夕方にまぶたが下がる「重症筋無力症」、手術でよくなる人はもっといる?

まぶたが下がる、物が二重に見えるなどの症状を現す重症筋無力症は、一部の人で胸腺腫が原因とされ、胸腺の手術で治療されます。胸腺腫がない人も手術をした結果、薬だけの治療よりも症状が軽くなったことが報告されました。
胸腺腫のない重症筋無力症患者が手術をする研究
国際的な研究の結果が、医学誌『New England Journal of Medicine』に報告されました。
この研究は、胸腺腫がない重症筋無力症患者を対象に、胸腺を取り除く手術をすることで、症状などの改善があるかを調べています。
重症筋無力症とは?
重症筋無力症(Myasthenia Gravis)は、全身の筋力が弱くなる病気です。特に症状が現れやすいのが目の筋肉で、
「重症」という名前がついていますが、わずかな症状だけで発見される人もいます。
重症筋無力症と胸腺の関係とは?
重症筋無力症の原因は
胸腺は胸骨と肋骨で囲まれた場所にあります。乳房のことではありません。
重症筋無力症の患者の一部は、胸腺にできる胸腺腫が原因と考えられています。重症筋無力症の患者に胸腺腫が見つかった場合、胸腺を取り除く手術(胸腺摘出術)が標準的な治療です。
ほかの治療法として、
胸腺腫がなくても手術はしたほうがいい?
重症筋無力症の治療として、明らかな胸腺腫がなくても胸腺摘出術を行う場合があります。この場合に手術が有益と言えるかどうかは長年議論されてきました。
ここで紹介する研究は、実際に胸腺腫がない人に手術をすることで、重症筋無力症に対する効果を調べています。
胸腺腫がない重症筋無力症の患者126人が対象となり、ランダムに2グループに分けられました。
- 胸腺摘出術をしたうえ、
ステロイド薬 で治療する - 胸腺摘出術をしないで、ステロイド薬で治療する
手術したほうが症状が改善
治療開始から3年間を比較して、次の結果が得られました。
胸腺摘出術を受けた患者は、プレドニゾン単独治療を受けた患者よりも、3年の期間にわたる定量的重症筋無力症スコアの時間加重平均が低かった(6.15 vs 8.99、P<0.001)。胸腺摘出術群の患者はまた、2日ごとのプレドニゾンの平均必要量が少なかった(44mg vs 60mg、P<0.001)。
手術をしたグループのほうが、診察で筋力などを測る重症度のスコアが良くなっていました。また、ステロイド薬の使用量も少なくなっていました。
手術によって起こる問題(
治療関連合併症の起こった患者の数は群間で
有意 に差がなく(P=0.73)、むしろ胸腺摘出術群の患者は免疫抑制療法に関連する治療関連症状が少なく(P<0.001)、症状に関連するストレスのレベルが低かった(P=0.003)。
手術をしたグループでも、しなかったグループでも、治療が原因の合併症が現れた人の数に違いが見られませんでした。
まとめ
これまで手術をするべきかどうか確かではなかった人に対して、手術で効果が期待できるという証拠が示されました。
重症筋無力症の治療について現段階では大まかに次のことが言えます。
ここで報告された結果は、最後の「胸腺腫がない人」に対して「手術したほうがよい」と考える根拠として今後参照されるかもしれません。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。