2017.03.07 | ニュース

NK細胞ががん化、日本の358人の患者から治療後の生存率を推計

全国31施設による統計

from Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology

NK細胞ががん化、日本の358人の患者から治療後の生存率を推計の写真

NK細胞はリンパ球の一種です。NK細胞ががん化した悪性リンパ腫の一種として「節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型」(ENKL)があります。日本のENKL患者が実際に受けている治療とその結果の調査が行われました。

節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型(ENKL)は、血液由来のがん無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがある悪性腫瘍無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがある)の一種です。血液に含まれているNK細胞免疫を担うリンパ球(白血球の一種)のうちの一つ。NK細胞の他には、B細胞とT細胞があるまたはT細胞ががん化したものです。鼻のまわりに見つかる場合が多いことから「鼻型」という名前があります。

NK細胞、T細胞はいずれもリンパ球血液中にある白血球の一種で、免疫の役割を担っている。B細胞、T細胞、NK細胞に分かれ、それぞれ働き方が異なると呼ばれる細胞の一種です。リンパ球は免疫病原体に対する体の防御システム。何かのきっかけで、免疫が過剰反応している状態がアレルギーで、免疫が自分自身の体を攻撃してしまうのが自己免疫疾患機能を担当していますが、がん化して悪性リンパ腫となる場合もあります。ENKLは悪性リンパ腫の一種です。

ENKLの進行度は大きく限局期と進行期の2段階に分けられます。進行度に応じて適した治療が異なると考えられています。

 

日本各地の研究者が共同でENKL患者の統計を取り、専門誌『Journal of Clinical Oncology』に報告しました。

この報告では、研究に参加した31か所の施設で2000年から2013年の間に診断されたENKL患者358人の記録をもとに、日本でENKLに対して実際に行われている主な治療とその結果を調べています。

 

調査から次の結果が得られました。

患者の年齢の中央値は58歳、257人(72%)が限局病変病気が原因となって体に生じた、あるいは変化が起きた、その特定の部位のことを持っていた。初期治療として最も多かったのは、限局ENKLに対しては放射線療法主にがんに対して用いられる、放射線を用いた治療法とデキサメタゾン、エトポシド、イホスファミド、カルボプラチンの併用(RT-DeVIC医師からの説明を受けながら、患者自身が治療や検査の方針を自ら選んでいく手順のこと)(66%)であり、進行ENKLに対してはL-アスパラギナーゼを含む化学療法がんの治療の一種で、抗がん剤を使った治療の総称(30%)だった。中央値5.8年のフォローアップの間に、5年全生存率は限局ENKLで68%、進行ENKLで24%だった。

中央値5.6年のフォローアップの間に、臨床実践においてRT-DeVIC治療を受けた患者150人の5年時点の全生存率は72%(95%信頼区間63%-78%)、無増悪生存期間は61%(95%信頼区間52%-69%)だった。

半数の患者が58歳以下でした。対象者のうち72%が限局期で診断されていました。

限局期の患者全体で、5年後の生存率は68%でした。限局期の患者は66%が、放射線療法と化学療法(抗がん剤悪性腫瘍(がん)に効果を発揮する薬剤。ただし、がん以外の良性疾患に用いられることもある)を同時に行う「RT-DeVIC」という治療を受けていました。RT-DeVICの治療を受けた人では5年生存率診断、治療開始から5年経過後に生存している患者の割合。命に関わるがんなどの病気で用いられることが多い数値が72%でした。

進行期の患者は30%がL-アスパラギナーゼを含む化学療法を受けていました。進行期の患者全体で、5年生存率は24%でした。

 

「節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型」(ENKL)の治療後の生存率などの報告を紹介しました。

ENKLは悪性リンパ腫のうち数%程度を占めるとされ、人数としてはまれながんです。限局期であれば5年生存率が70%近く、がん全体の中では比較的長期生存のチャンスも大きいと言えます。

進行期でも治療法はあります。5年生存率24%は決して絶望的な水準とは言えません。

こうした統計情報は、早期発見のための戦略や新薬の効果を考えるための基礎となります。

なお、メディアではよくNK細胞が「がんと戦う」と説明されますが、NK細胞だけですべてを説明することはできません。「NK細胞ががんに対して抑制的に働く」ということと、「NK細胞が働けばがんにならない」ということはまったく違います。NK細胞自身ががんになることもあります。

ENKLで苦しんでいる人が、この研究だけでも数百人見つかっています。今後の研究にも基本的な統計情報を蓄え、より効果的な治療を目指すことが待ち望まれています。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Treatments and Outcomes of Patients With Extranodal Natural Killer/T-Cell Lymphoma Diagnosed Between 2000 and 2013: A Cooperative Study in Japan.

J Clin Oncol. 2017 Jan.

[PMID: 28034070]

*本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。 [執筆者一覧]