肥満治療薬ベロラニブの効果と副作用は?
日本肥満学会は、BMI(体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))25以上を肥満と定めています。国内の肥満者は、男性で28.6%、女性で20.3%に上り(平成25年度)、食事制限や運動とともに、薬の役割に対する期待が高まっています。
◆用量が異なるベロラニブと対照群の4群にランダムに振り分け
この研究では、肥満を抱える147人(主として白人女性)が対象となりました。0.6mgのベロラニブ治療を行う群、1.2mgのベロラニブ治療を行う群、2.4mgのベロラニブ治療を行う群、対照群(有効成分を含まないプラセボを使う群)の4群にランダムに分け、皮下注射による投与を行いました。試験期間は12週間、内容が観察者にも患者にも分からないよう二重盲検法を用い、ダイエットや運動に関するアドバイスは行われませんでした。
◆体重減少に加え、心血管疾病リスクも減少
以下の結果が得られました。
体重変動は、ベロラニブ(用量0.6mg)で-5.5±0.5kg、ベロラニブ(用量1.2mg)で-6.9±0.6kg、ベロラニブ(用量2.4mg)で-10.9±1.1kgに対し、対照群では-0.4±0.4kgであった(いずれも対照群と比べてP<0.001)。またベロラニブ投与により、体重減少と共に、腹囲および脂肪量の減少、脂質・髙
感度 CRP ・血圧の改善が見られた。ベロラニブ投与群で、睡眠障害および胃腸の有害事象が対照群より多く報告された。おおかたは軽度から中等度かつ一時的で、用量依存性が認められ、ベロラニブの用量が多い群でより多くの参加者が早期に試験から離脱することにつながった。
今回の試験では、ベロラニブを12週間用いたことにより体重の減少が見られた他、血圧低下などについても効果が現れました。ベロラニブによる副作用の可能性があることとして、睡眠障害および胃腸障害が確認されました。
肥満は糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病をもたらし、
今回の試験結果は、肥満治療薬ベロラニブが、減量効果を有するだけでなく,生活習慣病の予防や改善につながりうることを示唆するものといえます。
ただし、この論文が発表されたあと、ベロラニブを使ったほかの研究で、プラダー・ウィリー症候群に対してベロラニブによる治療を受けていた患者に死者が出ています。死因にベロラニブが関係しているかどうかは結論が出ていません。
ここで紹介した研究では深刻な副作用は生じていませんが、安全性には今後も注意が必要です。
執筆者
Efficacy and safety of beloranib for weight loss in obese adults: a randomized controlled trial.
Diabetes Obes Metab. 2015 Jun.
[PMID: 25732625]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。