2015.08.09 | ニュース

赤血球・白血球を増やす薬が重症の肝臓を治療、肝硬変患者の生存率改善

インド55人のランダム化研究
from Gastroenterology
赤血球・白血球を増やす薬が重症の肝臓を治療、肝硬変患者の生存率改善の写真
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ウイルス性肝炎などが進行し、非代償性肝硬変という末期的な状態になったとき、肝臓を元の状態に戻す方法は見つかっていません。インドの研究班が、2種類の薬剤を使って治療したところ、肝臓の検査値が改善し、生存率が改善したことを報告しました。

◆G-CSFとエリスロポエチンの併用

研究班は、これまでの研究結果から効果がある可能性があると見られた、G-CSFとエリスロポエチンという2種類の薬剤を併用する効果を調べました。

G-CSFとエリスロポエチンはどちらも体内で微量に作られている物質です。G-CSFは白血球の増殖を促す効果が、エリスロポエチンは赤血球を増殖を促す効果が知られています。

非代償性肝硬変の患者が対象とされ、対象者は通常の治療に加えて、G-CSFとエリスロポエチンの両方を使うグループと偽薬を使うグループ(対照群)にランダムに分けられ、それぞれ治療を受けました。

 

◆12か月生存率が改善

次の結果が得られました。

GDP群で、対照群よりも12か月後まで生存した患者の割合が大きかった(対照群の26.9%に対して68.6%、P=0.003)。12か月時点で、ベースラインからChild-Turcotte PughスコアはGDP群で48.6%、対照群で39.1%減少した(P=0.001)。

大きな有害事象はどちらの群にも見られなかった。

55人の対象者のうち、治療開始から12か月後に生存していた人の割合が、対照群では26.9%だったのに対して、G-CSFとエリスロポエチンを使ったグループでは68.6%と、大きくなっていました。また、G-CSFとエリスロポエチンを使ったグループのほうが、治療開始12か月後の肝臓の検査値が改善している傾向がありました。

 

非代償性肝硬変は治療が非常に難しい状態です。この研究では、G-CSFとエリスロポエチンがそれぞれ肝臓に対してどのように働いたかなど、明らかでない要素も残っていますが、生存率改善に向けた手掛かりになるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Combination of granulocyte colony-stimulating factor and erythropoietin improves outcomes of patients with decompensated cirrhosis.

Gastroenterology. 2015 Jun

[PMID: 25749502]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。