2015.09.13 | ニュース

くも膜下出血後のスパズムに対するファスジルの効果

日本の研究チームがランダム化比較試験により検証

from Journal of neurosurgery

くも膜下出血後のスパズムに対するファスジルの効果 の写真

くも膜下出血後に血管が収縮する「スパズム」は、脳梗塞を起こすことがあるため治療が必要です。『脳卒中治療ガイドライン2015』では、スパズム治療に全身的薬物療法が推奨されており、その薬のひとつファスジルの有効性に関する1992年の論文を紹介します。

◆ファスジル治療群とプラセボ群にランダムに分類

今回の研究は以下の通りに行われました。

Hunt and Hess gradeがIからIVのくも膜下出血発症後3日以内に手術を行った計276名の患者が研究に参加した。

267名の患者はAT877を30mgまたはプラセボ(生理食塩水)を手術後14日間、1日3回、静脈注射で30分かけて行われた。

くも膜下出血後に手術治療を受けたあとの患者を対象に、ファスジル治療を行い、その効果を検証しました。

 

◆ファスジルは脳のスパズムを改善する

以下の結果を得ました。

AT877は、血管造影で示された血管攣縮を38%(プラセボ群の61%からAT877群の38%へ、p=0.0023)、血管攣縮と関連するCTでの低吸収域は58%(38%から16%へ、p=0.0013)、そして症候性血管攣縮は30%(50%から35%へ、p=0.0247)減少したことが認められた。

AT877群で深刻な有害事象は報告されなかった。

ファスジル治療を行うと、スパズムやそれによる画像上の結果が改善しました。また、発症後1ヶ月時点での意識障害レベルの改善にも有効でした。

 

今回の研究も踏まえて、『脳卒中治療ガイドライン2015』では「全身的薬物療法として、ファスジルやオザグレルナトリウムの投与が強く勧められる」と記載されています。

執筆者

Shuhei Fujimoto

参考文献

Effect of AT877 on cerebral vasospasm after aneurysmal subarachnoid hemorrhage. Results of a prospective placebo-controlled double-blind trial.

J Neurosurg. 1992 Apr

[PMID: 1545249]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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