2016.10.26 | ニュース

夕方にまぶたが下がる「重症筋無力症」、手術でよくなる人はもっといる?

126人が参加した臨床試験
from The New England journal of medicine
夕方にまぶたが下がる「重症筋無力症」、手術でよくなる人はもっといる?の写真
(C) nebari - Fotolia.com

まぶたが下がる、物が二重に見えるなどの症状を現す重症筋無力症は、一部の人で胸腺腫が原因とされ、胸腺の手術で治療されます。胸腺腫がない人も手術をした結果、薬だけの治療よりも症状が軽くなったことが報告されました。

国際的な研究の結果が、医学誌『New England Journal of Medicine』に報告されました。

この研究は、胸腺腫がない重症筋無力症患者を対象に、胸腺を取り除く手術をすることで、症状などの改善があるかを調べています。

 

重症筋無力症(Myasthenia Gravis)は、全身の筋力が弱くなる病気です。特に症状が現れやすいのが目の筋肉で、まぶたが下がる(眼瞼下垂)、両目がうまく動かないため物が二重に見える(複視)などの症状があります。症状は朝に軽く夕方に重くなる場合があります。

「重症」という名前がついていますが、わずかな症状だけで発見される人もいます。

 

重症筋無力症の原因は免疫の異常です。特に、免疫に深く関わっている胸腺という臓器が関係しています。

画像:前縦隔の解剖図。胸腺は胸骨の後ろの心臓より高い場所にある。

胸腺は胸骨と肋骨で囲まれた場所にあります。乳房のことではありません。

重症筋無力症の患者の一部は、胸腺にできる胸腺腫が原因と考えられています。重症筋無力症の患者に胸腺腫が見つかった場合、胸腺を取り除く手術(胸腺摘出術)が標準的な治療です。

ほかの治療法として、ステロイド内服薬などで異常な免疫を抑える方法があります。

 

重症筋無力症の治療として、明らかな胸腺腫がなくても胸腺摘出術を行う場合があります。この場合に手術が有益と言えるかどうかは長年議論されてきました。

ここで紹介する研究は、実際に胸腺腫がない人に手術をすることで、重症筋無力症に対する効果を調べています。

胸腺腫がない重症筋無力症の患者126人が対象となり、ランダムに2グループに分けられました。

  • 胸腺摘出術をしたうえ、ステロイド薬で治療する
  • 胸腺摘出術をしないで、ステロイド薬で治療する

 

治療開始から3年間を比較して、次の結果が得られました。

胸腺摘出術を受けた患者は、プレドニゾン単独治療を受けた患者よりも、3年の期間にわたる定量的重症筋無力症スコアの時間加重平均が低かった(6.15 vs 8.99、P<0.001)。胸腺摘出術群の患者はまた、2日ごとのプレドニゾンの平均必要量が少なかった(44mg vs 60mg、P<0.001)。

手術をしたグループのほうが、診察で筋力などを測る重症度のスコアが良くなっていました。また、ステロイド薬の使用量も少なくなっていました。

手術によって起こる問題(合併症)について次の結果がありました。

治療関連合併症の起こった患者の数は群間で有意に差がなく(P=0.73)、むしろ胸腺摘出術群の患者は免疫抑制療法に関連する治療関連症状が少なく(P<0.001)、症状に関連するストレスのレベルが低かった(P=0.003)。

手術をしたグループでも、しなかったグループでも、治療が原因の合併症が現れた人の数に違いが見られませんでした。

 

これまで手術をするべきかどうか確かではなかった人に対して、手術で効果が期待できるという証拠が示されました。

重症筋無力症の治療について現段階では大まかに次のことが言えます。

  • 薬である程度の効果が期待できる。
  • 胸腺腫がある人は手術したほうがよい。
  • 胸腺腫がない人は手術するべきか未確定。

ここで報告された結果は、最後の「胸腺腫がない人」に対して「手術したほうがよい」と考える根拠として今後参照されるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Randomized Trial of Thymectomy in Myasthenia Gravis.

N Engl J Med. 2016 Aug 11.

[PMID: 27509100]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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