2015.12.02 | ニュース

良い脂肪と悪い脂肪の違いは本当にあるのか?

地中海食の研究データから
from The American journal of clinical nutrition
良い脂肪と悪い脂肪の違いは本当にあるのか?の写真
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脂肪の中でも、種類によって健康に良いものと悪いものがあるという意見があり、実際に病気の多さなどに影響するかを調べた研究も多くありますが、結論は一致していません。スペインで行われた研究のデータを解析した結果が新たに報告されました。

◆脂肪酸の種類による違いを検討

脂肪の分子は体の中でグリセリンと脂肪酸に分解されますが、脂肪酸にはさまざまな種類があり、体の中での働きは脂肪酸の種類によって違うと考えられています。この研究は、脂肪酸のうち一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸に着目して、脂肪酸の種類ごとの摂取量と病気の関係を調べました。

スペインで行われた過去の研究からデータが取得されました。このデータは、地中海食という食事療法の効果を調べる研究として集められたものです。

心筋梗塞脳卒中などの心血管疾患のリスクが高いと見られた7,038人が対象となってグループに分けられ、グループごとに違う食事療法が行われることで、その後の心血管疾患の発生や死亡に影響があるかが検討されました。実際にどんな食事がなされたかは、質問票で調査されました。

 

◆飽和脂肪酸、トランス脂肪酸で心血管疾患が増えるのか?

次の結果が得られました。

心血管疾患のハザード比(95%信頼区間)は、摂取量が最も少ない五分位群と比べて最も多い五分位群で、総脂肪について0.58(0.39-0.86)、一価不飽和脂肪酸について0.50(0.31-0.81)、多価不飽和脂肪酸について0.68(0.48-0.96)だった。両端の五分位群の比較において、摂取量が多い群で飽和脂肪酸は81%(ハザード比1.81、95%信頼区間1.05-3.13)、トランス脂肪は67%(ハザード比1.67、95%信頼区間1.09-2.57)、心血管疾患が多いことと関連した。

一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸を多く摂取した人で心血管疾患の発生が少なく、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸を多く摂取した人で心血管疾患の発生が多いという関連が見られました。

研究班は「一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の摂取量は心血管疾患および死亡のリスクが低いことと関連し、その一方で飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の摂取量は心血管疾患のリスクが高いことと関連した」と結論しています。

 

ここで使われているデータは食事療法の研究によって得られたものなので、脂肪酸の種類以外の要素が結果に影響していないかは、あわせて慎重に考える必要があります。

たとえば、多価不飽和脂肪酸が多くなるような食事療法に割り当てられ、指導のとおりの食事を続けることができた人は、多価不飽和脂肪酸以外にも病気を防ぎうる要素を持っていなかったか、といった観点が考えられます。

また、この報告はあくまで一例にすぎず、ほかの研究では、複数の研究報告を集めて統合する方法で、違った結論を示したものもあります。

さまざまな角度からの情報を見比べることで、より総合的な理解の助けになるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Dietary fat intake and risk of cardiovascular disease and all-cause mortality in a population at high risk of cardiovascular disease.

Am J Clin Nutr. 2015 Nov 11 [Epub ahead of print]

[PMID: 26561617]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。