループでは生存期間が統計的に劣っていないことを確かめられませんでしたが、週1回・4週目は休むnab-パクリタキセルのグループでは生存期間が統計的に劣らない結果でした。

 

ビムパットとは?

ラコサミド(商品名ビムパット®)は抗てんかん薬です。従来「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作二次性全般化発作を含む)に対する抗てんかん薬との併用療法」が効能・効果とされていましたが、「てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)」に変更され、ほかの抗てんかん薬を同時に使わない単剤治療が効能・効果に含まれるようになりました。

臨床試験では、ラコサミドとカルバマゼピン徐放錠を比較して、評価時点で6か月発作が消失していた参加者の割合がラコサミドでは89.8%、カルバマゼピン徐放錠では91.1%となり、ラコサミドがカルバマゼピン徐放錠に劣らない結果と判定されました。

ただし、カルバマゼピン徐放錠は日本では承認されていません。

 

ノンスロンとは?

献血ノンスロン®(一般名乾燥濃縮人アンチトロンビンIII)は、血の塊ができる血栓症の治療に使います。新しく「アンチトロンビン III 低下を伴う門脈血栓症」の効能・効果が追加されました。

アンチトロンビンIIIはもともと体内で作られている物質です。血管の中で血の塊ができないようにする働きがあります。アンチトロンビンIIIが何らかの原因で少なくなると血栓ができてしまうことがあります。献血ノンスロンは人間の血液をもとに作られたアンチトロンビンIII製剤です。

臨床試験では、アンチトロンビンIIIを使用した対象者で血栓が縮小または消失した人は36人中20人でした。対して偽薬を使用した人では36人中7人でした。

 

リュープリンとは?

リュープロレリン酢酸塩(商品名リュープリン®)は、男性ホルモンや女性ホルモンを減らす薬です。GnRHアゴニストに分類されます。従来乳がん前立腺がんなどの治療に使われてきました。新たに「脊髄性筋萎縮症の進行抑制」の効能・効果が追加されました。12週に1回の注射として使います。

脊髄性筋萎縮症は、筋力低下や筋肉の萎縮などを特徴とし、手足や飲み込むための筋肉に力が入らなくなる病気です。遺伝により男性にだけ発症し、長年のうちに車椅子が必要なほどになることが多いです。男性ホルモンが病態に関係していると考えられています。

臨床試験では、48週の試験期間に、リュープロレリンを使用するグループと、偽薬を使用するグループが比較されました。48週後または薬剤中止時に、試験開始時と比べて、飲み込む能力のテストの成績(咽頭部バリウム残留率)の変化によって効果が判定されました。次の結果がありました。

解析1では群間差は有意だったが(2標本t検定:p=0.049)、本解析のみベースライン値の分布に群間で偏りがみられたため調整解析した結果、群間差は有意でなかった。解析2では群間差は有意でなく(2標本t検定:p=0.331)、解析3(開封後の追加解析)では群間差は有意であった(2標本t検定:p=0.063)。

主解析とされた解析方法で、リュープロレリンと偽薬の間に統計的な違いが確認できませんでした。解析方法を変えた場合に違いが見られました。

主な副作用として、ほてり、便秘、体重増加、関節痛などが報告されました。

なおリュープリンには用量の違ういくつかの製品がありますが、効能・効果を追加されたのは「リュープリンSR注射用キット11.25mg」だけです。

 

オビソートとは?

アセチルコリン塩化物(商品名オビソート®)は、神経伝達物質をもとにした薬剤です。

新たに「冠動脈造影検査時の冠攣縮薬物誘発試験における冠攣縮の誘発」の効能・効果が追加されました。冠動脈造影検査は心臓の検査です。狭心症の一種である冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)の疑いがある場合にアセチルコリンを使います。すでに国内外で広く使用され有効性を認められていることから公知申請されました。

 

まとめ

2017年8月25日に新効能などを承認された8製品のうち5製品を紹介しました。ほかの3製品については別の記事で紹介しています

医薬品の効能・効果などはつねに見直されています。有効と思われた使いかたが承認され、添付文書にも記載されていくことで、保険診療としてできることの幅が広がります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献



アブラキサン点滴静注用 100mg 添付文書, リュープリンSR注射用キット11.25mg 添付文書, オビソート注射用0.1g 添付文書, 献血ノンスロン500注射用/ 献血ノンスロン1500注射用 添付文書, ビムパット錠50mg/ビムパット錠100mg

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。