2016.05.28 | ニュース

ピロリ菌除菌で精神症状が?治療中に症状が発生する頻度の研究

治療を受けた1,824人のデータから

from JAMA internal medicine

ピロリ菌除菌で精神症状が?治療中に症状が発生する頻度の研究の写真

ピロリ菌は胃潰瘍などさまざまな病気の原因になります。除菌すると改善するのですが、除菌による副作用もあります。抗生物質のクラリスロマイシンを使った治療で精神神経症状が出るのではないかという観点から検討が行われました。

◆ピロリ菌除菌と精神神経症状の関係は?

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌主に胃の中に存在する細菌で、胃潰瘍、胃がん、血液疾患などの原因となる菌)は胃潰瘍のほか十二指腸潰瘍萎縮性胃炎胃がん、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病などさまざまな病気の原因になります。複数の抗菌薬細菌感染症に対して用いられ、細菌の増殖を防ぐ、もしくは殺菌する薬。ウイルスや真菌(かび)には効果がない抗生物質微生物が産生する細胞の増殖や機能を阻害する物質。抗菌薬・抗ウィルス薬・抗がん薬を含む、抗生剤)を組み合わせた治療で除菌ができます。クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬は、ピロリ菌の除菌に使われる代表的な薬です。

ここで紹介する研究は、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の除菌治療として、クラリスロマイシンを使った治療が行われたとき、精神神経症状が現れる頻度を検討しました。

除菌治療を受けたことがあり、かつ精神神経症状の経験もある人1,824人のデータから、治療と精神神経症状に統計的な関連があるかが解析されました。

 

◆治療開始後14日間のリスク増

解析から次の結果が得られました。

治療開始から14日間で、ベースライン(16,665人年に1,766件)に比べて発生率比が4.12(72人年に35件、95%信頼区間2.94-5.76)に増加したことが観察されたが、治療開始後15日以降(82人年に9件、発生率比0.95、95%信頼区間0.49-1.83)および治療前の14日間(72人年に14件、発生率比1.63、95%信頼区間0.96-2.77)には増加が見られなかった。

除菌治療より前に比べて、治療開始から14日間の治療中にあたる期間は、精神神経症状が現れる頻度が高くなっていました

研究班は結論として「この研究から、クラリスロマイシンを含むヘリコバクター・ピロリ治療と関連する精神神経症状イベントの短期的なリスク増加の根拠が示される」と述べています。

 

除菌治療を受けていない人との比較や、精神神経症状の経験がない人との比較がなされていないなどの点で、この研究だけでわかることには限界があります。クラリスロマイシンの副作用と言えるかどうかは、この結果だけではわかりません。

たとえば、ピロリ菌除菌にはクラリスロマイシンと同時にメトロニダゾールという薬も使うことがあります。メトロニダゾールにはごくまれにメトロニダゾール脳症という状態を起こす副作用があり、クラリスロマイシンと同時に使うことでメトロニダゾール脳症の頻度が少し上がるとも考えられます。このような可能性にも考える価値はあるかもしれません。

一般に、薬の治療で未知の副作用が現れる可能性にはつねにある程度の注意が必要とされます。ピロリ菌除菌にどのようなリスクがあり、どうすれば対処できるのかは、今後検証されるべきテーマになっていくかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Association Between Acute Neuropsychiatric Events and Helicobacter pylori Therapy Containing Clarithromycin.

JAMA Intern Med. 2016 May 2. [Epub ahead of print]

[PMID: 27136661]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。