2015.12.22 | ニュース

乳がんと診断されたら、治療を考える時間はあるのか?

2件の研究データから
from JAMA oncology
乳がんと診断されたら、治療を考える時間はあるのか?の写真
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がんは多くの場合、早く診断して早く治療することが良い結果に結び付くと考えられていますが、どの程度の影響があるのでしょうか。アメリカのがん登録データベースを使った検証が行われました。

◆手術を受けた人の死亡率は?

研究班は、アメリカの2種類のがん登録データベースを参照しました。それらのうち、転移がなく、周りに広がっていく性質が確かめられた乳がんの患者で、最初の治療として手術を受けた人を対象として、診断から手術までの期間の長さと、その後の死亡率の関連を調べました。

診断から手術までの期間は30日以下、31日から60日、61日から90日、91日から120日、121日から180日の5段階に区切り、死亡率は死因を乳がんに限らず、ほかの死因による死亡も含めて数えました。

 

◆1段階で死亡率1割程度増

解析から次の結果が得られました。

診断から手術までの間隔が増加するとき、全生存率は患者全体(ハザード比1.09、95%信頼区間1.06-1.13、P<0.001)、ステージIの患者(ハザード比1.13、95%信頼区間1.08-1.18、P<0.001)、ステージIIの患者(ハザード比1.06、95%信頼区間1.01-1.11、P=0.01)でより低かった。

人口統計学的要因、腫瘍、治療で調整したうえで、間隔が増加するごとに全死因死亡率ハザード比は1.10(95%信頼区間1.07-1.13、P<0.001)であり、ステージI(ハザード比1.16、95%信頼区間1.12-1.21、P<0.001)とステージII(ハザード比1.09、95%信頼区間1.05-1.13、P<0.001)でだけ有意だった。

2種類のデータベースのどちらを解析しても、診断から手術までの期間が1段階長くなるごとに、死亡率が数%から10%程度大きくなると見られました。特に、がんが比較的早い段階のステージIまたはステージIIのときに、この関連が見られました。

研究班は「手術前の精査や乳房再建のような治療選択の検討のために時間が必要とはいえ、生存の見込みを大きくするために、可能ならば手術までの時間を短くする努力はなされるべきである」と結論しています。

 

手術はするなら早いほうが良いのかもしれません。ただし、この研究は、手術をするか、抗がん剤放射線療法を使うかによる違いを調べたものではありません。ここで報告されたようなデータが、より実際に即した検討のためにも役に立つかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Time to Surgery and Breast Cancer Survival in the United States.

JAMA Oncol. 2015 Dec 10 [Epub ahead of print]

[PMID: 26659430]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。