2015.08.19 | ニュース

冠動脈疾患患者にスタチン治療を行うと心筋梗塞の発症率は低下する

ランダム化比較試験により検証
from The New England journal of medicine
冠動脈疾患患者にスタチン治療を行うと心筋梗塞の発症率は低下する の写真
(C) Stasique - Fotolia.com

血中のコレステロールを減らす薬スタチンは、「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン」でも心筋梗塞の対策として勧められています。その元となる2005年の論文では、多量のスタチンを使うと心筋梗塞の発症率が減少することを報告しました。

◆アトルバスタチンを1日10mg服用する群と80mg服用する群にランダムに振り分け

今回の研究は以下のように行われました。

計10,001名の臨床的に確認された冠動脈疾患患者で、LDLコレステロールが130mg/dl未満(3.4mmol/l)の人を、二重盲検治療で、アトルバスタチン1日10mgまたは80mgのどちらかによる治療を受けるようにランダムに振り分けた。

冠動脈疾患(狭心症など)が診断された人で、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が正常範囲の人を対象に、スタチンを1日10mg使う群と80mg使う群に分け、その後の心筋梗塞脳卒中などが起こる率に違いがあるかを追跡して調べました。

 

◆スタチンを80mg服用すると心血管イベントの発症率が下がる

調査の結果、以下のことを報告しました。

主要なイベントは、アトルバスタチン10mgを服用した群では548名の患者(10.9%)に発生したのと比較して、アトルバスタチン80mgを服用された群では434名の患者(8.7%)に発生し、大きな心血管イベントに対する絶対リスク減少は2.2%、相対リスク減少は22%であった(ハザード比0.78、95%信頼区間0.69-0.89、p<0.001)。

2つの治療群で総死亡には差がなかった。

スタチンを1日80mg服用すると、10mg服用するよりも心筋梗塞脳卒中などの発生を抑制できるという結果でしたが、総死亡に影響は見られませんでした。

 

LDLコレステロールは140mg/dl以上で脂質異常症と診断されますが、この研究では、冠動脈疾患がある人についてはLDLコレステロールが正常範囲でも、コレステロールを減らすスタチンを使ったほうが良い結果が得られました。この結果などを参照して、ガイドラインでは、その基準値より低い100mg/dl未満を目標に治療を行った方が良いことが言われています。

国内では、健康保険の適用が認められている用量は一般的に20mgです(場合によっては40mgとなることもあります)。そのため、今回紹介した論文の用量は保険適応とならないことにご留意ください。

執筆者

Shuhei Fujimoto

参考文献

Intensive lipid lowering with atorvastatin in patients with stable coronary disease.

N Engl J Med. 2005 Apr 7

[PMID: 15755765]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。